ガールズ・イン・ザ・アナーキー

@fargo

プロローグ


 夕日が沈み、夜になりかけた時間帯。

 一台の車が道路を走っていた。

 ヘッドライトを頼りに瓦礫を避けていく。

 ここは荒廃した世界。

 数ヶ月かけて、通って来た道は全てが廃墟と化していた。

 かつては日常生活に使っていた物たちが、今は道を塞いでいる。

 ようやく障害物の無い道路に出ると、スピードを上げていく。

 その時に、何かが前を横切った。

 急ブレーキを踏み込み、旋回しようとするも間に合わず。衝突して跳ね飛ばしてしまった。車体が一瞬揺れ、やがて収まった。

 ドアが開く。

 ロングコートを来た女が現れた。

 その女はブーツで固めた足でアスファルトの床をコツコツと歩いていく。

 車から大きく離れた位置に犬が倒れていた。

 体の一部が潰れており、血の海で踊り狂っている。苦しそうにうめいている。

 女は戸惑うような動作をしていた。

 両手で顔を覆うのがシルエットだけでもわかる。

 そして、コートの中に手を入れると、何かを取り出した。

 それは拳銃だった。

 犬に向けて狙いを定めると、引き金を引いた。

 火薬が破裂する音が鳴り響いた。

 女の慈悲だった。苦しみから救うための。

 自分が手にかけた犬を抱き抱えると、林の中を進んでいった、そして亡骸を木陰に置いた。

「……ごめんね」

 一言女は呟くと、両手を合わせて合掌した。

 額までしっかりと手をあげて。

 長いことそうしていた。

 女は天を仰いだ。

 夜空には星々が煌めいている。

 ただそこに突っ立っていた。

 やがて、祈りを終えて。女は再び車に乗り込んだ。

 アクセルを踏み込み、発進させる。

 先程とは少しだけ遅めの速度で去って行く。

 後には静寂だけが残された。

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