84.共闘戦

 クロスボーダー教の五人が人混みを抜け出し、ブルース達に加勢に入る。


「あの硬そうな者達の片方を、我らが何とかしよう」


 漆黒鎧のワードナが大声を上げると、巨大なハンマーを振りかぶり近い方の鉄板付きに走っていく。

 ブルースはそれを見て、ハンマーが叩きつけられる直前にガトリングガンの射線を逸らした。


 今までは前からの攻撃に耐えていたが、今度は頭上からの攻撃なので、鉄板付きは防御が間に合わずにギリギリで首を逸らし、肩で受け止めた。

 それでも体制を崩すには十分であり、よろけて地面に手を付いた。


「そこで俺の出番ってもんだぜ!」


 チョイ悪オヤジのシャバズが針の様な短剣を逆手に持ち、鉄板の隙間を縫うように背中に突き刺す。

 鉄板付きは小さく唸り声を上げるが、すぐに腕を振り回してシャバズを追い払う。


 鉄板付きが立ち上がろうとするのだが、そうはさせまいと畳みかける。


「そのまま眠るのじゃ!」


 背の低いヒゲジジーのエンヴェアが、トゲ付きハンマーの籠手ガントレットで殴りまくると、鉄板付きは腕でガードをする。

 それを見た包帯有りは鉄板の応援に向かう。


「背中を向けるなんて、このバカちーん!」


 ローザは槍から弓に交換し、背中を向けたバンデージマンに矢を放つ。


『ブラストアロー!』


 矢が放たれ背中に命中すると、今度は大爆発を起こす。

 背中で爆発が起きたバンデージマンはそのまま地面を転がり、銀髪おかっぱ頭の長身女性、アリアナの足にぶつかった。


「ひゃああ! でもでもでも、ちょうどいいかも?」


 いばらのむちを取り出すと、バンデージマンを蹴り上げて空中で鞭でキャッチし、そのまま空高く舞い上げる。

 パン! という破裂音と共に地面に急降下して地面に激突、地面にめり込んでしまった。


「む? まだ息があるな。それならこれで終わりだ!」


 濃い茶髪を横に流した青年、ブロンソンが盾に収納された剣を抜き片手で上段に構えると、無造作に剣を振り下ろす。

 すると地面は丸くへこみ、バンデージマンは更に地面にめり込んで血を吐き動かなくなった。


 その頃には鉄板付きの一体も、ワードナとエンヴェアによりトゲ付きの籠手とハンマーで殴り殺されていた。


「おおぅ、なんでぇなんでぇ、上手く噛み合ってんじゃねぇかよ」


 シャバズが針の様な短剣に付いた血を布でぬぐいながら、倒されたバンデージマンを見下ろす。

 だがその言葉をローザがとがめる。


「かみ合ってるじゃないわよ! アンタ達はあの時の!!」


 ローザが五人を指さして詰め寄るが、まだもう一体鉄板付きが残っている。

 そちらはまだブルースが弾幕で動きを止めているのだが、いつの間にか接近しており、手にした槍で足の鉄板の隙間を刺して体勢を崩し、膝を付いてガードが空いた所を顔面に銃弾を撃ち込んで終わった。


「まあ待つのじゃ嬢ちゃん、ワシらの助けがあったからアレを倒せたんじゃろう?」


「べっ、別に私とブルー君だけで倒せたわよ!」


「でもでもでも、苦戦してたよ?」


「く、苦戦なんてしてないもん!」


「あの、もし?」


「まぁまぁかてーこと言うなって。敵の敵は味方っていうじゃねぇか」


「敵の敵も敵よ!」


「もしも~し?」


「協力できるならば協力する。一時いっときの繋がりでも良いではないか」


「嫌よ!」


「聞こえませんかしら?」


「ふっ、俺達の力に嫉妬しているんだろう」


「誰が嫉妬してるって!?」


「ちょっとは聞いてくださいまし!!」


 五人とローザが言い争っていたが、エメラルダは必死に声をかけているが誰も聞いてくれない。


「あ、ごめんエメ、どうしたの?」


「んもぅお兄様! 私はまだ戦っている最中ですのよ!?」


「「「あ」」」


 すっかり忘れていたのか、一同は声が揃った。

 タイミングを見てローザがブラストアローを放つと、残ったバンデージマンの背中に命中、よろけてエメラルダ側に転びそうになる所を細身の剣を全力で突き出し、包帯を貫通、さらにグリフォンが背後から頭に噛みつき、腕を残して胸から上を引きちぎった。


 今の一体でローザとエメラルダは体に力がみなぎる感覚を覚えた。


「ほっ。もう、どうしたんですのお二人とも。せっかく協力してくださった方々と喧嘩をするなんて」


「違うのよエメちゃん! こいつ等は私達を――」


「結界の準備が完了したわ! 行くわよ!!」


 ローザの言葉を遮りオレンジーナが結界を張る。

 王都の空に虹色の膜が張られていくが、すぐに乾いたように色が無くなった。


「ふぅ……まさかこんな短時間で結界が張れるとは思わなかった。シアンちゃん凄いわね!」


「えへへ、オレンジーナに褒められると嬉しいんだな、ダナ」


 ★☆天界☆★

「あらあら、ランクが上がった人ばっかりになっちゃったわね」


「本当だね。ずっと現れなかったランクアップ者が、こんなに集まるなんて面白いね」


 女神は床に寝そべって、男神は椅子に姿勢正しく座ってもやに映された映像を見ている。


「女の子三人・・は今の戦いで上がったし、ブルースは……おしい! あといち足りない!!」


「よくあるよね、一足りなくてレベルが上がらない人間って」


「ちなみに第五ランク世界のファランクスってなんなの?」


「第五ランクはね……あれ? 何もしてないのにランクアップしたけど、どうしてだい?」


「え? あ本当だ。ん? 忘れてたけど、街の外で第四ランク世界のファランクスがモンスターを倒してたわ」


「ああ、レーザー兵器搭載航空機型ドローンファランクスが空から倒していたね。でもあのモンスターを何万倒しても一には……十万を超えてたのか」


 ☆★地上★☆

「うわぁ!! ま、また頭が!!」


 パリン!

 何かが弾けた。

 ブルースの頭の中で大量の歯車が回りだし、巨大な鉄の門が開かれていく。

 重厚な門が開くと中から何かが姿を現した。


 長い髪をなびかせて、背の大きな人型がブルースの前に現れた。


「マスター、ご命令を」

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