妹が多すぎるんだが!?

夕日ゆうや

第1話 三人の妹!?

 僕は裸部利らぶり高校二年の秋野あきの秋一しゅういち

 好きな食べ物は苦味の強い食品。例えばゴーヤチャンプルやピーマンの肉詰めだ。

 そんな僕には二人の妹がいる。血のつながった冬乃ふゆのと母の連れ子である波瑠はる。二人とも可愛らしいのだが、なぜか僕に好意を寄せているらしい。

 それはマズいと妹みたいな幼なじみの夏美なつみに話した。それから夏美は僕にべったりするようになった。

 まるで冬乃や波瑠に嫉妬しているみたいに。

 まさかな。

 あの夏美がそんなことを思うはずがない。

 昔から夏美は快活でさっぱりした性格だ。だから嫉妬するなんてありえない。

 冬乃みたいにべったりするわけでもない。若干、ヤンデレ気質のある冬乃だ。嫉妬するなら彼女だろう。

 そんな二人に挟まれて、でも自分の意思を変えなくマイペースなのが波瑠だ。のんびりおっとりした性格で、二人にはないオーラをまとっている。

 三人とも顔面偏差値が高く、可愛らしい。

「お兄ちゃん、早く起きないと遅刻するわよ」

 冬乃がドア越しに声をかける。

 朝起こしてくれるのは冬乃の役目だ。

 すでに起きていた僕は返事を返し、すぐさま着替える。

 一階に降りると、そこにはすでに波瑠の用意した朝食が並んでいる。

 義母と父はすでに仕事に行っている。二人は忙しくしている方が性に合っていると、僕たちを置き去りにしたのだ。

 父さんめ。と恨み言の一つも言いたくなる。

 が、家事のほとんどを冬乃と波瑠がしてくれている。

 だからほとんど手間はかからないが、それでも子どもとして思うところがある。

「兄様、早く食べてほしいの~」

 のんびりとした口調で呟く波瑠。

 食べながら色々と考えていると時間があっという間に過ぎてしまう。

 今日は高校で始業式がある。

 実質、明日から学校が始まる。

 久しぶりに学校が再開することにうれしみを感じる。

 食事を終え、歯磨きをする。

「おにぃ。迎えに来たよ」

 伸びやかな声で玄関を開けるのは幼なじみの夏美。

「泥棒猫さんじゃないですか」

 冬乃がいきなりの毒舌を吐く。彼女の中では僕が一番らしい。それ以外が眼中にないのが欠点である。

 というか、僕としては冬乃と夏美には仲良くして欲しいのだが。

 昔は仲良かったのにな。いつの間にか敵対する関係になってしまったらしい。

 そんな二人とは別に秋野家にやってきた波瑠は会話に交ざらない。めったにしゃべらないが、表情はコロコロと変わって愛らしい。

 そうだ。僕は冬乃と波瑠をとして守らなければならないのだ。

 それが父との約束だ。

 学校に着くと、友達と会話をして過ごす。

 久々に会った友達は急変することもなく、今まで通りだった。

「波瑠ちゃんに告白しよかっな?」

「なにそれ。死にたいの?」

 僕が笑顔で返すと、鈴木すずきは驚きの顔でこちらを見る。

「いや、ごめん。冗談だ」

「生きたいんだね♪」

「どんなテンションで言っているんだよ……」

 鈴木は呆れたような顔をする。

「お前ってかなりのシスコンだよな」

「まさか。そんなはずないだろ?」

 僕は笑みを浮かべ、鈴木をどつく。

「いや行動と言葉が一致していないのだけど!?」

 ちなみに鈴木は筋肉質で筋骨隆々なので、このくらいダメージにならない。と思う。

「おにぃ。何話していたのかな?」

 夏美はいつも僕のことを「おにぃ」と呼ぶ。昔から妹と同じように接していたせいか、これだけは譲れないらしい。

 僕としては恥ずかしいし、同学年なのにそう呼ぶのはおかしいと思っているのだけども。

「こいつがシスコンって話。信じるかい? 夏美ちゃん」

 鈴木は悪びれる様子もなく訊ねる。

 信じているぞ、夏美。

「あー。それはわたしでも信じるよ」

 どうやら僕の願いは霧散してしまったらしい。

「どこがシスコンなんだよ……」

 やれやれ困ったぜ。と言わんばかりに頭を振る僕。

 二人が呆れたようにため息を吐く。

 まるで僕のことを分かっていない。

 僕が愛するのは二次元少女だけだというのに。最近はさくらちゃんにドハマりしているのだ。

「それよりも今季のアニメ、どれが好きなんだよ」

「あ。わたしも気になる」

 夏美もかなりのアニオタだ。話が合うのが嬉しい。

 そんな友達は鈴木と夏美くらいだ。

 僕は二人にオススメのアニメを紹介していると、チャイムが鳴る。

 もう少し話していたかったが、先生が来るといよいよ我慢しなくてはいけなくなった。

 みんな散り散りになり、自分の席に座る。

「これより始業式を始めるぞ。みんな久々に感動のご対面だろうけど、我慢しろ」

 増田ますだ先生がどこかのヤンキーみたいな格好で入ってきた。

 でもこれは彼女の通常運転だ。

 そんなんだから彼氏の一つもできない。と言うと、すぐにチョークが飛んでくるので注意が必要だ。

 みんな心の中で思っているだけで口にはできないのだ。

 しかし、久々に鈴木と夏美に会えて僕は満足だ。

 始業式も無事に終わり、校門まで行くと、波瑠と冬乃が待っていた。隣を歩く夏美が頬を膨らませて抗議する。

「やっぱりシスコンじゃん! おにぃのバーカ、バーカ!」

「違うだろ。家族と一緒に帰るのはシスコンではない!」

 僕は断じて間違いでないと反論する。

 しかし、僕の海外行きに誰を連れていこうか?

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