第160話 そして15年が過ぎ・・・
「それでは失礼します。」
「あたしも〜。」
「あ、ああ・・・」
今日は休日だ。
久しぶりに子供達とゆっくりと過ごそうとしたのだが・・・
目の前から去っていく15歳になった
朱華はもう中学三年生、莉弦は二年生だ。
こちらを一瞥もしない。
そう、俺は長女の朱華と次女の莉弦に嫌われているのだ。
なんでこうなっているのか・・・
答えは簡単だ。
それは、俺の家族構成にある。
俺を家長として、妻には、シオン、柚葉、翔子、黒絵、そして彼女として琴音さんと翼さん。
お気づきだろうか?
小さい頃は良かった。
だが、もの心ついた頃には、この家族構成が普通の家族と違う事に気が付き、そして俺は・・・この二人に、女性の敵として扱われる事になったのだ。
シオンや黒絵達も、何度も説明はしてくれたようだが、あの娘達の中では、俺は情けない癖に、女好きというレッテルを貼られてしまっているのだ。
何故情けないという事になるのか。
それは以前、黒絵やシオン達からも苦言をされていたが・・・
『ソウ!お前はもう少ししっかりと、子供を叱らねばいけないだろう!』
『そうよ!いつも怒らずに許しちゃって!叱っているのはあたし達だけじゃない!』
『そーちゃん!もうちょっと厳しくしても良いんじゃないかな!?』
『総司くん・・・叱るのも、親の役目ですよ?』
・・・そう、俺は子供が可愛いあまり、あまり強く叱ってこなかったのだ。
あの子達は頭が良く、厳しくしなくてもわかってくれると思っていたのだ。
その結果、シオン達の言うことは聞くが、俺の言うことはまったく聞かなくなってしまったのだ・・・朱華と莉弦は。
「・・・お父さん、お姉ちゃん達を嫌いにならないでね?」
「パパ、私が慰めてあげますね?」
逆に、長男の
二人共、苛烈な所がある朱華と莉弦とは違い、穏やかな性格をしている事が功を奏したのだろう・・・美羽はちょっと思う所があるが。
「パパ、大きくなったら、私もお嫁さんになってあげますからね?それまで我慢してて下さいね?まだ、出来ないので・・・もうちょっとだけ待ってて下さい。」
・・・これだ。
誰かと誰かを彷彿とさせる物言い。
うう・・・しっかりと血が受け継がれている。
「美羽、パパとは結婚できないんだよ?美羽はパパの子供だからね?」
「え?でも、おばあちゃんとはお付き合いしているのですよね?」
「う”!?だ、だけど、おばあちゃんとパパは血が繋がっていないだろう?だから大丈夫なんだよ。でも、美羽はパパと血が繋がっているから、駄目なんだよ?」
「・・・美羽には難しい事はわかりません。」
「くっ!?」
嘘だ。
絶対にわかっている。
この子はとても頭が良い。
わかっていないふりをしているのだ。
「・・・とにかく、ありがとな二人共。お父さんは大丈夫だから。」
「・・・わかった。それじゃ、僕は美羽ちゃんと散歩してくるね?美羽ちゃん、行こう?また公園近くのおうちのワンちゃんに会ってこよう?」
「・・・はい、杏輔兄さん。それでは、パパ、行ってきます。」
二人は俺の部屋を出ていった。
・・・美羽は、少し名残惜しそうに、それでも、犬に会えるのを楽しみにしているように。
はぁ・・・ため息が出る。
しかし・・・どうするかなぁ・・・
今さら朱華と莉弦を叱っても逆効果だろうし・・・
まいった・・・
side朱華
まったく・・・なぜ母上ともあろう者が、あのような男らしくも無い者と共にいるのかわからぬ!
ワタシはあの男が嫌いだ。
優しいだけで、たいして強くも無い癖に、母上や詩音母様、柚葉母様、翔子母様、それに琴音叔母様や翼叔母様を囲っているなどと!
それに、たまに母上達に正座させられ怒られるなど、とても情けない所も見る。
本当に情けない!!
男の風上にもおけぬ!
ワタシは幼い頃より、母上に北神流を継ぐよう指導され、それなりに強いし、母上とお祖父様以外に負けた事がない。
学校でも、文武両道を地で行っているという自覚がある。
中学校でも生徒会長をしているしな。
それに・・・
「はぁ〜・・・あんなのが父親なんて・・・お母さんも見る目無いわね〜。」
ワタシの横で、莉弦がそう呟く。
莉弦もワタシと同意見だ。
莉弦はとても頭が良い。
その見た目こそ、浮ついたぎゃる?という恰好をしているものの、教師すらやり込められる程優れている。
そんな莉弦も、あの男が大嫌いなようだ。
もっとも、それは妹や弟達の中で、ワタシと莉弦だけだ。
穏やかな性格の杏輔や、イマイチよくわからない考え方をする美羽はとても懐いている。
やれやれ・・・あんな男に騙されているとは・・・いかんな。
将来が心配になる。
ちゃんと、ワタシが守ってやらねば。
あんな男の代わりに!
可愛い、妹や弟達だからな!!
side莉弦
・・・はぁ。
本当になんでお母さんはあんな奴と一緒になったのかしら?
子供を怒るような事も出来ないじゃん。
なっさけないなぁ・・・
隣にいる
お母さん達みたいな素敵な女性達なら、あんなの捨てちゃえば良いのにね?
どこが良かったのかしら?
全然理解出来ないわ。
あたしも、朱華姉も、お母さん達の事はとても尊敬している。
頭も良いし、強いし、優しいし、なんと言っても、女優やアイドルなんかの芸能人よりもずっと綺麗だし!
あんな情けない男と一緒にいる必要無いのになぁ。
朱華姉もそうだけど、あたしも学校ではとても頼りにされていて、よく人助けをしてたりしている。
この間も、街のヤンキーに絡まれたうちの生徒を、朱華姉と一緒に助けたばかりなのよね。
朱華姉は凄っごく強いから、どんな相手だって負けない!
そこに、あたしの作戦がはまれば、どんな事だって出来るわ!
今はあたしの部屋。
朱華姉と二人で、お母さん達の趣味の悪さを罵っている所よ。
今、覚えば、そんな風に調子に乗っていた事に対する天罰だったのかもしれない。
Pon!!
あたしのスマホに通知が来た。
ん?杏輔から?何かしら・・・え!?
何よ・・・これ・・・なんなのよ!!
それを見た瞬間、真っ青になる。
「ん?莉弦。どうした?」
「朱華姉・・・どうしよう・・・これ・・・」
「な!?・・・くっ!!すぐに助けに行こう!!」
「誰か大人に言ったほうが・・・」
「今、家には母上達がいない!あの情けない男しかな!あんな奴に言う必要は無い!!向かいながら母上にだけLINを打って、すぐに助けに行くぞ!!」
「・・・そう・・・ね・・・ええ、そうしましょう!!」
あたしと朱華姉は走り出した。
あたしに来た通知、そこには、
『てめぇと生徒会長だけでここに来い。』
という文言と住所、それに・・・泣きながら抱き合っている杏輔と美羽の写真だった。
*******************
あとがき
最後の事件です。
いったいどうなってしまうのか・・・ここまで読んで頂いた読者の方々にはまるわかりかもしれませんが(笑)
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