3話 薔薇の王子様

「やめな!」


そういいながら男の拳銃を薔薇の花を投げて叩き落とす男が現れた。

彼は今日私が誘拐される直前に出会った男。

キール・エンバニアだった。


「貴様は!」

「俺はキール。そこの女を助けに来た王子だ!」

「何だと!? ちっ ここは撤退だ!」


黒の組織の男達は逃げだしていく。


「逃げるか。まあいいさ。それよりあんた大丈夫かい?」

「はい。助けていただいてありがとうございます」

「礼は後でいい。今は安全な場所まで移動するぞ」


そういうと私を連れてその場から離れていく。

そして十分離れたところで立ち止まる。


「ここまで来ればもう問題ないだろう。怪我とかしてないか?」

「はい。おかげさまでなんともありません」

「そりゃよかったぜ。ところでどうしてあんなところにいたんだ? 俺が言えた義理じゃないが危ないところだったぜ」

「実は――」


私は彼に今までのことを話した。


「なるほどね。そんなことがあったのか。災難だったな」

「いえ。それよりもあなたは何でここにいたんですか?」

「ああ、実はだな」


キールさんは事情を説明してくれた。

何でも彼は私と別れた直後にたまたま私が連れ去られるところを目撃してしまい慌てて追いかけてきたらしい。


「だからあんな絶妙なタイミングで助けてくれたんですね」

「そうなる」

「助かりました。正直どうやって切り抜けようかわからなかったので」「気にすんなって。惚れた女を見過ごせなかっただけだ。それにしてもまさかあの黒の組織が絡んでくるとは予想外だった」

「私もです」

「それじゃ帰るか」

「はい」


それから私たちは屋敷に戻ることにした。


「それじゃあ私は迎えがあるので」

「おう。気をつけて帰れよ」

「はい。キールさんもお元気で」

「ああ」


そう言うとお互いに手を振り合う。


「そうだ。最後に名前を聞かせてくれ」

「ユリヤといいます。ユリヤ・ユーデルフェルト」

「ユリヤか。覚えておく。それじゃあな」

「ええ。またいつか」


そう言って別れを告げて去っていった。

その後私は迎えの車に乗って家に帰ることができた。

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