第20話 設定

地極騎士団の試験は、数百人を超える参加者が集まる大規模な物となっている。

その中でも通過できるのは数名から、多くても十数名程度。

狭き門といっていだろう。


――今日俺は、この入団試験をぶっちぎりで合格する。


俺の身分は、とある貴族令息。

親に反対されているため騎士にはなれないが、せめて記念に入団試験を受けたい。

だから今日はミスリル級冒険者、スバル・ソウセイを頼って匿名――親に知られると五月蠅いと言う理由――で、試験を受けに来た。


という設定だ。

まあ貴族王族の違いはあれど、概ね俺の現状を踏まえた形といっていいだろう。


当然試験をクリアしても、騎士団に入る事は出来ない。

記念受験だからな。


入団できないのに何故受けるのか?


今回の目的はあくまでも、俺に騎士団入団試験をパスできる実力がある事を周囲に知らせる事である。

だから重要なのは、合格する事自体だ。


そして合格通知を貰った後は、『じゃーん!実はアドル王子でした!!』と身分を大々的に公開する予定である。


「さて、ぶっちぎりで合格させて貰うか」


試験場に集まる様、魔法でアナウンスが流れる。

合格する事は簡単だが、後で忖度されていたと言いがかりを付けられない様、俺はぶっちぎりで試験に合格する必要があった。


「はっ、お前みたいなガキがぶっちぎりだと?」


現在俺がいる場所は、テストを受ける人間だけが入れる控室だ。

控室はいくつかに分かれてはいたが、受験生の人数が多いため、中は大勢の人間でごった返していた。


俺から少し離れていた場所にいた一団――恐らく知り合いなのだろう――の一人が、俺の言葉を耳ざとく聞きつけて絡んで来る。


「テメェみたいな非力なガキは、合格どころか最初の試験で落ちるに決まってんだろうが」


試験は3つある。


パワー。

スタミナ。

そして、戦闘能力の順にテストが行われる。


スピードはないのかって?


スピードはパワーに含まれるからな。

漫画だとパワーは凄いがスピードは、的なのがあるが、それは余程偏った鍛え方をしている場合だけだ。

普通はパワーのある奴は、それ相応のスピードも備え付けているものである。


「そうだそうだ!」


「ガキが、夢見てんじゃねぇぞ!」


一団の他の奴も、俺を煽って来る。

雰囲気的に、最初に声をかけて来た茶髪でそばかすの少年――14、5歳――がリーダーで、それ以外は取り巻きっぽい。


「……」


ガキの下らない煽りに付き合うつもりはない。

俺はそいつらを無視して、試験会場へと向かおうとするが――


「おい!無視してんじゃねぇ!」


ガキの一人が、俺の肩を掴んで来る。

面倒くせぇな。

俺は肩にかかった手をはたき、振り返る。


「テスト会場に移動しろってアナウンス、聞こえてなかったのか?それとも……試験の成績で俺と比較されて恥かくのが怖いから、テスト事態を受けるのを妨害する気だとか?」


「なんだと!?」


「ふざけんな!!」


俺の挑発の言葉に、5人が顔を真っ赤に染める。

今にも飛び掛かってきそうだ。


まあ此処でこいつらをぶちのめすのは簡単だが、流石にそんな問題を起こすと入団試験が受けられなくなってしまう。


「違うってんなら、試験で見せて見ろよ。お前らの実力って奴を……もしお前らの成績が俺より上だったら、その時は土下座でも何でもしてやるよ」


「はっ、ほざいたなクソガキが!いいぜ、試験で圧倒的な差を見せつけてやる。精々土下座の練習でもしとくんだな」


リーダーっぽい奴がそう吐き捨て、試験会場へと向かう。

取り巻き共もそれに従う様について行った。

その際、全員に思いっきりメンチを切られてしまう。


「やれやれ、鼻っ柱の強いガキどもだな」


どれ、一つ俺が世の中の理不尽を叩き込んでやるとしよう。

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