第11話 スキル

「「「「「「……」」」」」」


 巨大な水晶の中に映し出された私のステータスを見て、お父様も、お母様も、お兄様達も、ファナも執事長のバルトも。

 近くで私のステータスを見ていた全員が黙り込んでしまった。


 けどまぁ、それはそうだろう。

 だって当人である私も黙り込んじゃってる状況だし、まさか私のステータスがこれほどとは思ってなかった……


「これが、私のステータス」


 本当なら、すぐにでも少し離れた場所で訓練をしている騎士団のみんなに自慢して。

 仲良くなった事で最近ちょっと私のことをナメ始めてるみんなに再び私の威厳と偉大さを教えて、ドヤ顔してやろうと思ってたのに!


「まさか! スキルが1つも無いなんてっ!!」


 い、いや! まだそう断定するのは早いっ!


「ふぅ〜」


 一旦目を瞑って深く深呼吸をして落ち着くんだ。

 そう、この私にスキルが1つも無いなんてなんてことがあるはずがない!

 きっとさっきのはただの見間違い! うん、そうに違いないっ!!


「よしっ!」




 名前:ソフィー・ルスキューレ

 種族:人間ヒューマン

 称号:「公爵令嬢」「お転婆令嬢」「ルスキューレ家の天使」「転生者」「愛子」

 加護:「ーーーの加護」



 ・ユニークスキル

「探究者」


 ・エクストラスキル

「叡智」「魔導」


 ・耐性

「魔法攻撃耐性」「物理攻撃耐性」「状態異常耐性」




「……うぅ」


 やっぱり無いぃっ!!

 そ、そんなバカなっ! 毎日あれほど頑張って秘密の特訓をしてたのに!!

 騎士団のみんなと一緒に訓練してたのに……まさか、まさか! 剣術のスキルも、属性魔法のスキルもないなんてっ!


 火、水、風、雷、土の五大基本属性はもちろん。

 上位属性である火炎、瀑水、暴風、轟雷、大地に加えて神聖、深淵を含む上位七属性。

 特殊属性に分けられる空間魔法まで、ありとあらゆる魔法を使いこなすアルトお兄様。


 類稀なる戦闘センスと他を圧倒する剣術。

 凄まじい熟練度の身体強化魔法に加えて、雷属性の魔法を併用する事で常人はもちろん、達人ですら反応すらできない速度で敵を切り伏せるというエレンお兄様。


 お兄様2人の妹でありながら、まさか魔法のスキルも剣術のスキルもないとは……まっ! ないものは仕方ない。

 前世の記憶を思い出したりと、1週間前のことで忘れがちだけど私ってまだピチピチどころかお肌ぷにぷにの5歳児だし!

 スキルは修練を積むことで獲得するらしいから、これから頑張ればなにも問題はな……


「ソフィーちゃん!」


「むぐっ!!」


「凄い! 凄いわ! 流石は私の天使っ!!」


 な、なに? いきなりどうしたの!?


「んぅー!」


「あら、ごめんなさい」


「ぷはっ! もう、お母様! 突然どうしたのですか?」


「ふふふ、そう可愛いほっぺを膨らませないで。

 つい興奮しちゃったの」


「興奮?」


 もっとたくさんのスキルがズラッと並んでる壮観なステータスならともかく、こんなステータスなのに?


「ソフィー! 凄いよ!!」


「流石は俺達のソフィーだ!!」


 おぉ、いつになくお兄様達のテンションも高い。

 エレンお兄様なんてお母様のハグから解放された私を軽々と持ち上げて高い高いしてるし。


「あの、これって凄いのですか?」


 ユニークスキルとかいうのが1つに、エクストラスキル? が2つ。

 あとは耐性が3つの合計6つしかないけど……


「あら、そういえばソフィーちゃんはまだスキルについてのお勉強はしてなかったかしら?」


「ソフィー、スキルと一言に言っても実は色々と種類があってね。

 まず第一に普通のスキル、剣術や各属性魔法などさまざまな一般的なスキルがこれに当たる」


 ふむふむ。


「次にエクストラスキル。

 これは普通のスキルの上位互換にあたるもので、非常に強力なものが多い。

 稀にスキルが進化してエクストラスキルに至る事もある」


「上位互換……」


「そして最後に、ユニークスキル。

 これは唯一無二のスキルでエクストラスキルよりも更に上。

 全てのスキルの中で最上位に位置し、ほんの一握りの者達だけが有するスキルだよ」


「おぉ〜!」


 ということは、確かに普通のスキルは全く無かったけど……あれだけ真剣に剣術の訓練をしてたのに剣術のスキルがないことはちょっと納得できないけど。

 それはともかく! もしかして、私って本当に凄い?


「それに加えて、ソフィーは加護持ちだからね。

 まったく、まだ5歳なのに我が妹ながら末恐ろしいほどだよ」


「ふっふっふ〜ん!」


 なんかよくわからないけど、さすがは私っ!!


「本当に僕たちの天使は流石だよ。

 ねぇ、父上……?」


「……」


「ち、父上? 父上っ!?」


「大変だ! 父上が息をしていないっ!

 しっかりしてください父上っ!!」


 えっ! 息をっ!?


「さぁ、ソフィーちゃん。

 お父様達は放って置いて、ソフィーちゃんのスキルの確認をしましょう」


「大丈夫なのですか?」


「問題ないわ。

 ちょっとビックリして放心してるだけだから」


 大丈夫なのか……


「それよりも確認よ」


「確認、ですか?」


「ええ、そうよ、

 その水晶に触れながらスキルの名前を念じてみて」


「わかりました!」


 まず最初は……




 ユニークスキル・探究者

 ソフィア・ルスキューレが保有するユニークスキル。

 ありとあらゆる事象を解き明かし、理解する事で己のものとする力。




「ふむ……」


 うん、もしかしなくても、これって結構強いのでは?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る