第2話 冒険者

「思ったより中は綺麗だな」


ここは冒険者ギルド。

建物は少し年季が入っているが、清掃は行き届いている感じの場所だった。

ま、ガラの悪そうな連中は多いけど。


「冒険者登録をお願いします」


真っすぐ受付カウンターに向かい、俺は受付の女性に声をかけた。


ここに来たのは、当然冒険者になる為である。

本格的に冒険者をやるかはまだ決めていないが、折角異世界に来たのだから、体験がてら登録する事にしたのだ。


――レベル上げもしてみたいしな。


この世界にはレベルが存在していた。

経験値を得て強くなる、ゲーム的な例のアレである。

訓練などでも上がるそうだが、手っ取り早く上げるなら魔物を狩るのが一番だ。


「了解しました。登録には銀貨2枚が必要になりますが、よろしいでしょうか?」


この世界での金銭価値は、大雑把に日本円にすると――


銅貨→10円。

大銅貨→100円。

銀貨→1、000円。

大銀貨→1万円。

金貨→10万円。

白金貨→100万円。


と言った感じになる

つまり、冒険者登録するのには2000円かかるという訳だ。


受付の女性に銀貨を渡すと、用紙と魔法の鉛筆が手渡された。

そこに名前を書いて提出すると、5分程度でスムーズに登録が終わる。


「銅級スタートになります。昇格試験は毎週末行われていますので、3日前までに申し込みください。費用の方は銀貨3枚になっていますので」


受付の女性から、名刺サイズの茶色のプレートを渡される。

そこには俺の名前と、銅級と言う文字が刻まれていた。


因みに、身分証などは求められていない。


低位の冒険者は、基本的に魔物退治位関連のしか仕事が無いからだ。

単に魔物を狩るだけなら、身分とかはいらないからな。


但し、上位ランクに上がると話は変わって来る。

それはランクが上がって来ると、護衛の仕事なども受けられる様になる為だ。


流石に、どこの誰とも全く分からない人間を護衛に雇いたいって人間はいないだろう。

だから上位ランクへの昇格には、身分証が必要となって来る訳だ。


もし本格的に冒険者をするなら、何らかの方法で身分証を手に入れないとな……


「そちらのボードにランク毎の依頼が張ってあります」


冒険者のランクは7段階に分かれている。

カッパーシルバーゴールド白金プラチナ金剛ダイヤモンド魔法金属ミスリル幻想金属オリハルコンの順でランクが上がっていく感じだ。


掲示板は縦線で三つに区分されており、左が銅と銀、中央が金、そして右側は白金以上の依頼が張ってある。

基本的に受けられるのは、自分のランクより低位の物だけ。

当然最下位の銅級で受けられるのは、銅級の依頼だけである。


「分かりました。ありがとうございます」


取り敢えず、ボード左側の銅級依頼を確認してみる。

そこには森に居た角ウサギや、ワイルドウルフの討伐依頼が張り出されていた。

こいつらの討伐依頼は、どうやら肉や素材収集が目的の様だ。


「やっす……」


角ウサギの報酬は銀貨2枚。

たったの2,000円だ。

仮にも魔物なのに。


しかも、内臓と血抜きした当日の物に限ると書いてある。


まあ俺から見て青い魔物な訳だから、魔物としては最弱級なんだろう。

だが下処理までして2、000円とか、流石に酷い気がする。


「そりゃ誰も受けんわな」


銅の依頼書を確認してみると、張ってある大半が角ウサギの討伐だった。

糞不味くて、きっと誰も受けていないのだろう。


「ワイルドウルフも……まあれだな」


狼狩って大銀貨2枚――2万円――とか、安すぎないか?

まあこっちは血抜きの様な下処理は必要ないが、爪や牙を引っこ抜く必要がある様だ。

恐らくそれらが何らかの素材になるのだろう。

皮や肉は不要って書いてあるし。


「碌なのねーな」


銅級には、どうやら碌な仕事が無い様だ。


いや、単に時間が悪かっただけか。

今はお昼過ぎだ。

めぼしい仕事はもうとっくに取られた後なのだろう。


「取り敢えず、これ受けとくか」


依頼書を一枚とる。

手にしたのは、角ウサギの依頼書だ。

俺より強くて群れてる狼なんて、とてもじゃないが狩れないからな。


「これを受けます」


「了解しました」


登録を済ませ、俺は最初の狩へと向かう。


因みにもう一つの体は、おっぱい飲んでお昼寝中だ。

赤ん坊なので、腹が膨らんだら速攻で眠くなってしまった――向こうの体だけ。


まあ仮にこっちの体が魔物にやられたとしても、最悪王子としての人生があるし。

なので魔物狩りも気楽なものである。

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