第154話 お呼び出し
「お〜い旭〜。女子がお呼びだぞ〜」
放課後。大地が教室の扉の前で俺に向かってよびかけていた。女子が?
「ぬわぁにぃ?!」
「いや、反応よ」
こいつは何を言っているんだ。女子に呼び出されて喜ばない男子はいないだろ?
思ったより大きい反応だったからか、クラスの視線を少しだけ集めてしまった。いやん、そんなに見ないで〜。
とりあえずそんな視線を振り払いながら、教室から出て、件の女子に会いに行く。
「あ、旭」
「天使じゃん」
俺を呼び出したのは我らが天使、伊織だった。
「な、何言ってるの…」
照れ臭そうに頬を少しだけ赤く染めながら、ジト目でこちらを見る伊織。やっぱかわいいなぁ。
「んで、どったのさ」
「あ、うん。今日、一緒に帰ろ?」
「ん?あぁ、そういう事ね。オッケーオッケー!」
伊織からの御用事は、下校へのお誘いだった。今日はこの後帰ってゲームするだけだし、俺は迷う事なく承諾した。
「ちょっと待ってて。鞄持ってくるから」
「あ、うん」
「二秒で戻ってくる!」
「そんなに急がなくていいよ」
伊織の呆れた視線を背に感じながら鞄を取りに自分の机に戻る。
しかし、なぜか大地が俺の席に座って、興味津々な顔をして俺を見ていた。
「旭って伊織さんと仲いいんだな。幼馴染なんだっけ?」
「あん?そうだけど、伊織の事知ってるのか?」
「そりゃもちろん。有名人ですから」
伊織が有名人?あいつ、何か問題行動起こしたっけ?
「伊織は問題行動起こしてないはずだけど」
「お前と一緒にするなよ」
「じゃあなんなんだよ」
「いや、だってかわいいじゃん?」
「は?」
かわいいのは認める。お前はいい目をしている。じゃなくて。
「関係あるか?」
「だから〜、かわいいから有名なんだよ。入学当初からそこそこの有名人だったぜ?」
「はぇ〜」
全然知らなかった。
「てか、付き合ってるの?」
「いや、別に」
告白はされたけど、言う必要はないだろう。
「…まぁ、どうでもいいけど、伊織さんは結構狙ってる人多いからな」
「は?」
「さっきも言っただろ?かわいいんだよ」
「よせよ、照れるだろ」
「なんでお前が照れるんだよ…簡単な事だ。かわいいから狙われてるんだよ。聞けば気遣いもできて話しやすい、そしてかわいい。そりゃ人気だって出ますわな」
「…へぇ…」
「なんで急に真顔になるんだよ」
「…なってねぇよ」
俺は彼氏でもなんでもないし、伊織を狙っている人に対して何かを言える立場じゃない。
ただ「伊織が狙われている」と聞いて、少しだけ焦燥感というかなんというか、そんなものを感じた。
「てか待たせてるんじゃないのか?」
「いや、お前が話しかけてきたんだろうが」
「おっと、そうだったか?そいつぁ悪かった」
全く謝る気がなさそうな大地に呆れながらも、目当ての鞄を持って出口に向かう。
「んじゃ、また明日」
「おう、なんか面白い事あったら教えてくれよ〜」
笑いながらそう言う大地に背を向けて思う。
面白い事ってなんだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます