魔術ギルドのクリス
魔術ギルドの執務室に入った。
「クリスさんはエルフですよね? クロエさんとはどういった関係ですか?」
「クロエは私の妹だ。元気でやっていたか?」
「元気ですよ。でも姉妹で肌の色が違うんですね?」
「⁉︎ どういう事だ?」
クロエさんとクリスさんは顔の造りは同じ超絶美人だ。エルフならではなのだろうな。
しかし肌の色は全然違う。クロエさんは褐色、クリスさんは透き通るような美白だ。
「クロエさんは褐色の肌で‥‥‥」
ドンッ!!!!
「あんのバカがっ!!!!」
机を叩きつける! 怖っ!
「あ、すまん。取り乱した。しかしエルフの白い肌を汚すとは‥‥‥」
エルフにとっては白い肌が至上であるそうだ。つまりクロエさんは、エルフ界に喧嘩上等と吹っかけているようなものらしく、姉であるクリスさんからしてみたら、「何してんだ! あいつは!」となるのはごく自然の事らしい。
魔術ギルドに着いた。
「さて、改めて話を聞かせてもらおうか?」
「はい。我が妻シャルロットが妊娠後の体調不良に苛ませているのです。そこでそういった症状に効くと聞いた「世界樹の実」を取りにこの国へ来たのです」
「なるほど。そういった理由か。合点はいった。が、その程度の理由で世界樹に案内する訳にはいかないな」
なんですと? わざわざ来たのに~。
「どうしたらよろしいですか?」
「そうだなぁ。世界樹はエルフが守っている。エルフは世界樹によって生きていける。共生関係なのだよ。そこにヒューマンが易々と入っていけると思うか?」
「確かにそうですねぇ。エルフって基本的には排他的なんですもんね?」
「私たちはヒューマンに溶け込んでいるが、世界樹の周りで生活している者達はその通りだな」
「クリスさんの紹介とかで、集落に入ったらマズイんですか?」
「‥‥‥ダメ元で良ければ、案内しよう」
「クリスさん、その世界樹の集落まではどれくらいかかりますか?」
「馬で二日くらいかな? どうした?」
「もっと早く行きましょう。人気のないところへお願い出来ますか?」
人目のつかないところで、足元に雲を作り出す。もう慣れたものだ。
「な⁉︎ なんだ、これは⁉︎ 何が起きている?」
クリスさんが目を丸くしている。
「一応、他人を乗せるのは初めてなので、俺に捕まっといて下さい」
俺とクリスさんを乗せて、雲が宙に浮く。
クリスさんは不安げで肩を掴む力が強い。痛い‥‥‥
あとめっちゃ綺麗な顔がめっちゃ近い。いい匂いもする。
不覚にも男性の生理現象が‥‥‥。
すまん、嫁達。
とりあえず安全運転で行こうかな。
「イヤァーーーー!!!!」
クリスさんの絶叫。
うん、耳が痛いです。
「そこ! そこら辺で降ろしてぇーー!!!!」
「え? もう着きました?」
「急いで!」
「え~? 危ないからゆっくり下りますよ」
「いや、いいから早‥‥‥あっ!」
ショロショロショロ‥‥‥
「‥‥‥!!!!」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
沈黙が空間を支配する‥‥‥
「だ‥‥‥だから言ったのにぃ~‥‥‥」
「え⁉︎ なんか、すみません‥‥‥」
俺のせい‥‥‥なのか?
とりあえず濡れた服に水をかけて浄化、乾燥してあげたので、無かった事になった。
「あとは貴方の記憶を消しておきましょう。他の部分も多少消えるけど仕方ないわよね?」
「やめて下さい! 絶対に言いませんから!」
対処が適切だったお陰で記憶は消されずに済んだが、クリスさんがブツブツなんか言ってる。
怖ぇよ!!!!
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