117.戦艦プロヴァントールの艦長
『シルバー、シルバー起きてください』
コックピット内でうな垂れるように座っていたシルバーの目が開く。
両腕がコントローラーにはまっていたので倒れないが、どうやら電源が落ちていたようだ。
「起動しました。私はどれだけ停止していたのですか?」
『十一分四十一秒です。改造が完了しましたので、機能チェックをお願いします』
シルバーは上体を起こし、セルフチェックで全身のセンサー、サーボ(モーター類)の点検を行う。
セルフチェックは電子的なチェックなので、時間はあまりかからない。
「チェック完了しました。各部位に異常はありません。それよりも、セルフチェックの時間が通常の半分の時間で完了しました」
『処理速度は一.六倍ですが、プログラムの最適化も行いました』
「そうでしたか。それでは私は戦列に戻り……ああ、そういう事ですか」
シルバーは改めて全天モニターを見ようとする。
しかしモニターには何も表示されていない。
だがシルバーは迷わず操作をし、敵機を正確に攻撃している。
『感覚に差異はありませんか?』
「問題ありません。直接頭に入ってくる方が、処理の短縮になりますね」
全ての情報はシルバーの頭に直接送られていたのだ。
今まではモニターを確認してから動いていたが、そのワンテンポを短縮して行動に移す事が出来る。
「ありがとうございますブラウン。これならマスターのサポートとして問題ありません」
『お気になさらず。私も艦長のお役に立ちたいだけですから。ではこれにて』
ブラウンからの通信が終わり、シルバーは戦列に参加する。
とはいえすでにローザが駆逐艦を壊滅状態にし、シアンは艦載機パイロットが出撃を拒むほどに撃ち落としていた。
残りは巡洋艦と空母、そして戦艦だ。
「マスター、一番大きく腹の膨らんでいる船を空母、重力制御で動いている三隻を戦艦、残りを巡洋艦と呼称します」
「わかった。多分赤い戦艦が旗艦かな? アレを必死に護ってるね」
「ねえねえブルー君! あの赤白黒の三つが超硬いんだけど!!」
「近づこうとしたら押し返されるし、攻撃したら光が曲がっていくんだよ、ダヨ!」
戦艦と空母は重力制御で動いているため、バリアフィールド以外にも
最初の一撃は命中したが、危険性を
ブルースのハンマー改でも、重力制御された戦艦相手には分が悪い。
仕方なく巡洋艦から倒そうと話合いをしていたのだが、どういう訳か敵艦からの攻撃がやんだ。
『こちらは戦艦プロヴァントール、人型兵器のパイロット、聞こえるか?』
思わず動きが止まる四機。
どうやら敵戦艦からの通信のようだ。
「えっと、聞こえてるけど、戦艦の人ですか?」
『そうだ、私は戦艦プロヴァントール艦長のハイナーだ。降伏を受け入れてもらいたい』
「こうふくぅ~? わざわざ攻め込んできて、分が悪くなったら降伏? 都合がよすぎない? この前なんて私は殺されてるんだよ!?」
『生きているではないか?』
「まあまあローザ落ち着いて。降伏するって事はこっちの言う事を聞くっていう事だから、お仕置きくらいは出来るんじゃない?」
「この星では宇宙法などありませんから、全てはマスターの
「ブルースが決めたらいいんだよ、ダヨ!」
ブルースにゆだねられたが、かなりの船を破壊したためブルースとしては十分だと思っている。
あとはローザの気が収まるかどうかだ。
「ローザはまだ気が晴れない?」
「もっと暴れたいけど、戦意のない相手を倒すのも嫌だし……はぁ、なんか冷めちゃった。ブルー君に任せるね」
「ありがと。じゃあハイナーさん、あなた方の降伏を受け入れますので、ひとまず全部収容します。
艦隊の目の前に
話合いの途中で目の前に移動をしていたのだろう。
相手に絶望を与えるには十分な演出だ。
『な、なんだコレは!! 一体いつの間にこんなものが!』
通信は開いたままなので、向こうの混乱がそのまま伝わってくる。
その混乱っぷりを聞いて、なぜかローザが満足げだ。
どうやら気が晴れたらしい。
「あれ?
『戦艦・空母の収容は出来ませんが、小型艦の収容及び大型艦の
「わかった。じゃあブラウン、収容と曳航をお願いね」
『了解しました』
空母と戦艦は牽引ビームにより出っ張った部分の真横に固定された。
「おっきい船から小さい船が出てきたんだよ、ダヨ⁉」
「探査戦艦なので、調査艇のような物でしょうか。それにしても凄い数ですね」
大小さまざまな船が百隻以上は出てきた。
出て来た場所は大きな空洞になっており、そこにところ狭しと巡洋艦が入る。
元々入っていた船は曳航している戦艦と空母を囲むように配置され、護衛という名の逃亡阻止をする。
ブルース達も船に戻り、ハイナー艦長を迎え入れ準備をする。
といっても案内はブラウンがするので、会議にも使われる大広間で待つだけだ。
大広間の扉が開けられた。
そこには棒人間のようなロボットが二機立っており、その後ろに制服を着た二人の男性がいた。
「降伏を受けいれてくれた事、感謝する。私がハイナー、もう一人は副官だ」
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