74.クズスキル
「ここら辺にありそうだな」
五人組が山の中にある岩場で何かを探しているようだ。
かなり険しい岩場だが、五人とも高低差などをものともせず移動している。
上半身だけ鎧を纏った男性が大きな岩を持ち上げて下を見たり、漆黒鎧が巨大なハンマーで岩を打ち付けて破壊して下を見たりと、中々に豪快だ。
「おおっとぉ? あそこにあるのが目的のブツじゃねぇーか?」
ちょい悪オヤジが指差した先には白くほのかに光る物を発見した。
五人が光る物に集まると、どうやら目的の物らしく銀髪おかっぱの女性が拾い上げる。
「うむ、それじゃな。ようやく一個見つけたわい」
「でもでもでも、やっと一個だよ? もっと見つけないと」
「俺達が使うのなら、あと二十個は必要だな」
「うひ、そんなん無理に決まってんじゃねぇ~かっての」
白くほのかに光る物は石のようにも見えるが、かなり真球に近い。
直径四センチ程だが、重さというモノを全く感じない。
★☆天界☆★
「あ、また見つけたみたいだよ」
「ええっ? そんなに沢山見つかる物だったかしら」
男神と女神が
石の様なものの存在は隠していないようだが、かなり速いペースで見つけているようで、少し驚いている。
「でもよく知ったものだね。あの石を使って経験値が入るなんて、普通は考えつかないからね」
「どっかの変人が使ったのかしら」
この光る石、便宜上『経験値の石』と呼ぶが、ダイヤモンドに近いもので、長い年月や地殻変動によって作られる。
なので本来は簡単に見つかる物ではない。
「なんか見つけるスキルでもあったかしら?」
「そんなスキルなんてあったかい?」
「う~ん、思い付かな……あ」
「……あるんだね」
「あ、あははは、そういえばあったわね『
このスキルもゴミスキルの代名詞と呼ばれており、レベルが低いうちは本当にただの石ころを見つける事しか出来ない。
だがレベルが上がるにつれ発見できる石の種類が増えていき、レベル60になった段階で『経験値の石』の大まかな場所がわかるようになる。
「ああ、宝石や鉄鉱石、金まで発見できるアレだね」
「そうそれ。いや~まさかレベル60まで上げる人がいるとわね~」
「確か石をひたすら探しまくって、一年間毎日千個以上の石を見つけてやっとレベル10だったっけ?」
「そそそ、まあレベル90になったら化けるんだけどね」
「何を見つけられるようになるの?」
「大した物じゃないわよ。オリハルコン」
☆★地上★☆
「今日一日でやっと二つか。もっとペースが上がればいいんだがな」
「すまぬ。我の能力ではこれが精いっぱいなのだ」
「でもでもでも、普通は一日二個なんて見つけられないんだよ?」
「そうだぜぇ~? 二つも見つかった事に感謝しねぇとな!」
「そうじゃの。コレがあるお陰でワシらの能力も上がりやすくなるのじゃから」
五人組が岩場でキャンプを張り、夕食を食べている。
どうやら食事は漆黒鎧の男が作ったようだ。
上半身鎧の男は少し訂正をした。
「いい方が悪かった。お前がいないと見つけられないが、他の俺達が探すペースを上げれば効率が上がると思ったんだ」
「それはいえとるのぅ。大体の場所が分かっておるのじゃから、速度を上げれば見つかる数も増えるはずじゃ」
「でもでもでも、これ以上のペースって言われても体がもたないよ?」
「そりゃ~問題だな。俺ゃー疲れるのはごめんだぜぃ?」
「なるほど。では我もハンマーの振る回数を増やすとしよう」
「「「「お前は頑張りすぎるな」」」」
全身包帯モンスターの名称が決定した。
『バンデージマン』だそうだ。
「包帯を巻いてる男だからバンデージマン? ダッサい上に安直すぎない??」
「分かりやすさを優先しました。デモンスレイヤーや国は今後、アレをバンデージマンと呼称します」
デモンスレイヤー本部でその話を聞き、ローザは思わず素直な感想をいった。
「名前は何でも構いませんけど、僕達は出せる情報を全部出しましたからね?」
あれから随分と色々な話を聞かれたらしく、ブルースにしては珍しく迷惑そうな顔をしている。
協力はしたいが、必要以上に聞かれて困っていたのだろう。
「申し訳ありません。まだまだ情報は足りませんが、ひとまずこれで終わりだと思います」
そう言ってローザが持っている討伐依頼書の受付をする。
家を買ったので少々懐が寂しいようだ。
「それではお気をつけていってきてください」
今回の依頼は湖に大量のフライフィッシュが現れたので、それの討伐依頼だ。
トビウオの様に水面を飛ぶだけならいいが、勢いよく飛んで陸地にいる人に襲い掛かるのが問題だ。
「着いたー! ってか大きな湖だね!」
以前レイクモンスターの亀を倒したが、そこと同じくらいに大きい。
早速シアンが調合した魚をおびき寄せるエサを
すぐに湖面がざわめきだすと、水面に沢山のフライフィッシュが現れて突っ込んでくる。
全長約六十センチ、巨大な胸ビレを羽ばたかせて空を飛び、大きな口には魚とは思えないキバがあり、一分ほど活動すると湖に戻っていく。
「よし、じゃあ試してみるね」
「私は適当に斬りつけるね!」
ブルースは
なにぶん最初に使ったきり、全然性能を確認できていないのだ。
潰れた台形の四角垂で、真っ黒なボディーで頂点までの長さは一メートル。
腹に一つ、底辺に二つの可動式プロペラを持っている。
今回はあまり高くは上がらず高度は十メートル程、ホバリングしてフライフィッシュを確認すると、両脇の
相手が小さい(魚としては大きめだが)ため、出力はかなり絞っているようだ。
とてつもないペースでフィライフィッシュを射落としていき、あっという間に水面にはフライフィッシュの死体だらけになる。
「ねぇブルー君?」
「なに、ローザ」
「私の出番は?」
「……一瞬で終わっちゃったね」
フライフィッシュの数は約五百。
それが一秒足らずで全て撃ち落としてしまったのだ。
つまり秒間五百発は撃った事になる。
「これ、かなり凄いかもしれないね」
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