第91話 俺達はそんな事で父さんを嫌いになったりはしない。
流石は季節が夏なだけはある。
起きたら汗でシャツがぐっしょりと濡れていてとても気持ちが悪い。
とりあえずリビングに向かって水を飲もう。
リビングに行くと母さんが朝ごはんを作ってくれていた。
「おはよう、母さん」と声をかけると母さんが「おお、おはようツネノリ、いいタイミングだ。さすがは私の子だ」といつも通りの挨拶をする。
俺はとりあえず起き抜けに水を一杯飲む。
水を飲み終わると「さて、そろそろご飯が出来る。父さんを起こしてきてくれ」と言われたので「わかった」と言って俺は父さんと母さんの寝室に足を入れる。
布団がもぞもぞと動く。
俺の足音を聞いて父さんは布団にくるまったのだろう。
「父さん、起きてるなら起こしに来る前に起きてよ」と言うと布団の端から見えた金髪がもぞもぞと布団の中に逃げていく。
俺は一気に布団を剥いで「布団の中に籠って暑くないの?」と聞くと父さんが汗だくで「暑い…」と言った。
「なら起きなよ」
「お前かルルが起こしに来てくれるのがいいんじゃないか」
…まったく。いくつになっても父さんは子供だ。
そう言う父さんを連れてリビングに行く。
父さんは母さんを見て「おはよう…ルル…」と言うと母さんはニコりと笑って「おう、おはようツネジロウ」と返事をした。
顔を洗った俺と父さんが着席すると、パンとベーコンエッグが出てきた。
3人で「いただきます」と言って俺達の朝食が始まる。
「ルル?今日の予定は?」
「出来たら昨日作った人工アーティファクトの検証をしたいのだが、ツネジロウの都合は?」
「俺なら大丈夫だ。検証が終わったら水汲みとかはしておかないとな」
「ではツネノリはどうだ?私だけではなくツネノリが使った時の感覚も見たい」
俺は「いいよ、また父さん相手に打ち込めばいいんだよね?」と聞くと父さんが「…お前達、もう少し俺を大事にしてくれ」と言いながら「おいおい」と呆れ顔で笑うと母さんは「これ以上ないほどに大事にしている」と言って笑う。
これが見慣れた我が家の光景。
母さんはイーストと言う国の城で働く?アーティファクト使いだ。城に行ったところはほとんど見たことがない。
アーティファクトと言うのは神様から人間に贈られた遺物の事で、人間が火を発生させたり、風を吹かせたり、氷を生み出したりできるようになったり色々と凄いことが出来るようになる。
本来それらは全て神様から授かるのだが、母さんは自分でそのアーティファクトを作ってしまっている。
父さんは「勇者の腕輪」と言うアーティファクトに選ばれた勇者で、その他のアーティファクトは制約で基本的に使えないらしいが、勇者の腕輪で剣と盾を用意できて戦うことが出来る。
まあ、戦うと言っても狼や熊とか一部のモンスターが相手でこの世界に危険な事は無い。
俺が「で、母さん。今日は何を作ったの?」と疑問を口にすると母さんは「ふふふ、よく聞いてくれた。これだ!」と言うとテーブルの上に腕輪を置いた。
実験台になる父さん「能力は?」と真剣な顔で母さんに聞く。
「アーティファクト砲だ」
「マジかよ」
父さんがげんなりして母さんが胸を張る。
「母さん、何そのアーティファクト砲って?」
「おお、ツネノリは知らなかったのぉ、マリオンは覚えておるか?」
「うん」
マリオンさんは父さんと母さんの古い友達で、物凄く綺麗な人で子供が沢山いる。
「そのマリオンの鎧姿は見たことがあったかな?その鎧にはな、アーティファクト砲と言って、雷の球を風のアーティファクトを使って噴出して相手に当てる武器が付いている」
「それを母さんは作ったんだ」
「ああ、そうだ。だが今回凄いのは、筒を使っていない点と複数のアーティファクトを一つの腕輪に集中させたことだ」
父さんがげんなりした顔で「…ああ、それで後は威力がみたいのね。それで俺に試そうと言うわ…」と話している最中、父さんが突然、びくっと揺れて髪の色と目の色が徐々に黒くなる。
俺が「父さん!!」と声をかけると父さんは「おはようツネノリ」と微笑みかけてくれる。
そして笑顔のまま母さんを見て「おはようルル」と言うと母さんは「ああ、お帰りツネツギ」と言った。
母さんも金髪の時の父さんよりも黒髪の父さんの方が嬉しそうで空気が違う。
父さんは今帰ってきたばかりなのにもう状況が飲み込めていて「え、アーティファクト砲を作って俺で試すの?マジで?」と言っている。
これは神様が父さんと母さんに授けてくれたもの。
父さんは異世界の人間で、昔このガーデンに召喚をされて母さんや仲間達と世界を救ったと言う。
そして元の世界に帰る時に母さんと離れ離れにならないで済むように神様が金髪の父さんを授けてくれて、父さんの居ない時は父さんと同じように振舞ってくれるし、記憶も何もかも父さんに受け継がれる。そして父さんの記憶も金髪の父さんに受け継がれるので俺や母さんは寂しさを感じない。
まあ、母さんはそれでも金髪の父さんよりは黒髪の父さんが好きみたいで、父さんが帰ってくると顔から空気から全部がパアァっと明るくなる。
父さんは週に5日はこっちに居る。時たま週に6日になる時もあれば泊っていく事もあるが、基本的には朝食の頃に来て、夕食を食べるか食べる前に帰ってしまう。
なので日中は極力父さんと一緒の時間を過ごすようにしている。
父さんが笑いながら母さんに「なあ、俺も今年44だぜ?いい加減俺を実験台にするのはどうなの?」と言うが、母さんは嬉しそうに「ならツネノリに頼んで身体を鍛えて貰えばいい」と言って笑う。
「それって問題解決にならなくね?」
「ははは、そうかもな」
「なあ、勇者の腕輪のレプリカを作ってツネノリに持たせれば解決じゃないか?」
「馬鹿者が、万一の事があって私たちのツネノリが怪我をしたらどうする?」
父さんと母さんの掛け合いは終わらない。
「おま…、俺に万一があって怪我をしたらどうすんだよ」
「その時はルノレになって回復をしてやる。安心しろ」
父さんが両手を頭に置いて「んぎぎぎぎぎ、ああ言えばこう言う!」と言うと母さんが「あははは、だから諦めろツネツギ」と言うと、その一言で皆が笑う。
「水汲みは俺が行ってくるから父さんと母さんはゆっくりしていてよ」
俺は食事を先に済ませてそう言って立ち上がる。
父さんと母さんが2人きりで過ごせる時間は多くても一日に8時間ちょっとしかない。
元の世界で父さんの眠る時間も考えると十分に多いのかもしれない。
だが、やはり父さんが向こうに行ってしまって金髪の父さんになった時の母さんの寂しげな顔は毎日見ていて辛いし悲しい。
父さんは、その事について神様に相談をしたことがあったと俺に以前話してくれた。
その事と言っても父さんと母さんの事ではなく、金髪の父さん「ツネジロウ」の事だった。
俺自身、自覚は無いのだが、俺も父さんに戻った瞬間に嬉しそうな顔をしていたり、母さんみたいに金髪になった時に寂しそうな顔をしてしまっていると言う。
ツネジロウはそう言う空気を感じないように、入れ替わり時のみ寂しげな表情や声を察知しないようにして貰ったと言っていた。
母さんには個別で父さんが申し訳ないと謝ったと言っていた。
だが、父さんにも向こうでの生活があるのだ。謝る必要は無い。
俺達はそんな事で父さんを嫌いになったりはしない。
そんな子供ではない。
向こうにも家族が居ると聞いた。
母さんはその事を真剣に考えたと言っていた。
多少ショックはあったが、父さんはあちらの世界の人間だから受け入れるしかない。
そしてそれ以上に、この世界に来てくれて色々と世界の為に尽力をしてくれている。
更に持てる全てで俺達を愛してくれている。
去年辺りから父さんにどこか元気がないのが気になっている。
母さんは何かを知っているらしい。
だが父さんは俺には何も言わない。
早く父さんに頼られる男になりたい。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
母さんが「よし!では行くぞ!!」と言って腕輪を装着すると父さんも「おう!いいぞー」と言って「勇者の腕輪」から光の盾を出す。
母さんが腕輪を装着した方の腕を突き出して「まずは私だ!【アーティファクト】!」と唱えた瞬間突き出した腕の前に光る球…話の通りなら雷の球が発生した。
「よし、ここまではうまく行っている!行け!!」と言った母さんの声に合わせて勢いよく雷の球が父さんの方に向けて一直線に飛んでいき父さんに直撃をする。
「うおっ!?」と言って受け止めた父さんだったが光の盾は無事にそれを防ぐと母さんがニコニコしながら「どうだツネツギ!中々のモノだろう?」と聞く。
母さんはアーティファクトの出来よりも父さんとの時間を大切にしている。
だから未だに研究を続けるし、難度の高いアーティファクトを作っては父さんと検証をしているのだと俺は思っている。
父さんが「ああ、中々の威力だ。まあマリオンのアーティファクト砲を受け止めたことが無いから比較はできないがこれも相当だと思うぞ!」と離れた所から声を出すと母さんはとにかく嬉しそうに「ふっふっふ、そうか!?そうであろう!!」と言う。
母さんは「よし!次はノレルになる!」と言って胸に着いた宝石型のアーティファクトを捻る。そうすると母さんの髪の色が紫色から青色に変化をしてノレル母さんになった。
母さんは母さんの中に4人居る。
元はルル…母さんだが、実験で2人、青い髪のノレルと赤い髪のルノレに別れてから再度合体して母さん、ノレル母さん、ルノレ母さんに別れ、そしてもう一人ノレノレ母さんになった。
ノレル母さんは俺を見て「ツネノリ久しぶり。元気かな?」と言って父さんを放って俺に話しかけてくれる。
俺は久しぶりのノレル母さんに「うん、ノレル母さんも久しぶり!」と言うと困り顔のノレル母さんは「出来ればもっとツネノリとの時間も欲しいのだが、ルルが中々時間をくれないのだ。今度ゆっくりと話でもしよう」と言う。
俺が「うん、わかったよノレル母さん!!」と返事をするとノレル母さんは微笑んでくれた。
ノレル母さんは自分の胸を見る感じで胸に向かって「ルル、わかってる。検証だろう?ヤキモチを焼かないでくれ」と言ってから父さんを見て「ツネツギ!行くぞ!」と声をかけると離れた場所の父さんは「あいよー、ノレルも大変だな」と言ってから思い出したように「ああ、久しぶり」と呼びかけた。
ノレル母さんも父さんが好きだから笑顔で「ああ、久しぶりだな」と言いながら腕を突き出して「久しぶりが検証なのが申し訳ないけど行くぞ。【アーティファクト】!」と唱えた。
ノレル母さんのアーティファクト砲は母さんの時よりも雷の球は大きいが、その分速度が遅くなっている。父さんは今回も「うおっ!?」と受け止めるが別に大変そうには見えない。
ノレル母さんは自分の腕を見て「ふむ、やはりそうなるか。次はルノレだな」と言って「ツネノリ!また会おう」と手を振ってくれた。
俺が「うん!」と返事をしたのを見てノレル母さんは胸の宝石をさらに捻るとノレル母さんの青い髪は赤くなる。
ルノレ母さんになると「ツネノリィー!!」と言いながら俺に抱き着いてくる。
俺は抱き着かれながら「ルノレ母さん、久しぶり」と声をかけると抱き着いたままのルノレ母さんが「うん、久しぶり。もう酷いよね。ちっとも私達にしてくれないんだよ私は」と言って母さんへの不満を言う。
確かに母さんは父さんと居る時には殆ど交代をしない。それ以外でも余程「わかった、代わる」と言って半日とか交代する事はあるがそれでも月に一度くらいだ。
俺が困り顔で「そうだね」と言うと、ルノレ母さんは甘えるように「今度ツネノリからも私に行っておいてよね」と言いながら俺に頬ずりをしてくる。
俺は嬉しい反面恥ずかしくて「ルノレ母さん、俺もう17だよ?」と言うと「いいのー」と言って力を込めたルノレ母さんが「あ、忘れてた。ツネツギ久しぶりー」と言って俺に抱き着いたまま父さんに手を振る。
父さんは呆れた感じで「ルノレも久しぶり。ルノレもアーティファクト砲を試すのか?」と聞くと「うん、やってみろって言ってるよ」と言って俺から離れた。
父さんが盾を構えて「よし、じゃあ撃ってくれ」と言うと、母さん達のように慎重に狙う素振りでもなくさっと構えて「行くよー。【アーティファクト】!!」と言ってアーティファクト砲を放った。
ルノレ母さんのは雷の球は3人の中で一番小さかったが一番速かった。
余りの速度に父さんも「うおぉっ!?」と驚いている。
これは母さん毎に得手不得手がハッキリしているのが原因だと思う。
母さんは雷も風も両方普通に使える。
ノレル母さんは雷が得意で風が苦手。
ルノレ母さんは雷が苦手で風が得意。
大体こんな感じだと昔母さんが言っていた。
だが、父さんに言わせると結婚して約20年になる訳だが、その間に母さん達は少しずつ成長をしたらしく、ノレル母さんは駄目だった風の力を少し使えるようになって、ルノレ母さんは雷の力を使えるようになったと言っていた。
父さんが「大体こんなもんか」と言ってやれやれといった顔をするとルノレ母さんが「ノレノレちゃんもやるって」と言う。
父さんが心配そうに「え?ノレノレって使えるのかな?」と聞くとルノレ母さんは明るく「それは建前で本音はツネノリに会いたいんだよー」と言いながら宝石の頂点を下に向ける。
今度は灰色がかった紫色と言うかほぼ灰色の髪色をしたノレノレ母さんが出てきた。
ノレノレ母さんは俺を見て「にひひ」と笑うと「ツネノリー、母ちゃんお前に会いたかったよー」と言いながら俺に抱き着いてくる。
「母さん、久しぶり」
「本当、ルルちゃんが酷いよね。いつもツネノリとツネツギを独り占めするんだからさー」
そう言った母さんは俺から手を離して今度は父さんに抱き着いて「ツネツギー。久しぶり!」と言う。父さんはノレノレ母さんの頭を撫でながら「ああ、ノレノレも元気そうだな」と声をかけた。
「うん、でも最近は出番が無いからあんまり外に出して貰えなくて退屈だよー」
「ルルにも困ったものだな」
ノレノレ母さんは父さんの胸に顔を埋めて「本当、ツネノリにもツネツギにもみんな会いたいんだよね」と言って深呼吸をする。
「さ、さっさと検証をしてしまおうぜ?」
「ん、だめ。後30秒はこのままでいさせて」
ノレノレ母さんはそう言って父さんに抱き着いて離れない。
子供の前なんだけどなぁ…と普通の親子なら思うのかもしれないが俺は父さんと居られる時間が限られている以上母さんのこういう行為を否定も邪魔もしない。
2分くらいが過ぎたころ「ツネツギ、もう30秒経ってるよー?」とノレノレ母さんが言い出して、父さんが「ノレノレが言うまで少し待とうと思ってたんだ」とノレノレ母さんを気遣っていた。
ノレノレ母さんは嬉しそうに顔を赤くして「にひひ、ありがとう。ルルちゃんがヤキモチ妬くからそろそろ検証をしちゃおう!」と言って父さんと距離を取ると腕を構えて「きっと駄目だろうけど…【アーティファクト】!」と唱えた。
少し待ってみたが、何も起きない。
ノレノレ母さんはアーティファクトの使用が偏っていて、誰でも扱えるようなものは使えないと言っていた。逆に使用者が限定されたり、常人には使用できそうにないアーティファクトなら使えるらしい。
ノレノレ母さんは「あー、やっぱダメかー、残念。そろそろルルちゃんが煩いから変わるねー。2人ともまたねー」と言ってノレノレ母さんは母さんに戻った。
俺と同じ紫色の髪色になった母さんは「まったく、どいつもツネノリにベタベタしおって…」とぶつくさと言っているがその顔は決して機嫌が悪い顔ではない。
それは検証の成功と父さんが居るからだと思う。
母さんは腕輪を外すと「よし、ツネノリ…、腕輪を試してみてくれ」と言って俺に腕輪を渡してくれる。俺は「うん」と言ってアーティファクト砲の腕輪を装着すると「父さーん、準備は良いー?」と聞いた。
離れた場所の父さんは「俺は構わないが、ツネノリ…お前…真っ直ぐに撃てるのか?」と聞いてくる。
お?
おっと…確かにそうだ。
俺は撃ち方を聞きたくて「母さん」と声をかけたのだが、母さんはニヤリと笑って「構わん、やってみろ。ツネツギ、走ってでも受け止めろよな」
「おいっ!俺に厳しいだろ!!」
「あははは、わかったわかった。私も二つほど手を貸しておく。【アーティファクト】」
そう言って母さんは父さんに速度上昇のアーティファクトを使った。
「これで大暴投でも追いつけるだろ?」
「…うぅ…そういう事じゃないだろ…」
父さんはブツブツと言っているが父さんも母さんに振り回されるのはまんざらではないから決して怒り顔ではなくニコニコとしている。
その後も母さんが「もう一つは…、ツネノリ…よく聞け。アーティファクト砲は腕の延長線上に発射される。だから必ず腕を曲げずに真っ直ぐに父さんのど真ん中を狙え!」と言うと父さんが「狙え!?」と叫ぶ。
俺は「ありがとう母さん。父さん!俺やってみるよ!!行くよ!!」と言って腕輪を付けた左腕を父さんに向けて「【アーティファクト!!】」と唱えると俺の腕の前に雷の球が発生された。
母さんが後ろで「よし!いいぞツネノリ!撃て!!」と指示をくれて指示通り父さんを狙って撃つ。
俺の意思に反応して雷の球は母さんと同じくらいの速度で父さんめがけて飛んで…あれ?
思った方向に飛んでいかない雷の球。
父さんが「お前…ツネノリ!狙いが甘い!!」と叫びながら雷の球を追いかけていく。
ちょっとそれてしまったが速度が速くなっている父さんは何とか雷の球を追いかけている。
母さんは「ちくしょう!俺は44だぞ!何で全力疾走してんだよぉぉぉ!!」と言って走っていく父さんを愛おしそうに眺める。
その顔つきが普段と違う気がしてしまい「母さん?」と声をかけると母さんは「ん、付き合わせて済まないなツネノリ」と言った。
「いいけど、大丈夫?」
「ああ、私はこうする事でしかツネツギの心を癒してやれん」
俺は突然の事に「え?」と聞き返すと母さんは悲しそうな顔で「ツネツギ…父さんな、向こうの世界で家族とうまく行っていないらしい」と言った。
その言葉が俺には衝撃的だった。
父さんはこんなに素晴らしい人なのになんでうまく行ってないのだ?
俺はたまらずに「何で!!?」と言って母さんの肩を掴むと母さんは泣きそうな顔で「いや、ツネツギ…父さんは詳しくは言わない。多分ここと向こうの二重生活が思いの外大変なのだろう。お前は父さんに何も聞かないが向こうではそうも行かないのかもしれないな」と言った。
俺は何か言わなきゃと思って「母さん…」と言ったとき、母さんは「おっと、ツネツギが戻ってくる。私たちは笑顔で居るんだ。それがツネツギ…父さんとの絆になるのだからな」と言って俺を制止した。
母さんはもう笑顔になっていた。
俺は今日、母さんの強さを見た気がした。
父さんは「何とか被害は出さなかったぞー!」と言いながら笑顔で戻ってきた。
父さん、母さん、辛いのに笑顔で居なければいけないなんて親って大変だね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます