お披露目パーティー


「あぁ~緊張したぁ!」

「私の方が緊張したぞ」

 ゲオルグと別室に、案内された。

 疲れが半端ない。


「しかしお前の加護のお陰で凄い待遇だ。こんな部屋泊まった事ないしな」

 VIPルームってやつだろう。クッションもソファも超一流品だ。逆に落ち着かない。


 夜になってきてそろそろパーティーの時間だ。パーティー会場に急ごう。最下級貴族は一番に入って挨拶しておかねばならないのだ。


 会場に一番乗り。普段は食べられないご馳走が並んでる。ウヒョー!


 時間になり人が入ってくる。で、挨拶、挨拶。クッソ全然食えねーじゃねーか。

 多いなぁ、どうせ二度と会わない人ばっかりだろうに。


「ヴァッサー卿、おめでとう」

「ヴァッサー卿、出世だな」

 なんかこんな声を掛けられるのが特に多い。


「マイチー州? 聞いたこともないな。どこだ、それは?」

「マロニェール領の端にございます」

「ふん、そんなど田舎、興味ないわ」

 太って油ぎったオヤジが文句垂れる。

 なんだ? コイツ。失礼だな。

「我がデフロック領はそれはそれは風光明媚で素晴らし‥‥‥‥‥‥」

 途中から別の事を考えていたので聞いていません。


「デフロック卿、その辺で良かろう」

おっ止めてくれた。良かった。誰だろう。

「ゲオルグくん、久しぶりだね」

「トーマス様、ご無沙汰しております」

知り合いだったみたいだ。


「ネロ、こちらはトーマス・フレイン辺境伯だよ。」

 お、ということは寄り親の貴族様か。

「ゲオルグ・ヴァッサーの三男 ネロと申します。御見知りおきを」

「ハハ、さすがは神級の祝福だね。しっかりしている。マリア、お前も挨拶なさい」

「はい、お父様。こんばんは、トーマス・フレインの三女のマリアでございます。どうぞ宜しくお願い致します」

 あ、俺の前に祝福受けてた子だ。確か槍王とかいう才能だった気がする。


「こんばんはマリア様、ネロと申します」

「こんばんはネロ様、マリア様はおよしくださいな、マリアとお呼び下さい」

「僕も様は不要です。何か召し上がりますか?」

「ええ、あっちに行ってみましょう」



「これも美味しそうですよ。いかがですか?」

「ありがとう、ネロくん」


マリアと親しくなり口調も砕けてきた。

互いに呼び捨てだ。

「じゃあマリアはずっと槍の訓練を?」

「そうなの、お陰で手がマメだらけ。貴族の娘っぽくないでしょ」

「いえいえ、頑張った証拠ですよ。僕は(その手)好きだよ。」

「えっ。そんな‥‥‥」

あれ、いつの間にか赤い。飲み物に酒でも入ってたか?


「どこでそんな口説き文句覚えてきたんだ」

ゲオルグに怒られた。

「じゃあまたね、ネロ」

「ではまた、ご機嫌よう」

 

 王様が来た。殿下もいる。

「ヴァッサー卿、先程はすまんかったの」

「陛下。我々までお招きいただきありがとうございます」

殿下がこちらに話を振ってくる。

「ネロ、アナタ凄いんだってね」

「シャルロット殿下、昼間は申し訳ありませんでした」


「何? なんで謝るの?」

「待っていただいてたのにあんな風になってしまって‥‥‥」


「アレは仕方ないわよ。予想外のことが起きたんだもの。クリフォードも他の兵に任せて飛び出してっちゃったし」


ピカピカ鎧さん丸投げじゃねーかよ。

「ワタシも良い才能だったのにアナタの所為で霞んじゃったわ」

「すみません。ちなみにどんな?」


「剣帝よ」

「凄いじゃないですか!!」


「水神に言われてもね」

「‥‥‥すみません」


「仲良くやっているようじゃな。うむ、良い、良い。そうじゃネロよ。王都に越して来てはどうじゃ? 王都の学校に通うというのはどうじゃろう?」

「王都学院ですか? 僕が入れますかね?」


「成績次第ではあるが大丈夫じゃろ」

 王都学院は国内最高学府だ。選ばれた者だけが通学できる。12歳の春から三年間、卒業後は国内の様々な機関に就職可能だ。卒業出来ればだが。

「ワタシも行く予定よ」

「え、殿下も?」

「何よ、嫌なの?」

「いえ、別に」

 王族や上級貴族は入学も卒業もそれなりに優遇されているようだ。今は初夏、準備期間はそれなりに有るな。

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