第145話 俺達の卒業旅行(2)

「すみません!ちょっとよろしいですか!?」


 中華街を散策中、スーツを来た男が話しかけてきた。

 俺が前に出て、応対する。


「何か、御用ですか?」

「チッ!君じゃないんだよ。ちょっとどいてくれる?そこのお嬢さん方、僕は〇〇芸能事務所の者なんだけど、君たち芸能界に興味無い?あるよね?少し話がしたいんだ!」


 俺に舌打ちしてから、その男は笑顔でシオン達に話しかける。

 男が取り出した名刺を見ると、俺でも知っている大手の芸能プロダクションの名前が書いてあった。

 

「君たち良いね!絶対売れるよ!さぁ、こんな所でなんだから、一緒にそこのお店で話を・・・」


 男が笑顔でそこまで言った時だった。


「くだらない。総司?行こう?」

「まったくだな。興味無い。失せろ。」

「うん。そーちゃんにそんな態度とる人の話なんて聞きません!」

「ええ、本当にそうですね。もっとも、仮にそうじゃ無くても話を聞きませんが。行きましょう?総司くん。」


 そう言って、俺の手を引き、肩を押し、その場を離れようとするシオン達。

 当然、男は焦る。


「ま、待ってくれ!あ!?偽物だと思ってるのかな!?俺は本物だよ!?なんなら、一緒に事務所に行って証明して貰っても良い!だから・・・」


 なんとか興味を持ってもらおうと、必死に説得する男。

 しかし、シオン達の表情は一ミリも動かない。


「知らないわ。他を当たって。」

「さぁ、総司くん?関係ない人は放っておいて行きましょ?」

「そうそう!時間は有限だよ?」

「ほら、ソウ、行くぞ?」


 ・・・哀れな。

 呆然とする男に向かった俺も一言。


「そういう事なんで。じゃあ。」

「待て!さっきから君はその子達のなんなんだ!彼女達は逸材なんだぞ!?必ず輝く原石だ!放っておいたら芸能界の損失だ!それをちょっと顔が良いだけの君みたいな男が彼女達の将来を塞ぐな!!君たち!君たちも目を覚ませ!!そんな奴は放っておくんだ。芸能人にも会えるよ?そいつより、もっと格好良い芸能人も紹介出来る!どうかな?」


 最初は怒りの表情で俺に叫び、その後、嘲りの表情で俺を見る。

 そして、媚びるようにシオン達にそう言う男。

 その言葉を聞いて、シオン達は憤怒の表情になる。


 ・・・駄目か。

 このままじゃ、諦めそうに無い。

 というか、先に黒絵かシオンがこの男に手をあげそうだ。

 じゃあ・・・


 俺はシオンを抱き寄せ、キスをした。

 シオンは、驚いた顔をした後、すぐに意図を察して、うっとりとしながら受け入れ、そして男に見せつけるように舌を絡めて来た。


「なっ!?」


 愕然とする男。


 そして、柚葉、翔子、黒絵にも同じ様にする。

 三人も、既に意図を理解しており、男に見せつけるように、俺の首に両手を回してしがみつき、殊更に濃厚なキスをした。


 男も、そして、周囲にいた通行人も同じく呆気に取られている。

 男はどうでも良いとして・・・周りの人には申し訳ない。


 一通りキスをし終わると、俺は男を見た。


「こういう関係なんで。それじゃ。」


 俺達は歩き出す。

 途中、ちらりと後ろを振り向くと、男はその状態のまま、まったく動けなくなっていた。

 ある程度離れると、シオンが盛大に笑い始めた。

 

「あははは!あいつの顔!面白かったわね!ざまぁないわ!!」

「ああ、芸能界などに興味など微塵も無い。馬鹿らしい。それを、あの様に自信ありげに、ソウまで貶めおって・・・」

「ええ、わざわざ人前に出たいと思いません。芸能人に興味もありません。総司くんより格好良い?寝言は寝て言えば良いんです!」

「そうだよね〜!そーちゃんを邪魔者みたいに言ってさぁ!すっごく嫌な人!!だいっきらい!!」


 それぞれ、そんな言葉を言う。

 俺は、とても嬉しくなった。


「・・・ありがとよ。俺を選んでくれて。」


 俺が溢した言葉に、全員が微笑んだ。

 

「あたし達にとっては、芸能界なんかより、総司の方がよっぽど大事よ。」

 

 シオンの言葉にみんなが笑顔で頷いた。

 ・・・本当に嬉しい。

 俺は、一生こいつらを大事にしようと、再度心に決めた。








 そして、夜。

 昨日のホテルとは別の所にチェックイン。

 部屋は・・・やはり二部屋だ。

 構図は昨日と同じ。

 一人は俺と、次の順番の人が隣のベッドで待機。


 そして・・・する事も昨日と同じ・・・いや、昨日以上だ。


「総司・・・!今日・・・!激しい・・・♡」


 俺は、誰もが羨むような芸能界より、俺を選んでくれたこいつらを、いつも以上に愛する。


「ああ!総司くん♡総司くぅん♡」


 俺を選んだ事を、絶対に後悔させたくない。


「そーちゃん!壊れちゃう!私壊れちゃうぅぅ♡」


 誰にもやるもんか!!


「はう!?ソウ!凄い♡こ、こんな恰好でぇ♡ああぁぁぁ!!」


 こいつらは俺のだ!!

 





 俺を選んでくれた嬉しさと、シオン達の俺への愛情の深さ、そして離れていかなくて良かったという安堵と・・・今まで感じた事がない程の独占欲。

 俺は、これまでで1番頑張った。



 朝、目が覚めると、身体に力が入らない。

 重たい身体でなんとか起き上がると、真っ裸の状態で、俺の両隣で寝ているシオンと柚葉、そして、隣のベッドで同じ状態で寝ている黒絵と翔子。


 ・・・うわぁ。

 俺、ほとんど最後の方記憶無いんだが・・・

 これは、非常に目によろしく無い。

 

 ・・・朝から反応しちまう・・・


 ・・・取り敢えず、起こそう。

 飯と、水分とらなきゃな。

 帰る準備もしなきゃいけないし。





 sideシオン


 今、帰りの新幹線の中よ。

 総司は、ぐーすかと寝ているわ。

 ・・・昨夜は、激しかったからね。


 総司は多分、昨日のスカウトの件があったせいで、あたし達がびっくりするぐらいの独占欲を見せた。

 あんなに激しかったのは、エッチするようになってから初めてだったわ。

 愛する男に、我を忘れる位に求められる・・・端的に言っても最高だったわね♡

 

 そんな事を考えていると、翔子が口を開いたわ。


「・・・それにしても、思惑通りでしたね。」


 その言葉に、ニヤリとするあたし達。


「・・・くくく。ソウめ。だんだんと毒されて来ているな。」

「ええ・・・このまま行けば、予想以上に早くできるかもしれないわね。」


 黒絵の悪い笑みを見ながらあたしも答える。


「はい。私、興味津々です!」

「・・・なんか、私も興味出て来ちゃった!そーちゃん、早く全員を一緒に抱いてくれないかなぁ・・・♡」


 翔子は目をキラキラとさせており、柚葉もうっとりとしている。


 そう、これはあたし達の作戦。

 総司は、頑なにみんなでするのは拒否している。

 でも、そうすると、順番が来るまで待たなくてはいけない。

 それに・・・ぶちゃけあたしも、柚葉や翔子、黒絵の可愛いくてエッチな姿を見たい。

 なんなら、そんな表情にさせてあげたい位。

 だって、もう、それくらい大事な存在になってるからね。


 だから・・・少しずつ、ハードルを下げていっているのよ。

 総司とみんなでするための、ね。


 うふふ・・・総司?


 いつまでも、それの拒否が通るとは思わない事ね!

 そのうち、四人掛かりですっごいのを味あわせてあげるわね♡

 首を洗って待ってる事ね!


 これから先に、総司が隙、もしくは、何かやらかした時に、なし崩し的にやってやろう、そんな事を話し合いながら、帰路についたわ。

 ・・・隣で寝ている総司を尻目に、ね。

 うふふ・・・あ〜楽しみだわ!!

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