第7話 幼馴染み sideシオン

「あ、あの・・・すみません!ちょっと良いですか?」


 あたしに話しかけてきたのは、学校でも有名な子だった。

 確か・・・


「はい・・・南谷柚葉みなみや ゆずはさん・・・でしたよね?あの・・・私に何か用ですか・・・?」


 私は、意図的におどおどした様に答える。


 南谷柚葉・・・学校で男子生徒に人気のある、おっとり系の美人。

 何、あの巨乳・・・羨ましい!

 深い茶色の髪のセミロング。

 

 こんなのがあたしになんの用なのかしら。


「今、そーちゃ・・・暮内くんと一緒に帰ってましたよね?」


 前言撤回。

 こいつの用は明白だった。 

 こいつ・・・総司の何なの?

 そーちゃんって言いかけなかった?


「・・・まぁ、クラスメイトですから。でも、なんででしょうか・・・もしかして・・・彼女さん、とかでしょうか?」

「・・・いいえ。私は彼女では無いですよ・・・只の・・・幼馴染み・・・です。」


 幼馴染み!?

 なんて危険なワード!!

 要注意人物ね!!

 でも、なんでこいつこんなに暗い顔してるの?


「あ・・・そうなんですね?ご、ごめんなさい・・・でも、私も暮内くんも去年も一緒のクラスでしたけど・・・南谷さんと話してるところなんて、見た事無かったので・・・」


 私がそう言うと、こいつは更に暗くなった。

 ・・・何かあるのかしら?


「・・・そうですね。ちょっと昔、色々ありまして・・・いえ、良いんです。それよりも・・・あなたは暮内くんの事好きなんですか?」


 話さないのかよ!

 言いなさいよそこまで言ったのなら!! 

 気になるじゃない!

 それよりも・・・こいつ、あたしに好きなのか聞いてきたわね・・・探りを入れるか・・・


「あの・・・そう言う南谷さんは暮内くんの事好きなんですか?」

「・・・私は・・・私は・・・ごめんなさい!!」

「あっ!?」


 逃げた!?

 走って逃げたよあいつ!?


 なんなのよもう!!


 でも、わかった事もある。

 総司には、幼馴染みという危険な存在がいる事がわかった。

 ・・・これは悠長にしていられないわね・・・よし!決めた!!


 まずは、急いで家に帰ろう。

 そして準備する。


 ふふふ・・・絶対に負けないわよ・・・南谷柚葉!!


 

 


 side総司


 夕食を終え、風呂を済ませ、部屋で勉強している。

 来年は受験だしな。

 母さんに迷惑かけないよう、出来れば国立大に行きたい。

 もし、行けないのであれば就職しようと思っている。


 ピコン!


 ん?

 LIN・・・シオンか。


『明日楽しみにしてて!驚くがいい!!』


 ・・・何?明日驚けって何がだ?


 よくわからんが・・・まぁ良いだろう。

 

 『俺を驚かせたらたいしたものですよ』

 この文章と合わせて、プロレスラーのおじさんが指を振っているスタンプを送る。

 ん?また来た。


 『絶対にアレはバレない様にするからね!』


 ・・・なんか逆に不安になって来たんだが・・・

 何を考えてるんだ?


 『なんか知らんが、あまり無茶な事はするなよ?』

 『大丈夫!ちょっと騒がれるかもしれないけど・・・大丈夫!』


 おい・・・凄く不安なんだけど・・・

 そんな事を考えながら、俺はシオンとLINをした。


 一抹の不安を覚えながら。




 翌朝、全ての準備を済ませて登校する。


 そして、教室に着き・・・顎が外れそうになった。


 俺の隣の席に人が集まって、誰かを囲んでいる。

 

「すげ〜可愛い!」

「モデルみたい!!そんなキャラだったの!?」

「ちょっとなんで隠してたの!?」


 ・・・嫌な予感が・・・あっシオンと目が合った。


「あっ!ちょっとみんなどいて!総司!おはよう!!」

「・・・」


 こいつ・・・陰キャ偽装めやがった・・・

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