24.補給物資とボーダーレスの力
「総員戦闘態勢!! 一刻も早く敵の戦力を
レジナルドの号令により、一気に場はせわしなくなった。
しかし慌てているのはブルース達一行だけで、元からいた兵たちは素早く行動に移している。
「あ、兄上? 戦うのでしたら私も残った方が良いのでは?」
「何度も言わせるな、お前が残ったところで何もできん。この二人が残っていればそれでいい。お前達は早く物資を運んで来い! 行け!!」
尻を叩かれるように追い出され、ブルースとジャレイは
「ブルーお兄様! お気をつけて行って下さいまし!」
「ブルー君! 急いで帰って来てね!」
運転席から手を振り、急いで出発していった。
ちなみにメイド達も乗り込んでいる。
「それでジャレイ
「ここから馬で一日の場所に街があるから、そこから運ぶんだ」
場所を知らないので、ジャレイが道案内をして進んでいく。
幸い道中は何事も無く、平穏無事に街へとたどり着いた。
「え? 補給物資ですか? はて、約束した分は全て送ったはずですが……」
町長に話をしに行くと、言われた分の物資はすでに送り届けてあるため、追加が必要な場合は追加料金が必要となり、日数もそれなりかかるというのだ。
言われてみれば当たり前のことで、戦争というイベントの前に全ての国民が協力すると考えてしまった。
だがそうなると困ってしまう。
主戦場の味方の数は約一万五千、それだけの人数を
「食料を揃えるのにどれだけかかりますか?」
「そうですね、この街だけでは五千人分の物資が精いっぱいなので、近隣の街から運んでこないといけません。なので……早くても五日後になります」
「五日か。兄上の話では十日ほどは持つといっていたが、直ぐに戦いの準備をしていた事を考えると、医療品が不足するかもしれない。第一便として食料は少なくてもいいが、医療品は多めに運んでおきたい」
「医療品でしたらこの街の備蓄は多いので、明日には揃えられます。その分食料が少なくても良いのなら、同じく明日には用意できますが」
「そうか! それなら用意を頼む。請求は兄のレジナルド第二王子当てにしてくれ」
「かしこまりました。え? 兄??」
「自己紹介が遅れた。私はジャレイ、第三王子だ」
☆★主戦場★☆
「なぜか戦闘に参加する事になってしまったわね……どうかしたの? ローザさん」
「ん~、なんか体がおかしい」
「どこか怪我でもなさったの?」
「そうじゃないんだけど……う~ん」
戦闘準備が着々と進む中、レジナルドの直属として動く事になっているエメラルダとローザ。
直属とは言ってもレジナルドは最前線で戦うらしく、軍の最前列にいた。
「私は絶好調ですわ。勇者を倒し、身も心も
「私も調子が悪いわけじゃないの。だけどなんて言うかな、感覚がいつもと違うの」
「感覚?」
「うん。例えばね、前に見える敵の数を見ても、なんだか全然怖くないの。それどころか楽勝に感じちゃって」
眼前には森の前に陣取る敵兵がいる。
その数は一万をゆうに超えており、もちろん名の知れた武将もチラホラみえる。
「確かに勇者に比べればなんてことありませんわね」
「勇者、勇者か~。アレには今でも勝てる気がしないけど、目の前の敵は大丈夫に感じるんだよね」
ローザの妙な感覚は、戦う事でその正体がハッキリする。
二人の話が終わった頃、レジナルドが馬に乗って現れた。
「敵の消極的な戦いは増援の合流を待っている事が判明した! しかしその応援は我が弟ジャレイが倒し、来ることは無い! よってこれより総攻撃を開始する!!」
腰から剣を抜き高く掲げる。
王族らしく装飾のされた剣は非常に目立ち、全ての兵士がその剣に注目する。
「かかれー!!」
剣を前に突き出すと同時に号令を発し馬を走らせる。
第二王子に遅れまいとその後を全力で追いかける兵士達。
四千の騎馬隊と七千の歩兵、三千の魔法・弓兵が地響きをたてて走っていく。
その中でもひときわ早いのが
しかし騎馬隊にしっかりついて行く歩兵が一人いた。
ローザだ。
ローザは革鎧しか纏っていないが大剣を手にしており、しかも小柄にもかかわらず走るのが早い。
誰もが驚く中、本人が一番驚いていた。
「何コレ何コレ! すっごい速い! 私、馬と一緒に走ってるよ!」
勇者を倒し、一気にランクが上がりボーダーレスとなったローザ。
そして使える技もいくつか増えている。
先頭集団が敵と接触した。
騎馬隊の突進力は凄まじく、先陣を切って走るエメラルダは敵を二分する勢いで突っ走っている。
「凄いわ私! 敵兵の間に道が見える! どこを通れば止まらずに駆け抜けられるか、どうしたら沢山倒せるのか、手に取るようにわかるわ!」
エメラルダもレベルが91になり、昨日まで人類最高レベルだった89を超えていた。
エメラルダの後ろからはレジナルド達が敵軍の傷口をさらに広げているが、その中でひと際目立つのがローザだ。
ローザは騎馬隊ですら減速したにもかかわらず、速度を緩めることなく敵を押し倒していく。
剣で薙ぎ払い、小柄な体型を生かして敵の頭上を舞い、蹴れば頭が吹き飛び、殴れば鎧を貫通する。
数名同時に剣で斬りかかるが、それを大剣で軽々と受け止めると大声を上げた。
「レイジングスイング!」
大剣を横薙ぎしたかと思うと、ローザの周囲に衝撃波が走り半径十メートルの敵兵が空を舞う。
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