第59話 無敵アイテム

「聞きました?カフェテリアでの一件」

「何でもアイザック様に楯突いたらしいですよ」

「二階は貴族専用だと平民をバカにしたらしいですわ」


 今学園は例の一件の話題で持ちきりだった。

 皆噂話は大好きなのだ、それが高位貴族令嬢だとなると余計な尾鰭も付いて広がって行く。


「それにここだけの話ですけど……ソフィア様を突き飛ばし怪我をさせたらしいですわ」

「ええっ?!本当に?」

「ええ……現場を見た人が居たらしいわ」

「はぁ何て恐ろしい」

「関わってはダメですね」


 それに加えてソフィアを突き飛ばし怪我をさせた噂話も広まっていた。この所為でアイリーンの周りには人が離れ孤立してしていく。

 彼女の周りには媚びてくる令嬢しか残らなかった。



「何で私がこんな事になるのよっ」


 おかしいわっヒロインなのに全く好感度が上がらない。

 学年の違うアレス様やファーブル様に至ってはまだ会った事もないっ!これも出会いイベントをしくった所為よね。

 何でソフィアが細くて良い子になってるのよっ!

 そもそもこのゲームの醍醐味は、ソフィアのクズっぷりを最後に断罪してスカッと終わるってのが最高なのに!

 

 何の無理ゲーよ?


 クソじゃないソフィアをどう料理したらいい?

はぁっ……最悪ハーレムは無理でもアイザック様と隠れキャラのラピスを執事につけて……二人に挟まれて♡ああっ最高!

何か策を考えないとだめね。


「アイリーン様は今巷で人気の占いの館に行きました?」


 取り巻きの子爵令嬢がアイリーンに何やら面白そうな話を持ち込む。


「何ですの?占いの館って?」


「そこにとにかく当たる占い師が居て、好きな人と上手くいくお守りとか貰えるんですよっ!それで両思いになった方もいるんですよ?」


「へぇ……」


 それどころじゃないアイリーンは適当に相槌を打つがふと何かがよぎった。


 ちょっと待って?占いの館……?どっかで聞いた事あるな……どこで?


———!ああっ思い出した。

 

 平民ヒロインの隠れキャラだっ!

 そこで魅了のペンダントを貰えるのよっ!それを付けたら攻略対象全て簡単に籠絡できちゃう無敵アイテム!平民ヒロインのチートアイテムよっ!

 そうだわっ!その無敵アイテムを私が先に奪ってやれば良いんだわ。


 魅了チートとか最高じゃない!やったわ!これで逆ハー狙えちゃうかも♡ふふふっ


「ねえっ!ちょっと!その占いの館は何処にあるの?」


「それが神出鬼没でして……」


「えっ!?ちょっどー言う事よっ!」


 そんなの困るわっ!あ——っこんな事なら平民ヒロインでもちゃんとクリアしとくんだった。


 アイリーンの鬼気迫る気迫に押されながらも子爵令嬢は必死に答える。


「あっあの……教会裏、商店街裏、時計台下の三箇所のどこかに毎回十五時に現れるらしいです」


———はいっきたー!時計台下だわっ。聞いた事があるっ!確かそこで平民ヒロインのシャルロッテは魅了のペンダントを貰うのよ!


 明日から忙しくなるわね。時計台下に毎日通わなくちゃ……ぐふっぐふふっ


 不敵な笑みを浮かべアイリーンはまだ見ぬ未来を想像するのだった。

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