105.野蛮人なりの戦い

「マスター、敵の艦載機十二機が射出されました。私達も空戦に移るべきでしょう」


「わかった。そっちはレーザー兵器搭載航空機型ドローンファランクスは何機つかってもいいからね」


「では急制動にも使いたいので三機お借りします」


「どんどん使って!」


 大量に呼び出したレーザー兵器搭載航空機型ドローンファランクスが敵艦載機へ向かい、シルバーは大地を蹴ると三機を体に取り込み、デルタ型ドローン一機を下半身に、二機を肩に装備した。


 ブルースは一機としか融合できないが、十分空戦に耐える機動性は持っている。


「ローザを苦しめた罪、償ってもらうよ!」


 背中のジェットエンジンを全開にして、大量の砂煙を巻き上げて跳ねるように上昇する。

 煙の中から現れたブルースは一機の艦載機に取り付こうとするがかわされ、両肩からレーザーガトリングを発射する。


 レーザーは命中するものの、機体に当たる前に何かに弾かれた。


「え!? なんで!」


『防御フィールドですマスター。小型機の割に強固なので、そのレーザーガトリングでは破壊は難しいでしょう』


 ブルースは方向転換し、別の艦載機を目指す。

 その間もドローン達が艦載機にまとわりつき攻撃をしている。

 だがそちらの攻撃もはじかれていた。


「じゃあどうしたら良いのさ!」


『少々お待ちを。今から試してみます』


 そういうとシルバーはジェットをふかし、ドローンに気を取られている一機に向かうと、艦載機の直前で何かに止められるも更にエンジンを回して取り付く事に成功する。

 どうやらレーザーなどは防げるようだが、程々の質量があれば入り込めるようだ。


 シルバーに全く気が付いていなかったパイロットは、機体の警報を見てようやく取りつかれた事に気が付く。


「な、なんだ!? あのアンドロイドがくっ付いて来たのか! 振り落としてやる!」


 機体を急降下させてきりもみ飛行し、何とか落そうとするパイロット。

 しかしシルバーは足の裏と手のひらを使い、まるで昆虫の様に機体側面を歩いて行く。

 落ちる事なくコックピットの上、透明な強化樹脂製キャノピーにまたがった。


「ちょと待て! お前そんな所に来てなにする気だよ!!」


 そろそろ地面に衝突しそうなので急上昇するが、シルバーは落ちない。

 それどころか右手の甲から三十センチほどのレーザーブレードを発生させた。

 左手をキャノピーに当て、力一杯レーザーブレードでキャノピーを斬りつける。


「うわあああ! 助けて、助けてくれー!」


 仲間を助けようと五機が集まってくるが、あまりに小さいシルバーを撃ち落とす事が出来ず、必死に接近して艦載機底面にあるマジックアームで引き離そうとする。

 だが取りつかれたパイロットは恐怖からか操縦が荒くなり、接近自体が困難だ。


「落ち着け! そんな武器ですぐに破壊される事は無い!」


『嫌だ、嫌だー!』


 キャノピーがレーザーブレードで欠けた。

 小さな小さな欠けだが、同じ場所を執拗に攻撃すると小さな亀裂が入る。


「ひっ!」


 そして遂にキャノピーが破壊され、パイロットはむき出しになってしまった。

 レーザーブレードを収め、替わりに大口径レーザーライフルを構える。

 青い線が発射され、艦載機の底を貫通して空の彼方まで飛んでいく。


 小さい何かがコックピットから落ち、シルバーは艦載機から離れた。

 それと同時に艦載機のコックピットから火災が発生し、小さな爆発が起き、連鎖して大爆発を起こす。


『マスター、直接取り付けば何とかなりそうです』


「わかった、何とかやってみる!」


 近くでドローンと戦っている艦載機に目標を定め、ジェットエンジンを回した。


「レナルナ! レナルナー!!」


「クソッたれ! あの野蛮人共なんて事しやがる!」


「隊長! 主砲でこいつらをやってください! 僕らがやるよりその方が早いです!」


『わかった、では合図とともに回避しろ。五・四・三・二・一・全機退避し……このっ! 何度も同じ手を食らうか!』


 中型宇宙船から主砲が発射される直前に、またもや巨大な鳥ジズが行く手をはばむ。

 しかし何度も見ているので驚きはせず、冷静に主砲を発射する。


「! 失敗ですの!?」


 大地へ向けて主砲が発射されるのだが、それをジズがその身で受け止めた。

 だがジズは主砲よりも少し大きい程度、その体は焼けて消え去ってしまった。


「ふん! たかが鳥、奇襲でもされなければ問題は無い。もう一度行くぞ! 全機回避しろ!!」


 今度こそ遮るものがなく、レーザーがブルース達をめがけて飛んでいく。

 いや遮るものがあった、五十機ほどのドローンが腹を向かい合わせにするように円形になり、レーザーの網を作り出す。


 ドローンの円に主砲が入ると網により主砲は拡散し、威力が極端に低くなった攻撃は地面を軽く焦がす程度だった。


「な!? なんだ今のは!! おいお前達! あのおもちゃを何とかしないか!」


 パイロット達に命令するが、パイロットもそれどころではなかった。

 ドローンが十機編成になり、先ほどと同じように腹を向かい合わせると巨大なレーザー砲となり、艦載機の防御フィールドを破壊してしまったのだ。


『た、たい ょ、た けて  こいつらふつうじゃ  た ちょーー!!』


 とぎれとぎれの通信からは悲痛な叫びが聞こえてくる。

 艦載機の反応を見ると一機、また一機と反応が消えていく。

 モニターで確認するとブルースとシルバーが艦載機に取り付いて破壊していた。


 どうやら小型な分、ブルース達の方が圧倒的に機動性が上のようだ。


 パリン!

 何かが弾けた。

 ブルースの頭の中で大量の歯車が回りだし、巨大な鉄の門が開かれていく。

 重厚な門が開くと中から何かが姿を現した。


 L字を寝かしたような巨大な物。

 横幅が長く右側が前に突き出しており、窓らしきものが無数に見える。

 右側の突き出した場所から小さな何かが五つ発射された。


 発射された何かは地上に向けて降下を開始する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る