世界樹の麓


「そろそろ着くわ。降ろしてちょうだい」

「わかりました」


 雲をゆっくり下げていく。

 さすがに今度は問題は無さそうだ。


「高いから最初は怖かったけど、慣れると速いし便利よね?」

「わかってもらえましたか。ありがとうございます」


「でも空中でモンスターと遭遇したらどうするの?」

「ワイバーンなら、二頭ほど仕留めてますよ」


 空の上と言っても警戒は怠らないぜ。ミストサーチによる半自動迎撃システムは現役バリバリだ。


「‥‥‥え?」

「え‥‥‥? だからワイバーンを‥‥‥」


「ワイバーンって準A級のモンスターよ?」

「空飛ぶトカゲですよね?」


「‥‥‥クロエからの手紙に書いてあったのは本当なのね。あなた、とんでもない規格外だわ」

「いやぁ、そんな事ないですよ」

「そんな事あるわよ‥‥‥」


ーーーーーーーーーーーー


「着いたわ、ここよ」

「世界樹どころか木も無いですけど」


「結界で隠蔽しているって聞いてない?」

「あ、そういえば‥‥‥」


 クリスさんが何やら呪文を唱える。

 視界が切り替わり、巨大な木が立っている。遠くに。ちょっとデカ過ぎないか?遠近感が掴めなくなる。


「さぁ、行くわよ。妙な行動はしないでね」

「はい。もちろんです」


 世界樹に近づくと集落があった。ここがエルフの隠れ里なのか‥‥‥。


「クリスティーナか? 久しいな。100年振りといったところか?」

「アランさん、お久しぶりです。長老はいらっしゃいますか? ヒューマンをお連れしましたので挨拶を‥‥‥」


「それどころではないかも知れぬぞ。世界樹が大変な事になっておってな‥‥‥」



 奥に進み、一番大きな建物に入る。

 美しいエルフが目に入った。まさかあれが長老なのか? 若過ぎないか? パッと見てもクリスさんと変わりないぞ。


「長老、ご無沙汰しております。クリスティーナです。世界樹が何やら大変だとか?」

「おお、クリスティーナよ。久しいの。左様じゃ、世界樹が弱っておってな。今調査しておるところじゃ」


 あらら、大変そうだな。


「して、そこな者は何奴じゃ?」


「長老、こちらはヒューマンのネロという者です」

「長老様、ネロと申します」


「エルフの里の長老のカミラだ。其方に構っておれん事態でな、すまぬがお引き取り願おう」


「長老、世界樹は今どのような状態ですか?」

「クリスティーナよ、世界樹の葉も実も枯れて減っておるのじゃ。このままでは枯れてしまうやも知れん。何が起きておるのかわからん。この様な事態は初めてじゃ。何かわかるかも知れん。ついて参れ」


「あの、俺も行って良いですか?」

「勝手にせい。余計なことはするなよ?」

 長老に釘を刺された。


 世界樹の麓へ来た。さすがにデカいな。でも確かに元気がなさそうだ。調子悪いのかな?


 こっそりと鑑定を使用した。これくらいは良いだろう。


ーーーーーーーーーーーーー

世界樹 45678歳 

状態 水毒病

ーーーーーーーーーーーーー


 あん? 水毒病ってなんだ?

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