黒種草
@asuka05
公園
これは、私が小学生の頃の話です。
私の家は六人家族で、父と母、祖父は一日のほとんどを仕事に費やしています。
祖母は、家に残り私と兄のご飯や習い事の送り迎えなどをしてくれました。
兄はピアノの才能があり、様々なコンクールで結果を残していました。
両親は仕事以外の日は兄のピアノ絡みで家にいることが少なかったです。
そのため、祖父母と一緒に過ごす時間の方が両親といる時間よりも長かったです。
私は家で一人で遊ぶことが多かったのですが、ある日、友達のソウちゃんとモモちゃん、ユウくんに誘われて当時通っていた小学校に近い大きな公園に行きました。
ヤシの実のオブジェが大型のアスレチックの上にくっついているため、「ヤシの実公園」と呼ばれていました。
ヤシの実公園はだいたい小学校の運動場くらいの広さで半分が遊具のスペース、もう半分が野球などができる広場で、遊具スペースの隅の方に小さい子向けの遊具が設置されていました。
それが大体遊具のスペースの六分の一ぐらいで、そこを出るとすぐに幅七メートル程の川に沿った道がありました。
ボランティア活動や町内の夏祭りなどで何度も来ているし、隣の川のに架かる橋が通学路で毎日通っていたので、毎日この公園は見ているのでこの公園のことは熟知していました。
しかし、その日は、小さい子向きの遊具と川沿いの道の間に遊具スペースの三分の一くらいの広さの見たことがないものがありました
大型のアスレチックよりも高いコケまみれのフェンスに囲まれていて、一箇所だけ扉になっていました。
その扉の前には黄色いバーと赤いカラーコーンが置かれて入ってはいけないことを主張していました。
中には木は一本も生えてないのに地面は一面の銀杏や桜の枯れ葉で積もっていて、その日は風が強い日だったのにフェンスの周りには枯れ葉は一枚もありませんでした。
「ねぇねぇこれなあに?」
と三人に尋ねてみると
「これに入っちゃダメ‼︎ばあちゃんに言われたもん」とユウちゃん
「これに入ったら呪われちゃうんだよ!」とモモちゃん
「これ中に入ったら出られないんだよ」とソウちゃんに言われ、三人のあまりの必死さに流されて私達五人は少し離れて遊ぶことにしました。
でも、結局のところこれが何なのかを教えてくれませんでした。
さて、時刻は帰る時間になりました。
口々に別れを告げているとソウちゃんが「あっ!」と声を上げました。
「君の弟がいない‼︎」
私達は公園中をくまなく探しました。
その時、私はそれの扉の前のカラーコーンやバーが倒されているのを見つけました。
フェンスの隙間を覗くと中央に私の弟が履いていた小さな赤い靴の片っぽが落ちていました。
私は迷わず中へと飛び込みました。
中は外から見ていたものとはちがいました。
フェンスの隙間が見えないほどコケで覆われていて、枯れ葉は隅っこに大きな山を作り、夜のように暗かった空は薄い灰色で、フェンスは竹林の竹のように高く高く聳え立ってるように見えました。
さっきの赤い靴は中央ではなく一番隅っこのフェンスの角に落ちていました。
なんだか不気味で怖くなってきたため、急いで拾って引き返そうとしました。
しかし、入ってきた扉が見当たりませんでした。
そのため、靴を持ってフェンスをよじ登ろうとしたのですが靴もどこかに消えてしまいました。
仕方がないので私はフェンスをよじ登り、とにかくこれを脱出しようとしました。
どれくらいたったでしょうか、私はあることに気がつきました。
「私に弟っていなかったはず」
それに気がついた瞬間、フェンスから限界を迎えた指が離れてしまいました。
そのあと私がどうなったのか、わかりません。
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