第6話 カノンと奏音がリンクする

『リナ』になりたい。


それがここに来てからのカノンの目標になり、そのキッカケをくれたのはシャンテだった…

『私達の目指す理想的な姿がここにあるの』と生かされるだけで覇気のないカノンを励ましてくれた初めての『仲間』です。


昨日カノンに転生してから初めて〝カノン〟の思考がダムの放水の勢いで一気に私の中に流れ込んできました。


シャンテは明るい少女で、いつ出荷されるかわからない身を忘れるフリをする作戦をたくさん教えてくれました。


カノンが母親の幸せだけが拠り所と知ると

『お館様のような吸血種族は信仰を嫌うから、カノンが神を信じるように母を敬い続けている間は怖くて何も出来ないかも』

と笑ってけしかける豪快なところもありました。


「大丈夫か?おまえ」

シークがシャンテの日誌を持ってきました。


「今はいい」

私はシャンテの日誌を読むのをためらいました。 


ここは24時間モニターで監視され、AIがターゲットの行動を文字化して記録しているのです。


私はここで生きていくなら、絶えずそのことを計算して言動に気をつけなければいけないのです。


サイとの面会後、シャンテの日誌を読んでもしも私が泣かなかったらカノンの今までの苦労が全て無駄になってしまう。

〝カノン〟のシャンテへの想いは私にはありません。


というのも〝カノン〟が記憶を残したあと気配が消えてしまいました。


私は、カノンの身体の中に置き去りにされたような気分です。


「どうした?ずっとぼんやりしているが?」 


カノンが行動して何かを話すのを待ってみましたが、何もないままで、シークに怪しまれてしまいました。


「少し、眠くなってしまったみたい」

私はカノンとして言葉を発してみました。


シークは不思議そうな顔で「いつでも眠ればいいよ」と私を慣れた様子でお姫様抱っこしてくれました。 


私は、そうされるのが当たり前のように両腕をシークの肩に回して首に鼻先を置いて安心したままベッドまで連れて行ってもらいました。


「起きたらおまえの好きなフルーツホットサンドをここに持ってくるよ」

「ココアも飲みたい」

「わかっている」


フカフカのベッドの中に昨夜と同じように身体を小さくして膝を抱えて眠る準備をします。


私の身体の中のチップはバイタルチェック機能も追加されています、嘘の眠りはシークにバレるのです。


眠れ、眠れ、

もし次に目覚めることがなくても恐れるな。

私はいつか解放される、『シャンテ』のように。

自然に呟いた言葉は眠り薬のようでした。 


きっと、カノンもこうして眠っていたのかもしれません。

『シャンテ』の名が『リナ』として。

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