第53話 魔道具


 保健室にてアイザック様とジーニアス様が、治癒師コーラル先生にあーだこーだと当の本人より口を出している。

 私は鼻を少し擦りむいたのと右足を少し挫いただけなんだけど……。


 凄い大怪我をしたみたいな事になっている。


 コーラル先生は私の傷をチャチャッと治癒し、何故こんな怪我をしたのかの質問タイムが始まった。

 何故と言われても衝撃が走った時には転けてたし。何て考えてたら、私の代わりにアイザック様とジーニアス様が先生に説明してくれた。


「えーっと話を纏めるとグレイドル嬢は背後から体当たりされたと?」


「えっ?」


 体当たり?確かにいきなり何かが背中に当たって転けたのは確か……。


「そうですね。ある女生徒が淑女らしからぬ動きで近付いて来たかと思えば、いきなりフィアに体当たりをしたんだ。自分からぶつかって来ておいて、痛いと大袈裟に騒いでいたね」


「そうだな。頭がおかしいとしか思えない」


 アイザック様とジーニアス様が、私は女生徒から突き飛ばされたと言っている。知らなかった……私もしかして早くも嫌われてる?


「それでその女生徒は?どーしたんです?」


「気持ちが悪いから慌てフィアを連れて保健室ここに来たんだよ。だから僕は見てない」


「僕はチラッと顔は見たから次に合えば絶対に分かる、今度変な事したら……タダじゃおかないけどね」


「それは同感だ」


 二人は物凄く悪い顔して微笑んだ。

 何だかその笑顔は怖いですよ?


「でっ? この後どうするのかな? 今から教室に戻っても、今日は授業も無く自己紹介などの軽い挨拶をして解散だから、このまま帰っても問題ないと思うけど?」


「そうか……それじゃあ帰ります」

(これ以上男共に、フィアの可愛い所を見せてたまるか!どうせ挨拶になると、フィアは無駄に可愛い笑顔をばら撒くんだ。そんな事させてたまるか)


「えっ?! 帰るんですか? 私はクラスの皆の自己紹介など聞きたいけど……」


 するとジーニアス様が一言


「でも……今日はもう帰った方が良いんじゃないかな? 今から教室に入ると注目の的だよ?」

(こう言うとかなりの確率でソフィアは嫌だと言うからね。

どうせアイザックの事だ、ソフィアの自己紹介を見せたくないって考えてるんだろうけど……それは僕も同感だ。

代表挨拶のソフィアを見る男達の目。魔道具を使って見えなくしてやろうかと思ったよ)


「えっ! 目立つ? それは絶対にいやです」


「だろう? 今日はもう帰ろう。僕の馬車で送るよ、丁度グレイドル邸に用事があるからね」

(ほらね? ソフィアの考える事なんてお見通しだよ)


「なっ! それなら僕も一緒に馬車に乗るよ」

(何でジーニアスが先に言うんだっ。くそっ)


「えっ? ジーニアス様グレイドル邸に用事とは?」


 ソフィアが不思議そうにジーニアスを見る。


「グレイドル公爵から頼まれていた魔道具が完成したんだ。それを渡しにね?」


「えっ? お父様から頼まれてた?! 何ですのそれっ気になります」


「う~ん。ごめんね? 僕からはソフィアに言えないや。自分で聞いて見て?」


ジーニアスは小首を傾げてニコリと微笑んだ。


「はぁい」


 何の魔道具なの? めちゃくちゃ気になる。帰ったらお父様を問い詰めないとっ。




⭐︎★⭐︎★⭐︎★⭐︎




 屋敷に戻ると、直ぐ様ジーニアス様は執事のセバスに連れて行かれた。

 私とアイザック様はサロンに案内されデトックスティーを飲みながらたわいも無い話をしている。


 するとお父様とジーニアス様がサロンに入って来た。


「フィアたん。プレゼントがあるんだ」


 えっ……まさかジーニアス様が言ってた魔道具って私へのプレゼントだったの? だから言えなかったの?

 チラッとジーニアス様を見ると片目を瞑り、人差し指を口に当てた。

 何ですか? その可愛い仕草っ! 似合う人選ぶよ?


 お父様が綺麗に包装された長方形の箱を渡して来た。


「さっ中を開けて見て?」


 子供の様にワクワクとした表情で、お父様が私を見る。


 中に入っていたのは……深い青色をした美しい宝石のネックレスだった。これはかなり精巧に作られた魔道具、この青い石は魔石。


「どう? どう?」


 ソワソワと私を見つめるお父様、少し可愛い。


「とても美しいネックレスですね、気に入りましたわっ」


 私は満面の笑みでお礼を言った。


「フィアたん……」


 少し目を細め嬉しそうな表情をするお父様。


「ーーですが、この膨大な魔力が練り込まれた魔石をネックレスしたのは何故ですか? これは魔道具ですよね?」

「あっ……それはだね?」


 魔道具と言われ目を逸らすお父様。

 明らかに怪しい。


「お父様、隠し事はやめて下さい」


「…………ふう。仕方ないか、あのね? ウメカ・ツゥオって覚えてる?」


 ウメカ・ツゥオだって?忘れる訳がない!


「もちろんです! 子供達を奴隷として販売していたクズ司祭ですよね?」


「ああ。そのウメカ・ツゥオがね? どうやらフィアたんを狙っている見たいなんだ。この前アジトを見つけてね? 一網打尽にするつもりが、ウメカ・ツゥオを取り逃したんだよっクソッ。捕まえた奴等に知ってる事を全て吐かせた結果、フィアたんを逆恨みし狙ってる事が判明したんだよ」


「なっ何だって!?」


 アイザックが驚き立ち上がる。


「だから、いつ何処にソフィアが居るか分かる様に、そのネックレスを作ったんだ。それを付けていれば、誘拐されようとも直ぐにソフィアを発見出来る」


「誘拐などさせてたまるかっ!」


 アイザックが肩を震わせ怒りを露にする。


「もちろん私だってそのつもりだ。これは万が一の為です」


 ウメカ・ツゥオめっ。逆恨みとかっはぁ……本当イヤなヤツだ。

 でもどーやって私の居場所を探すんだろう?


「この魔道具で、どのようにして私の居場所を知る事が出来るのですか?」


「それはね?」


 ジャジャーンって効果音がつきそうな感じで、お父様が腕にはめたブレスレットを見せて来た。


「このブレスレットに魔力を通すとフィアたんの居場所が私に伝わる仕組みさっ」


 お父様は得意げに話すけどこれって、ずっとストーキングされてるって事じゃ?!

 お父様に常に私が何処に居るか知られてるって事だよね。別に何もしないから良いんだけども……


「ちょっ! そのブレス僕も欲しい」


「えっ? はっ? アイザック様?」


 アイザック様が欲しいとか言いだした。何のストーキングをするつもりですか?


「ダメだっ! これは私だけの物っ」


「もし学園で何かあったらどーするんですか? グレイドル公爵は学園に居ないでしょ?」


「ぐっ……!」


 いやいやお父様? ぐっ! じゃないからね? ストーカーがこれ以上増えるのは困りますよ!


 ハッキリ断って下さいね!

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