第19話 勇者様
俺は村人のアサヒ。俺は今魔王城の扉の前にいるぜ。
なぜこんなところにいるかって?それはついさっき、魔王ミシマにここに連れてこられたのだ。
あれ?魔王が自らここに連れてきたのか?それじゃあこの中にはいったい誰が…はっ?!まさかこの世界には魔王が二人も?!
「…入らないんですか?」
「…え?」
突然後ろから声をかけられる。
亜麻色の髪を長く伸ばした少女がジトっとした目で俺を見ていた。うん、かわいい、グッジョブ。
この人もここに用事だろうか。まさか魔王を討伐に?!勇者様か!
「あ、どうも勇者様」
「…何を言ってるんです?」
普通にひかれちゃった。
勇者の顔に警戒の色が見え始める。まずい、このままだと魔王の前に俺が討伐されかねない。
「えっと、佐倉旭です。三島先生にここに連れてこられたんですけど、あなたもここに用事ですか?」
「あ、あなたが佐倉さんでしたか」
「え?」
なんと、この少女は俺のことを知っているようだ。
「
「あ、はい」
魔王の手先でした。
どうぞ、と促され生徒会室に入室する。そこは事務机が数個並んだ程度の簡素な部屋だった。
一番奥の机におそらく先輩だろう男女が結構近い距離で資料を読んでいた。
「皇君、佐倉さんがきたよ」
雨宮先輩は外で話した時よりも砕けた口調で話す。
「あぁ、すまない。それじゃあ
「わかりました」
そういい、琴乃と呼ばれた少女は雨宮先輩と一緒に端の席に移動した。
移動したことを確認するとその視線は俺に向く。
「やぁ初めまして。生徒会長の
キラッと効果音がつきそうな笑顔で自己紹介をしてきた皇会長。ん?皇?
俺が聞き覚えのある苗字に違和感を覚えていると座れと目の前の席を指されたので指示通り席に着く。
改めて皇会長を見てみる。短めの茶髪に整った顔。特徴といえば少し吊り上がった目だろうか。イケメンだ、むかつく。
「ども、佐倉旭です」
とりあえず自己紹介を返して本題に入る。
「それで、僕に何の用ですか?」
「そんなにかしこまらなくてもいいよ。君は僕の妹の恩人だからね」
「妹?恩人?俺には覚えがありませんね」
かしこまらなくていい、と言われたので少し気を楽にして話す。
「おや、気づかないかい?俺の苗字は皇だよ?」
すめらぎ、そんな苗字の人は俺の知り合いに一人しかいない。
「皇楓さん、ですか?」
「正解」
そういい少し笑って見せる。イケメンだ、むかつく。
そしてすぐにまじめな顔つきになり頭を下げる。
「楓を助けてくれて、ありがとう」
「ちょ?!」
年上に頭を下げられたのはこれで二回目だ。俺はヤクザかなにかなのか?
少しため息をつく。
「そもそも、俺は何もしてませんよ」
「そんなことはない。前よりも明るくなって、学校であったことも楽しそうに話してくれるようになったんだよ。その話の中には大体君の名前が出てきていたよ」
「え、まじすか」
ひえぇぇ、何を言われてるんだろう。「あいつ陰キャのくせになれなれしいんだよな」みたいなこと言われてるんだろうか。いや、皇さんの性格上そんなこと言わないだろう。いわないよね?
「楽しそうに話すもんだから、お礼とついでに、どんな人か見ておこうと思ってね」
とりあえず、怒られるということはなさそうなので安心する。
「会長、ここの計算の答えが出てこないんですが」
とつぜん、琴乃と呼ばれる少女がパソコンを持って皇会長に聞いてきた。
「いや、俺もあまりこういうの得意じゃないからな」
皇会長はパソコンの画面をみて困惑する。
「私もあまりこういうことはやらないから…」
雨宮先輩もそういう。
話の途中に出されたからか、俺はそのパソコンに興味が出てしまい、席を立って画面を見る。そこには表計算のソフトがあった。なんだこれか。
「これ、答えを出す関数の式が間違って入力されてますよ」
「「「え?」」」
三人して一斉にこっちを見る。え?なに?
俺は三人をとりあえず無視してキーボードをたたく。
「この関数、似てますけど用途は全く違います。こっちにすれば…ほら、いったでしょう?」
画面には正しく導き出された答えが表示されていた。
パソコンはそれなりに知識はあるほうだと思う。親の代わりとかで地域の行事の資料作成とか手伝ってきたからな。
皇会長はパソコンの画面を見て何かを考え始めた。もしかして間違ってる?やだ、恥ずかしいわ!
答えが出たのか会長は俺のほうを見てこういった。
「生徒会に入らないか?!」
「お断りします」
これ以上俺の放課後を削られてたまるか。
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