第109話 説明
「ソフィア様! 思っていたよりも多くの村人や冒険者達が手伝ってくれまして。ビッグボアを運ぶのも楽になりました」
グレイさんはニコニコと冒険者や村人を引き連れ、話しかけてきた。
「そっそうですか……」
もうビッグボアはあの場所にいないんだけども……などと思いながら返事を返す。
「ええ。ところでアイザック様は?」
グレイさんがアイザック様がいない事に気付き、キョロキョロと周りを見渡しているので、私は無言でアイザック様が走って行った方角を指した。
………そうビッグボアの死骸があったであろう場所を。
「あちらに行かれたっ!? なっ!? さっき見たビックボアの死骸が消えた!」
グレイさん達は慌ててアイザック様がいる所に走っていく。
……うわぁ困ったなぁ。
アイザック様とグレイさんの二人は、ビックボアの死骸があった場所でずっと不思議そうにウロウロと探し回っている。
これは早く言わないと取り返しがつかなくなるような気がする。
……ゴクッ
ーーなんじゃソフィアは。ビックボアの死骸もう既にアイテムボックスに収納しておるというのに、アイザック達に探させておるのか? なんじゃその新しい遊びは。
精霊王様は何を違いしたのか、私がビックボアの死骸を隠して遊んでいると言い出した。
いやいやそんな特殊なら遊びを好む変な奴みたいな言い方しないで下さい。
百歩譲ってしたとして、その遊び一体何が楽しいんですか?
それを楽しむとか私……完全に変態ですよ?
こんな変な勘違い話を、アイザック様に告げ口されたら終わりだけど、精霊王様の言葉をアイザック様は分からないのが今になってかなりの救いだ。
取り敢えず、ビックボアの死骸があったであろう場所に行こう。
そしてまずはアイザック様に説明しよう。
私はアイザック様のいる所に走って行くと、手を握りグレイさん達から少し離れた所に移動しようと引っ張っていく。
「ちょ? ソフィア? どうしたの? そんな強引に……そんなソフィアも僕は大歓迎だけどさ……」
「え?何か言いました?」
「ゴホッ! なっ何も言ってないよ? それよりどうしたの? 僕は消えたビックボアの死骸の謎を、グレイと解明しないといけないから」
「消えたビックボアの謎は…….私が知ってます」
「…………えっ? 知ってる?」
私がそう言うと、アイザック様は目を丸めて不思議そうにジッと見つめてくる。
私は大きく深呼吸をすると、心の覚悟を決めた。
「………驚かないでくださいね? ビックボアの死骸はですね。全て私のアイテムボックスの中に収納されています」
「……………….」
折角必死に説明したのに。アイザック様は話の途中から固まってしまった。
困った。私の話聞いてない?
「アイザック様?………あのう?」
「……………はっ!? あっ!」
やっと固まってたのが解けたのか、アイザック様は激しく瞬きをし首を左右に振った。
「あの?私の話ちゃんと聞いてます?」
「きっ聞いてるよ! だからビックリしたんじゃないか! そもそもアイテムボックスはね? 収納できる量は最高でビックボアが一体入るくらいだよ? それがソフィアは……いったい……ビックボア何体を収納したの?」
えっ何体?
さっき不思議な声が聞こえて、教えてくれた数は百十四体……って言ってた様な。
「ええと………百十四くらい?かな?」
「はっはああああああああ?」
そう言ってアイザック様はまた固まってしまった。
一言話すたび固まってしまうので、全く話が進まないんだけど。
後からやって来たグレイさんも、村人や冒険者達と一緒に、血だらけの鉄臭い地面だけが広がる場所を、延々と不思議そうに歩き回っている。
私はこの後、グレイさん達にも同じ様な説明しないといけないのかと考えると、ため息しかでないのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます