第9話 クラスの女子が放っておいてくれない!

「総司〜」

「総司、あのさぁ・・・」

「ねぇ総司、」

「総司総司!」


 ・・・ずっとシオンは俺にだけ話しかけて来る。

 先週の末、シオンが偽装を解いてからずっとだ。

 土日はのんびりと過ごせたから良かったが・・・でも、難しいのは、別に嫌な訳では無いという事だ。


 どうも、俺もシオンと友だちになれた事は嬉しい事だったらしい。

 満更でも無いみたいだ。

 とはいえ、もう少し放っておいて欲しい気持ちもあるにはある。


 俺は、シオンが話す色々な事を苦笑しながら聞いている。

 

 それと、シオンからのボディタッチが増えてきた。

 シオンにそれを指摘すると、


「これくらいのボディタッチに慣れてないと、将来、女子社員と上手くやってけないよ?」


 という言葉で返された。

 ・・・そうなのか?

 俺にはそれが嘘なのか、本当なのかよくわからない。


 でも、シオンの懐き様を見ると、シオンが俺に嘘を教えるとは思えない。

 だから、まぁ、良い。

 慣れて無いよりも、慣れている方が良いからな。


「総司〜!明日の土曜日、家に遊びに行っても良い?」


 ・・・今なんて言った?


「だから〜家に遊びに行っても良いかな?って。」

「いやいやいや・・・あのね?そんな簡単に男の家にホイホイついて行っちゃ駄目だよ?」

「大丈夫だよ?総司の家にしか行かないから。」

「・・・あのね?僕も男なんだけど?」

「知ってるけど?」


 ・・・こいつ。

 にしてもちょっと強引だな・・・何か相談事でもあるのか?


「・・・なんかあるのか?」

「え・・・?っ!!ああ!そうそう!ちょっとさ!相談があって!」


 やっぱりか。

 なら・・・まぁ、良いか・・・だけど、母さんと妹もいるんだが・・・


「母さんと妹も多分いるけど・・・」

「え!?むしろ好都合!」

「・・・はぁ?」

「良いから良いから!やったー!楽しみだなあ!!」


 ・・・どういう事?

 よくわからん・・・



 こうして、一週間を終え、今週の学校が終わる。


「総司!一緒に帰ろう!」

 

 いつもの様に、シオンが嬉しそうに笑顔で俺にそう言った。

 ここ最近、いつもシオンと帰っているから、もう慣れて来た。

 それに・・・俺もシオンが嬉しそうにしていると、嬉しくなる。

 それくらいには仲良くなったようだ。


「ああ、わかったよシオン。」


 俺達は立ち上がる。

 そして、帰路に着く。


 学校から出る間も、他の男子生徒からジロジロと見られる。

 どうやら、シオンが変わったのは知れ渡っているみたいだ。

 だが、シオンに声を掛けて来る男は少ない。


 たまに告白はされているみたいだが、


「あたしには総司がいるから無理。」


 と切って捨てているらしい。

 ・・・というかなんで俺?

 俺達付き合ってるわけじゃないよな?


 名前出さないで欲しいんだが・・・

 だって、嫉妬の目が凄いし。


 それでも、直接的に言ってこないのは、やはり光彦とシオンのおかげだろう。


 あの、クレナイとシオンが知り合いかもしれない発言と、シオンの、俺を悪く言うのは許さないって言葉のおかげだろうな。


 ・・・嬉しいやら後が怖いやら・・・複雑だ。

 まぁ、良いか。

 友だちの役に立てているのなら、本望だろう。


 ・・・少し変わったか?俺も。

 

 にしても・・・こいつ距離が近い!


「な、なぁシオン。もう少し離れないか?」

「え〜?別に普通じゃんこんなの。・・・あ、それとも、何?総司・・・もしかして照れちゃうの?あら可愛い・・・」


 そんな事言ってもだな?

 肩が触れる位の距離で歩くのは照れくさいんだよ!

 童貞舐めんな!!


「いいかシオン?そうやって男を小馬鹿にしてるといつか痛い目を見るぞ?」

「大丈夫だよ?総司にしかやんないから・・・えい!」

「!?こ、こら!離せ!!」

「嫌だよ〜だ!!にしし!」


 こ、こいつ思いっきり腕に抱きつきやがった。

 む、胸の感触が腕に・・・くっ!?これがギャルりょく(?)か!?


 そんなこんなでなんとか腕を離して貰い、のんびり歩く。


 公園まで差し掛かって、そろそろシオンとお別れの場所まで来た時だった。


「そーちゃん!」


 そんな俺達を呼び止める声。

 この呼び方は・・・まさか・・・


 俺は振り向く。

 

 そこには・・・


「柚・・・南谷さん。」


 疎遠になっていた南谷柚葉がいた。

 ん?・・・なんかシオンの目がきつくなっている?


 やれやれ・・・なんなんだ一体。

 もう少し放っておいて欲しいんだが・・・

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