第20話 白き竜王

「っ……!!」


 やばい! やばいやばいやばい!!

 ドラゴン……竜種はこの世界で最強とされる種族。

 強靭な肉体に膨大な魔力を誇り、種族として最強と呼ばれる存在!!


 冒険者ギルドの格付けでも竜種というだけで、その危険度は最高位たる堂々のSランク!

 そしてこの白竜から感じる圧倒的な力の波動っ!!


『ふふふ、恐怖で声も出ないか?』


「ド……」


『ド?』


ドラゴンだっ!!」


 まさかっ! まさか、こんな所でドラゴンに遭遇できるなんてっ!!

 滅多に人里に現れることはないって聞いてたのにっ!! あっ、ここは人里じゃなかった!

 と、とりあえずやばいっ! どうしよっ!?


「あ、あの! 鱗に触ってみてもいいですか?」


『……』


 や、やってしまったぁ〜!!

 私としたことがつい憧れの竜に遭遇して先走ってしまったっ!

 出会っていきなり鱗を触らせてほしいなんて……お、怒らせてしまったかな?


「……」


 うぅ、気不味いっ!

 竜種ドラゴンは基本的に人の前に姿を現さない。

 つまり、次にいつ竜種に出会えるかわからない! ど、どうにかしてこのドラゴンさんのご機嫌を取らなければ!!


「あ、あの……」


『ふっ、あはっはっはっ!』


 おぉ! 笑ってる姿ですらそこはかとなく優雅で気品があって、神聖な雰囲気を感じる!!

 お、おおお落ち着け! 竜種に遭遇しておかしくなったテンションを下げなければ!!


『まさか、私を前にして怯えるどころか私の鱗に触りたいと言い出すなんて!

 人間の娘、貴女の名前は?』


「ソフィア・ルスキューレです!!」


『ソフィア・ルスキューレ……う〜ん、その名前、何処かで聞いたような』


「あ、あの、ドラゴン様?」


『む、いや何でもない。

 私の名はルミエ、今後はドラゴンさんやドラゴン様ではなくルミエと呼ぶといいわ』


「わ、わかりました! その、ルミエ様……!」


 最初の威圧感たっぷりな感じもカッコよかったけど……この綺麗な透き通るような声に、柔らかな雰囲気!

 凄まじく神聖な感じがビシバシ伝わってくるのに、めっちゃ優しそう!!


『ふふふ、ソフィア。

 少し見せてもらっていいかしら?』


「ん?」


 見る? なにを??


『安心して、少し貴女の魂を覗くだけだから』


 おぉ〜、さすがは最強の種族と名高い竜種! そんなこともできるんだ。


『ふふっ、私は竜種の中でもちょっと特別なの。

 普通の竜にそんな事はできないわ』


「っ!!」


 いま、私の考えを……そ、そういえばルミエ様に対してドラゴンさんって呼んでないのにさっき……


『この程度は簡単にできるわ』


 な、なら、今までの私の考えは……


『ふふふ』


「っ〜!!」


 やばい! めっちゃ恥ずかしいんだけどっ!!


『それで、ソフィアの魂を覗かせてもらっても?』


「えっと……はい、良いですよ?」


『では、失礼して』


 おぉ! ルミエ様の金の瞳が淡く光ってる!!


『へぇ、ソフィアは転生者なのね』


「っ!! そんなことまで!?」


『当然よ。

 貴女の魂を覗くのだから、ソフィアのステータスも簡単にわかる』


「ほぇ〜」


『ふふふ、公爵令嬢がはしたないわよ?』


 おぉう、ルミエ様に怒られてしまった……でも、神器を使わないと基本的に確認することができないステータスを簡単に見れちゃうなんていわれたらビックリするのも仕方ないと思う。


『どれどれ、ソフィアのステータスは……っ!!』


「ルミエ様?」


『この加護は……なるほど、そういう事。

 どうりで……』


「あの……」


『ふふふ、ちょっと驚いただけだから気にしないで』


 えぇ〜、めっちゃ気になる!

 なんか私の謎の加護についても知ってそうだし。


『その加護は……はぁ、まったくあの人は……

 ごめんねソフィア、今は言えないけど加護についてはいずれわかるから』


「むぅ、わかりました」


『もう、そんな拗ねたような顔をしないの。

 ほら、ご要望通り私の鱗を触らせてあげるから』


「っ! 本当ですかっ!?」


『ええ、本当はそう易々と他者に触らせないんだけど……特別よ?』


「やった! ありがとうございます!!」


 むふふっ! 憧れの竜種の鱗にっ!!


「で、では! おぉ〜!!」


 こ、これは! ツルツル、すべすべしてる!

 ひんやり冷たいようで、どこか温かくて! 素晴らしい触り心地っ!!


『ふふっ! 貴女、気に入ったわ。

 私もソフィアに加護をあげちゃう!』



『ぴろん!

 白竜王の加護を獲得しました!』



「竜王っ!?」

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