繋がる世界

いく

エピソード0 出会い

「生きてますかっ!」

その声の主は、素早い身のこなしで猫のような姿をして頭には山高帽、白いシャツにベスト、長丈のスーツを着ている左頬に傷がある2足歩行の

「生きてますよ!モラル!」

フラフラになりながらも、立ち上がって戦闘態勢をとっているその狐のような姿をし頭にはハンチング帽こちらも白いシャツにチェック柄のベスト、上着は着ておらずベージュ色のパンツを履いていて、右手にはサバイバルナイフをにぎっている。

その2匹?の前には身長2mくらいの異形の化け物が雄叫びをあげながら、こちらを睨みつけている。

「さあ、どうしましょうか?ラリト」

やれやれというような顔つきで肩を竦めてる。


「ん~…アレでいきますか!」

と、モラルに目配せをした。


気づいてないふりで言ってみた。

「ん?アレってなんですか?」


無邪気な子供みたいな声で

「アレですよ!アレ!いつものですよ!」


「だから!なんなんですか!!!」


「行きますよ!」

「終わったら美味しいご飯作ってあげますから!」

そう言ってラリトは一直線に化け物に突っ込んでいった。

「もう…またですか…」

「ご飯、期待してますよ!」

深いため息をつきながら、モラルも合わせて突撃していった。


‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦



半年前…


お……き……! お……きて…!

大丈夫ですか?起きて下さい!

ハッとして身体を起こすと、そこには見慣れない2本の足で立っている猫の姿をした黒く大きな瞳で身長が女性の腰くらいのがいた…

ん…どこだここは…朦朧とする頭で考えるが、何も思い出せない…


大丈夫ですか?

大きくて黒く、光の灯ってない瞳で覗き込むように見つめてくる猫。

なにか、不気味さをかんじながらも


あぁ…大丈夫だ…


本当に?まだ目開いてませんよ?


コレは元からだ!

てか、お前はナニモンだ!猫がなんで立っている?ココはどこなんだ?

矢継ぎ早に質問をすると、ハッと何かを思い出したかの様に

ラル!ラルはどこにいるー!ラルーーー!

大声で呼ぶが返事は無い…


落ち着いて下さい。

ココにはあなたしかいませんでしたよ?

あなたは怪我をしてるんですよ?先ずは手当をしないと。


そんなのは、どーでもいい!

苛立ちを隠せず大声で言い放った。


ムスッとした顔で猫の姿をしたものが子供を言い聞かせる様に話す。

先ずは落ち着いてください。

話はそれからです。


ちょっと冷静になったのか、落ち着いた声で


分かった…すまない…

ちょっと気が動転してて…


頭を抱えながらゆっくりと深呼吸をして、そちらを見返した。


で、お前は何者だ?なんで猫が立ってる?


やれやれという顔をしながら

何言ってるんですか?

貴方だって狐じゃないですか?なんで喋れるし四つん這いじゃないのです?


そ、それは…私は…


あーいいですいいです!そんなのはどーでもいいんですよ。

俺はモラル。

ちょっとこの街でなんでも屋のアルバイトしてるものです。


アルバイト?

(その割には抱えた袋からマカロンを取り出して食べてるじゃないか)


そう、アルバイトですよ?

そのアルバイトの途中でたまたま

あなたが倒れてるのを見かけて、気になって声をかけてみただけです。


そうか…ありがとう…

ところで、ココはどこなんだ?


さあ?俺も分かりません?


はぁ?分からないってなんだよ!


分からないものは分からないのです。

私も、1ヶ月前にココに来たものですから。


えっ?


そーです、多分俺もあなたと同じく訳も分からずこの街にいたんですから。

そこで、ある方に拾われて今その人の所でアルバイトをしながら、帰る方法を探してるって事ですよ。


拾われたって…捨て猫か?と思ったのは口に出さないでおいた。

って、帰れるのか!帰る方法があるのか!


だから、探してる最中ですって言ったでしょ!

ここでは、俺のデバイスも使えなくて困ってるんですよね…コッチに来てから光を失ってしまって…

そー言って、ポケットの中から3つの輪っかのようなものを取り出し、しげしげと眺めてから、またポケットの中へしまい込んだ。

ところで、あなたの名前は?

そして、なぜ巫女服を、着ているのです?

コスプレですか?


コスプレじゃねぇーわ!

コレは…母の仕事を………

すこし、悲しい顔をしながら

…私はラリトといいます。

かんなぎの仕事をしています。


ほほぅ、それで巫女服なのですね。

では、ラリトさんにこの街の事を俺が知ってる範囲でお教えしましょう。

ここは、対廃街。

日本で言えば、大正時代と近未来を足したような街ですね。

言語や種族も多種多様です。

俺たちみたいのもいれば、人外やアンドロイドや普通の人間もいます。

そして、闇に隠れるものも……


ラリトはゴクリと唾を飲み込んだ。


文明は発展してますよ!アンドロイドもいるくらいですからね!

風情は古臭いですが、店とかは色々ありますね。

そのおかげで、そこの角にですね!とても美味しいマカロン屋さんがあるんですよ!

あっ!コレですコレ!1日50個限定ですぐに売り切れるんですけど!今日は買えたんですよ!あげませんよ?

凄く興奮しながら熱く語るモラル。


あの…マカロンの話はあとでいいですか?

呆れ顔でラリトが言うと。


ちょっと頬を赤らめながら小さく咳払いしながら話を続けた。


んっ!んん!

ですから、いろんな種族がいるせいかあちこちで大小様々な事件が起きるわけですよ。

そこで、俺の今働いているとこみたいのか出番ってわけです。


ん?ん?ちょっと待ってください?

警察とか、そーゆーものはないんですか?


もちろん、ありますよ!

ありますけど、それはあくまでも一般的な問題だけでそれ以外には手が出せないんですよ。


???それ以外って、なんですか!

警察でも手に負えないものがあるんですか?


少し不敵な笑みを浮かべながらモラルは言った…

ありますよ。俺達もその事例の1つじゃないですか?


何かを察したようにラリトは頷く。


そう言ったものの観察や処理などをおこなっています。

もうね、うちは少人数でやってるせいか凄くこき使われてましてね、猫の手も借りたいならぬ狐の手もかりたいわけなんだすけど…

どうですか、俺と一緒に来ませんか?

俺の見たところ…あなたなかなかできますよね?

どうせ、今のところ行くあても帰るあてもないでしょう?


俺も、あの子のところに帰らないといけないので…

聞こえないくらいの小さい声で呟いた。


ラリトは一瞬戸惑いながら…

分かりました。帰る方法が見つかるまでお世話になります。


それでは、先ずはうちのボスに会いに行きましょうか。

そう言って、ラリトに向かって手を差し出した。


了解しました。どんな方かはわかりませんが、会いに行きましょうか。

差し出された手を固く握り返した。


これが、2匹?の初めの出会いであり数々の奇怪な事件の幕開けとなるのでありました。


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