第2話:神願

『アリアを護りつつ、アリアの望みを叶えなさい』


 僕の頭の中に神様の言葉が降りてきた。

 神様の言葉通りにすれば、お義姉ちゃんが助かる。

 僕がお義姉ちゃんに助けてもらえたのも神様のお陰だ。

 神様がお義姉ちゃんに僕の事を伝えてくれなかったら、僕は死んでいた。

 だから僕はお義姉ちゃん助ける、神様と精霊が言う通りにする。


 僕はどこで生まれたかも知らないし、両親の顔もよく覚えていない。

 両親を兵士に殺され、山賊にさらわれ、奴隷にされたとだけ覚えている。

 殴られ蹴られ、いつもどこかが痛く、寒くてお腹が空いていて、怖くて哀しかった

 何とか山に逃げ出したけれど、山でもお腹が減って寒くて怖くて哀しかった。

 もう歩けなくなって、山の中で倒れてしまった。

 このまま一人で死んじゃうのかと思ったら、涙が流れてきた。


 そんな時、お義姉ちゃんが山奥まで助けに来てくれた。

 神様から助けるように言われたと、優しく抱きしめてくれた。

 後で孤児院の先生が教えてくれたけれど、きれいなドレスを泥だらけにして、反対する近衛の兵士を教え諭してきてくれたんだって。

 よく分からないけれど、お義姉ちゃんが僕を特別にしてくれた。


 それからは、叩かれる事も蹴られる事もなくなった。

 一日二度も暖かいごはんが食べられるようになった。

 孤児院のお友達と一緒に温かなベッドで眠れるようになった。

 孤児院の先生が、お義姉ちゃんの役に立つようにと色々教えてくれた。

 そんな中に、神様へのお祈りがあった。

 お義姉ちゃんの役に立ちたいと一生懸命お祈りしていたら、神様と精霊が力を貸してくれるようになった。


 神様と精霊のお陰で、お義姉ちゃんの役に立てるようになった。

 神様と精霊はお義姉ちゃんの役に立つ事なら何でもしてくれる。

 僕がどうすればいいか分からない時には、どうすればいいかも教えてくれる。

 その通りにしていたら、お義姉ちゃんがとても喜んでくれる。

 喜んでほめてくれたお義姉ちゃんは、僕を義弟にしてくれた。

 僕にお義父さんとお義母さんができた。

 

 近衛の兵士や孤児院の先生からは、ご領主様と奥様と言えと言われた。

 頭のなかでもお義父さんお義母さんと言ってはダメだという。

 痛いのは嫌だから、言う通りにしているけれど、二人だけの時は別だ。

 二人だけの時は、お義父さん、お義母さんと言わないと哀しい顔をされちゃう。

 胸が痛くなって哀しくなるから、二人の時はお義父さん、お義母さんと呼ぶ。

 でも、お義姉ちゃんだけはいつもお義姉ちゃんと呼んでいい。


 近衛の兵士や孤児院の先生が止めると、お義姉ちゃんが怒ってくれる。

 神様の言う事を聞かない者はいらないから、好きな所のいきなさいと言う。

 お義姉ちゃんはとても優しい言葉で言うけれど、凄く怒っている。

 何度も同じ事があって、お義姉ちゃんと呼ぶのを誰も止めなくなった。

 僕も、お義姉ちゃんをお義姉ちゃん呼べなくなるのは絶対に嫌だ。


(神様、精霊、お義姉ちゃんを護る力を貸して。

 お義姉ちゃんが好きな事をできるように力を貸して、お願い)

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