ね?綺麗になれたでしょ?
仲仁へび(旧:離久)
第1話
それは、遮断機の前で電車の通過待ちをしていた時の事だ。
綺麗ですか?
これは、綺麗ですか。
そうですか、綺麗なんですね。
目の前を、女の人が通り過ぎていった。
意味不明な質問をして、だ。
答えは聞かなかった。
質問をしただけで満足してしまったようだ。
こちらの事なんて、もう見えていない様子で、どこかへと向かっていく。
一体、何だったんだ。
後日学校で、その話をするとクラスメイトにおののかれた。
「へたな事言わなくてよかったな。それは怪異だよ」
怪異?
「自分が美しいか聞いてるんだ」
褒めたらどうなるの?
「つきまとわれる」
じゃあ、貶したら?
「殺される」
どちらもダメなようだ。
無視するのが正解だなんて、変なの。
「美しくなることに命をかけていた女は、そうなる前に命を落とし、怪異となった。だから、認めたくないんだよ。望みが叶わなかった事を」
未練があったって事ね。
ふぅん。
「美しくないっていえば、クラスのあいつ、そうだよな」
確かに。
豚ちゃんみたいだもんな。
動物園にでもいっとけよ。
檻の中で。ブーブー鳴いてた方が面白いのにな。
あっ、目が合った。
こっち見んなよ! ブス!
次の日。
歩いていたらまたあの女の怪異と出くわした。
線路の前で、待ち構えていたみたいだ。
うわ。またかよ。
綺麗?
このかお、綺麗?
って、問いかけてくる。
無視無視。
今、急いでるんだから。
あれ、いなくならない。
「無視しないで、もっとこっちに来てよく見てよ。綺麗になるために、頑張ったんだから」
そいつは俺の腕を掴んでグイっとひっぱった。
けれど俺が抵抗したから、バランスを崩して遮断機の向こうへ倒れ込む。
遮断機?
いつの間に降りてたんだ?
俺は警報が鳴り響く中、いそいで女をふりほどこうとして、いつも見慣れた女の傷だらけの顔を見た。
「ほら? 頑張って形を整えたから、綺麗になったでしょ?」
ね?綺麗になれたでしょ? 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます