サプライズ食事会


 食事会当日になった、ホストは俺だ。

シャルとマリア、ナタリー側に対してローズ、サラ側に俺が座る、これで一応三対三になる。ナタリーはこちら側なのでまぁやりやすい。


 シャルが何故か朝からうずうずしている、何だろうか? マリアは普段通りだ。


「どうした? シャル、なんかうずうずしてない?」

「し‥‥してないワ。ワタシ、してないワ」

 なんか変だな、こんなんだっけ、シャルって。


「シャルは猫好きだからね」

と、マリアの助言。マジか? 色々したのに猫好きならもうクリアしてたじゃないか。


「え? 有名だけど?」


 え? そうなの? 知らないの俺だけ? と言うかフィアンセなのに知らないのマズくないすか?

 マリアたん、そういうの早く言ってよ!


 まぁ、二人を好きになってくれたらありがたいので、グッドニュースではあるな。


「いらっしゃーい」


 ナタリーがローズとサラを迎えてくれた、いつもの柔らかいナタリーの接客対応力で雰囲気が和らぐ。


「ネロと親しくさせてもらってるローズです」

「サラと申します。よろしくです」


 二人とも精一杯の敬語、緊張しながらも頑張ってるなぁと精神年齢的に50過ぎのオッサンは思ってしまう。


「ワタシはシャルです、よろしく」

「マリアです。みんなネロの奥さんとして支え合っていきましょうね」


 なんかちょっとシャルが緊張してるような。学院の式の挨拶も普通にしてたのに。いや、俺が仕切らなきゃ。


「みんなありがとう。みんなと仲良く出来て俺が一番嬉しいです。今日は美味しい料理を用意したので身分とか関係無しで楽しくやろう」


 シャルもマリアも、ローズとサラを受け入れてくれた、それがありがたい。



 和気あいあいと始まった食事会、まずは前菜‥‥‥の途中でシャルが耳打ちしてきた。

「それでネロ? いつあのしっぽをもふもふ出来るの?」

 それな。シャルさんはもふもふ好き。


「とりあえず食べて話しての後でいいんじゃない?」

「それもそうね」


 みんな成人になっているのでお酒は飲める、そして緊張している人は特に飲んでしまうものだ、前世でも異世界でも。


「‥‥‥そこで、口に手を当てられたのよ、ドキッとするでしょ?」

 なんの話だ、シャル。いい具合に酔ってるな。

 ローズを撫でてる。打ち解けるの早っ!


「それはドキッとするニャ。シャルが惚れるのもわかるニャ」

 シャルに撫でられふにゃふにゃのローズ。

「いいな~、あちしもやられてみたいぜ」

 サラも乗っかってくる。

「シャルはそこで落ちちゃったのよね~」

 マリアが更に拾い上げる。


「皆さん、酔っていい感じですね」

 ナタリーは普通だ、さすが今日の裏ホストだからな。本当に頼りになる。



「お待たせ、メイン料理だよ」

 ドラゴン肉のハンバーグだ、料理長はハンバーグと決断した、やはりハンバーグは無敵だ。



「「「「「!!!!!」」」」」


 口に入れた途端全員の時間が止まったように固まる、直後みんながすごい勢いで食べる食べる。シャルが口を開く。


「こんな美味しいお肉食べた事ないけど、何の肉?」

「ドラゴンだよ」


!!!


 今度はシャル、マリア、ナタリーの時が止まる。まぁローズ、サラは一緒に行ったから知ってるしな。


「でもこんなに美味いとは知らなかったニャ」

「コレは病みつきになるな」


 ガターン!!


 勢いよく立ち上がったせいで椅子が倒れる。止まっていた三人が寄って来る。


「ドラゴンって‥‥‥!」

「聞いて無いですよ‥‥‥!」

「大丈夫なの‥‥‥?」

 シャル、ナタリー、マリアが聞いてくる。驚いたようだな、サプライズ成功だ。


「驚いた?」

「「「驚いたわ!」わよ!」です!」


 おぉ、キレイにハモったなぁ。


「良かった、美味かっただろ? 今日の為にローズとサラも協力してくれたんだ」


 三人が振り向く、今度は視線を受けた二人が固まる。


「あちし達は盾持って逃げ回ってただけだよな」

「全部ネロが倒したニャ」


「ネロくーん、ちょ~っといいかしら~?」

? あれ? なんかまずかったか?


「聞いて無いんですけど~?」

「言って無いよ、サプライズだから」


「そう言う問題じゃないんです!!」

? 怒られた。なんかまずかったらしい。


「ドラゴン討伐なんて大偉業なんですよ! なんでこっそりそんな事してるんですか!?あぁ、どうしよう‥‥‥ギルドに報告? あれ国が先?」

 普段冷静なナタリーが混乱している。

 うーん、なんかゴメン。


「旦那、言って無かったのかよ?」

「サプライズだからな」


「こっそりドラゴン討伐なんて普通しないニャ」

「密猟みたいでダメって事か?」


「そうじゃないよ、ネロ。ドラゴン討伐は大偉業だから秘密にする事じゃないってことだよ」

マリアが教えてくれた。


「驚き過ぎて酔いが覚めちゃったわ、ネロ。アナタ何してんのよ?」


「シャル、美味かっただろ?」

「美味しかったけど‥‥‥。ネロ、アナタ今後大変よ」


「え‥‥‥、何? なんかあんの?」

「お父様に呼ばれて表彰されるわ」


「は!? やだよ! なんでだよ!?」

「ドラゴン討伐ってそれだけの事をしたからよ!」


「やだよ! シャル代わってよ」

「ワタシ、討伐してないじゃない。討伐時のパーティーですらないし!」


!!

 思いついた、一人で表彰されない方法を!


「ローズ~、サラ~」

「ニャ?」「旦那、どうした?」

二人の間に入って肩を組む。


「お前らも一緒に討伐したよな~、パーティーだよな~。と言うことは表彰も一緒だよな~」

「「!!!!」」

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