これはただの冒頭

月白藤祕

〇してください、魔王様!

私には、長年密かに願っていたことがある。それは、

”愛されて殺されること”


しかし、それが叶うことはなく、過労で死んでしまった。


             〇


次に目が覚めた時、私は新たな生を授かったようだった。

薄れゆく意識の中、深く後悔したことで神様がチャンスをくれたのかもしれない。


とまあ、前向きに考えたが、目が覚めた先が地獄のような状況だった。

目の前には魔王のような魔物に、周りには私が逃げられないように魔物たちに囲まれている。


(なぜこうなった?)


頭の中で必死に考えるけど、私が憑依する前の記憶が一切ない。

とりあえず絶体絶命なのは、明白な事実だろう。

私が地面を見つめ考えていると、魔王のような魔物が剣を向けながら言った。


「我のものになる気は、本当にないのだな?」


それは本当に私に向けて放たれた言葉なのだろうか?と、魔王の目を見る。


「何だ…我に言いたいことでもあるのか?申してみよ」

「…私のことを、愛していますか?」


周りにいる魔物たちがざわつく。


「それは一体…」

「愛してくれているのであれば、私を殺してください!!!」


魔王は目を丸くして、固まったのだった。

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