01 「ネグレクトでしょ」

 子どもが下したり戻したりで一晩中大変だった翌日、約束していた遠方の親戚が来た。


 病気がうつっても悪いけど、なにしろ県をまたいで来てもらったのだから家に上がってもらわないと申し訳ないか、と思って家に入ってもらったら、部屋に布団が引きっぱなしだったのを見て言われた。


「客がくるってわかってるんだから布団くらいあげたら? 片付けないのはネグレクトでしょ」


 子どもが寝付くまで三時間絵本を読んでいても、夏の早朝4時に起きた子どもが仕事で疲れているパートナーの睡眠の邪魔にならないように公園に連れ出しても、自分のやりたいことをなにひとつできずに、いつでも子どもに食べさせるのと寝かしつけるのが優先で、冷えた残りものを食べられればいい方で、歯磨きもろくにできず、湯船にもつかれず数年間ずっと10分シャワーで家事をして子どもを見ていてもネグレクトと言われるなら、これ以上自分はなにもできない、と思った。

 

 私がやってきている子育てや家事を全否定されたように感じて、今までできていた家事や子育てを、どういう風にすればいいのかわからなくなった。

 なにをやっても「これは間違っているかもしれない」「これはネグレクトなのかもしれない」と考えるようになった。


 あんなに可愛かった子どものことも、子どもと一緒に行事を楽しんだり緊張したりしなくなり、子どもの制作物にも発表会も、まったく響かなくなった。


 こんなにいい天気なのに、洗濯物が干せない。

 

 今の私は立派なネグレクトになれてるんじゃない?

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