135.撤退か徹底抗戦か
戦いは一方的となり、敵は数の有利を生かすことなく沈んでいく。
すでに戦艦も空母もただのエサとなり、攻撃は当たらず撃たれれば簡単に命中している。
「ねぇねぇブルー君! あのおっきいの私がもらってもいい?」
「要塞母艦? 別に構わないよ」
「やった! じゃあ敵が集結する前にやっちゃうね!」
ローザが喜び勇んでバリアフィールドのはがれた要塞母艦へ向けて突っ込んでいく。
要塞母艦はバリアフィールドが無くても装甲が分厚いのだが、今のローザにとっては紙ぺらと変わりないだろう。
周囲の敵を分身しながらの攻撃で破壊し、遂にその姿を目視で捕らえた。
速度を緩めるどころか加速し、要塞母艦の前方やや下から突進する。
だが……突然船に衝撃が走り、進路が変えられてしまった。
「きゃぁ! なになに? 一体何があったの⁉」
ローザの重装戦艦の左舷から、敵の戦艦が体当たりをしてきたのだ。
流石にウエイト差があるため直ぐには体制を立て直せないでいると、今度は右舷から巡洋艦と駆逐艦が体当たりをしてきて挟み込まれてしまった。
バリアフィールドがあるので直接的なダメージは無いが、かなりの衝撃だ。
「ローザ! シルバーあれは何だ!?」
「敵戦艦と巡洋艦、駆逐艦です。どうやら捨て身の攻撃をしてきたようですが、ローザはマップを見ていなかったのでしょうか」
確かに戦場マップには敵の動きが全て表示されており、体当たりして来る戦艦も確認できていた。
だからといって、まさか戦艦が体当たりしてくるなどと思うはずがない。
「見てたわよ! 見てたけどまさか体当たりして来るなんて思わないじゃない!」
「それをローザが言いますの? 一番体当たりをしている人が」
エメラルダに突っこまれる。
ローザパンチで八百隻ほどを破壊したのだから、文句など言えるはずもない。
「そ、それはそれ! これはこれ!」
などと言っているが、楽観できる状況ではなかった。
戦艦たちは全砲門を開けて、超近距離攻撃を
レーザーとミサイルが大量にローザの戦艦に向けて発射され、爆炎とレーザー同士の干渉とバリアにより辺り一面に稲妻のようなプラズマが大量発生する。
そして当たり前だが戦艦も巡洋艦も駆逐艦も、味方の攻撃により爆散してしまった。
自爆攻撃のような体当たりだったが、煙の中からローザの船が悠々と姿を現す。
「? 何をしたかったの??」
もちろんローザを倒したかったのだが、一番の目的は要塞母艦を守るためだ。
ほんの一
「司令官、バリアフィールドの稼働率四十三パーセント。何とか間に合いました」
「うむ。だが味方には無茶な事をさせてしまったな」
「ええ、必ず
要塞母艦のバリアフィールドが回復し、遠くにいた敵艦も接近し
まだまだ敵の数は多く、ようやく七万隻を切ったところだ。
『艦長、私も戦闘に参加する許可をお願いします』
「ブラウンも戦いたいの?」
『改良した戦艦の試運転をしたいのです。相手としては丁度良いので』
「ああそっか、敵も合流してきたし、好きに動いて良いと思うよ」
『ありがとうございます。では早速』
そう言うと
火力型も機動型も形は変わっていないが、中身は大幅なバージョンアップが施されている。
ブースターを吹かして揃って前進すると、まるで大きな一隻の船の様な隊列を組む。
一糸乱れぬ動きで攻撃をすると、全ての船が攻撃できるようにわずかに隙間を開けている。
どうやら疑似的にローザのスキル攻撃を再現しているようで、分身は出来ないがそのぶん数を増やしているのだ。
攻撃力自体はローザの方が上だが、数が多いのでより多くの敵に攻撃が可能だ。
「なんかみんな凄い事になってるね。よーし、僕も参加するよ!」
ブルースが戦線に加わった事で、かなり一方的な戦いが始まった。
ファランクスシステムの巨大人型機動兵器モードだが、六百メートルもあるのに異様に機動力が高く、攻撃力も高いのだから仕方がない。
攻撃が通らないという
ローザは縦横無尽に動き回って戦艦と空母を破壊しまくり、シアンはあまり動かないがホーミングレーザーで確実に敵を撃ち落とす。
オレンジーナは観光を楽しむようにあちこちに移動し、敵の乗組員を観察して回る。
エメラルダはジズだけでなく、ペガサスとグリフォンまで機械的な鎧を纏わせ、宇宙で戦っている。
シルバーは
数時間が経過した。
気が付けば残った船は要塞母艦のみになっており、必死に攻撃をしている様だが全く命中しない。
要塞母艦に搭載された複数の戦艦も残ったままで、勝負がついたと思ったのか全く動かす気配がない。
「司令官、撤退……なさいますか?」
「バカが。撤退した船乗りがどうなったか、お前も知っているだろう」
「そう、ですね。死刑は御免です」
だが既に打つ手はなく、こうなったら降参した方が良いのか? などと頭をよぎる。
『ダメよ。降参は認めないわ』
そんな無情なオレンジーナの声が通信機から聞こえて来た。
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