第22話 Sの森⑨
皆、比較的簡単に連絡がつき駅前のファミレスに集まる事が出来た。
「皆、とりあえずこの場面を見てほしいんだ」
早速皆に動画を見てもらうと朱美ちゃんがまず気が付いた。
「え?ちょっとこれ・・・石碑の名前・・・」
皆そう言われ慰霊碑の所を注目し、そして言葉を失う。
「皆が出会った稲見さんって人、下の名前は聞いた?」
美優が皆に問いかけるが皆首を横に振る。
「ただの偶然ならいいんだけど、どう思う?」
一応そう聞いてはみるものの、皆から明確な答えが返ってくるはずもなかった。
「とりあえず私がN建設にもう一度連絡してみようか?当時の資料とか残ってるなら何かわかるかもしれないし」
皆佐和子の提案に従う。
と言うよりそれ以外に何も案が浮かばないのが現実だ。
何よりN建設に稲見という人物が在籍してるのか、確認するだけでも答えに近付ける気がした。
「・・・そうですか。はい。ありがとうございます。では、お伺いさせていただきます」
佐和子がN建設との約束を取り付け俺達の元へ戻って来た。
「今から行ってもいいって。皆で行く?どうする?」
佐和子が皆に問いかける。
「そりゃ動画の責任者なんだから行くだろ」
「車も出すんだから俺も行くぞ」
「健太も行くんだから勿論私も行くよ」
「ここまで来たらそりゃ行くでしょ」
「まぁ、待ってるよりは行った方がスッキリしそうだし」
結局皆でN建設まで行く事になった。
佐和子が電話での受け応えをしっかりとしていたのを見て、少しびっくりしながらも時の流れを感慨深く感じる。
N建設に到着し受け付けを済ませると応接室に通された。
部屋に飾られた表彰状や様々なトロフィーや盾を見ているとそれなりの規模の会社である事が
皆静かに待っていると暫くして1人の男性が入ってきた。
「いやぁ、お待たせしました。また今日は大勢で来られましたね。私はここの代表の小岩井と申します」
なんと社長自ら俺達相手に時間を作ってくれたのだ。
「さてと、ではいきなりだけど確か電話で聞いてたのは『当時の資料が残ってないか』『稲見という人物について』だったね?」
そう言うと書類や当時の写真が収められたアルバム等を机の上に並べだした。
「そして君達が聞きたい人物は『稲見 幸太郎』氏の事で間違いないかな?」
「はい。その・・・稲見さんはおられるんですよね?」
佐和子が恐る恐る聞いてみる。
「ん?・・・何を言っているんだい?稲見氏は正に当時、亡くなっているよ」
そう言って社長はアルバムを手に取り
「ほら、この人が稲見 幸太郎氏だ」
当時の白黒の写真に写る人物を指差す。
皆の反応を見てあの夜、森で出会った人物がその写真に写る稲見 幸太郎氏である事はすぐにわかった。
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