第60話 役割
「それじゃ!喫茶店ってことで良いですかー!」
「「「「異議ナーシ」」」」
俺が休憩所を提案してからクラスの人たちはいろいろと意見を出すようになった。
まぁ、結果的に俺が出した休憩所は取り下げられず、「飲み物売ればよくない?」という提案に「じゃあ、いっその事、喫茶店で良くない?」みたいな流れになった。このクラスの連中は意外と適当な奴ららしい。
「じゃあ、接客だけど…」
「高橋が良いと思いまーす」
「じゃあ高橋君、一人目ね〜」
「うおぉい?!」
さっき爆笑してた罰だ。ざまぁ見やがれ!
「高橋君、何か不都合あるの?」
紀野さんが真面目な顔でそう高橋に聞いている。
「いや…ないけど…」
「じゃあけってーい!」
「いえーい!」
「旭てめ」
紀野さんの真面目な問いかけを断る事ができなかった高橋は、俺を恨みの籠った目で見てきていた。怖くないでーす。
「他にやってくれる人いませんかー?」
「はーい、あたしやってみたい!」
そう言って元気よく声を上げたのは俺の双子の姉、陽葵だった。
「やめとけ、お客さんが血まみれになる」
「うるさい」
「あだぁ?!」
首に鋭い痛みが走る。
後ろの席の陽葵を見ると右手にはシャーペンがあった。デジャブ。
「まぁ、やってくれるなら大歓迎だよ!」
それからも話し合いはスムーズに行われて、あっという間に接客係、裏方、宣伝係など、役割が決まっていった。ちなみに俺は宣伝係です。やったね!仕事がほとんどない!
「お、決まったみたいだな」
話し合いを始めてから一時間くらい経ったあたりで三島先生が降臨した。
「じゃあ、誰か実行委員やってくれる人いないか?」
さっきまで賑やかだった教室が一瞬で静まり返る。
まぁ、誰もそんな面倒くさい役やりたくないよな。
そんな状況の中、先生は黒板にまとめられた話し合いの内容に一通り目を通して、こちらに向き直った。
「…いないならこっちで勝手に決めるぞ。そうだな…伊織、それと佐倉弟、お前らに任せた」
「「え」」
伊織と俺の声が綺麗に重なった。いや、ちょっと待て。
「なんでですか?!」
「実行委員は男女合わせて二人。役割的に暇そうなお前らを選んだだけだが?」
「いやいや、他にもいるでしょう?」
「お前ら幼馴染なんだろ?勝手がわからない奴より知ってる奴との方がやりやすいだろう?」
「いやでも!」
「何が不満なんだ?やりたくない、みたいなふざけた理由だったら生きて帰れると思うなよ?」
「急に怖い!」
「理由、あるのか?」
「…ないっす」
「よろしい」
言葉に詰まってしまい、了承するしかなかった。
急に怖くない?俺ってもしかして一歩間違ってたら死んでた?この先生怖いよう…。顔はかわいいのに怖いよう…。
「伊織もそれでいいか?」
「あ…はい」
「よし、余った時間は準備に使って良いぞ。今日から一週間、準備期間で授業はないからな。だからといってサボりは許さん。しっかり準備するように」
そう言って先生はまた、教室から出て行ってしまった。
俺は伊織の方を見てみると、ちょうど伊織も俺の方を向いて目があってしまった。
伊織は困ったような目をして俺を見ていた。
俺はどんな顔で伊織を見ているのだろう。
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