第6話 イケメンならば許されると思ったら大間違いだ。
現在私はルーファスにベッドに組み敷かれている。
やたら力を込めた様子で手首を掴まれているので痛い。そして痛みと混乱で身動きが取れないでいた。なぜ、こんなことになっているのか。刻は10分程前に遡るのだが……。
***
リヒトのおかげ(?)でルート選択までの猶予期間を手に入れたその夜。私は自身に与えられた部屋に閉じ籠ることにした。もちろんしっかりと鍵もかけたさ。
私はベッドに寝転がり深いため息をつく。とにかく今日は疲れたのだ。
明日になったら、屋敷の中を探索をしなければいけない。サンプルでは屋敷内の事があまりわからなかったから、いざとなった時の隠れ場所とかを見つけておかないと……。
「……エレナ、起きているか」
考え事をしながらうとうとしてたら、扉の外からルーファスの声が聞こえてきて一気に目が覚めた。
え?ルーファスの声だよね?こんな夜中に何の用だ?!
……よし、寝たフリをしよう!夜中に部屋にふたりきりなんて危険以外のなにものでもないじゃないか。まだ誰も選んでないから大丈夫だとは思うけど、ルート選択後の深夜&ふたりきりなんて18禁シーン満載でモザイクだらけになってしまう。ムリムリムリ!
私はもう寝てますよー。あなたになんて気付かず爆睡してますよー。とそっと布団を被り息を殺した。
しばらく静かな時間が過ぎ、諦めたかな?と思った瞬間。
ガチャリ。
施錠したはずの扉が開き、なんとルーファスが部屋に侵入してきたのだ!
うぇ?!まさかの不法侵入?!なんで私の部屋の鍵を持ってるのよ?!
近づく気配に混乱して震えていると、ばさっと布団を剥がれた。思わず視線を動かすとそこには無表情のルーファスが私を睨んで立っている。
「やはり起きていたか。俺を無視するとはいい度胸だ」
「……っ」
そして私の手首を瞬時に片手で掴み上げるとそのまま私にのし掛かるようにしてベッドの上にあがってきたのだーーーー。
そして現在。
手首の痛みに顔をしかめると、ルーファスの顔が近づいてくる。氷のような瞳に私の苦痛に歪む顔が写った。
「痛い思いをしたくなければ、白状しろ。どうやって父上に取り入ったんだ?
お前のような孤児の娘がどんな手を使えば侯爵令嬢になれると言うのか。……ふん、それとも女の武器でも使ったか?」
そう言って意地悪そうにニヤリと唇の端を吊り上げると、自由な手を動かしその手が私の胸元に重ねられたのだ。
ふにっ。
「ーーーーーーーーっ」
「はっ、こんな貧相な体では無理だn「なにすんだこの変態野郎!!」ぶふぅっ?!!」
えぇ、はい。そうです。思いっきり頭突きをかましてやりましたとも。
まさか反撃されると思わなかったのか頭突きの衝撃でベッドから転がり落ちるルーファス。
手首はまだ痛いが怒りのあまり恐怖は吹っ飛んでしまった。おでこももちろん痛いんだけど案外石頭のようである。ヒリヒリする程度だ。
よくイケメンに無理矢理迫られて胸キュンするとかって描写があるが、あれは2次元だからときめくのであって現実ではあり得ないと実感する。
いや、イケメンだからこそムカつく。
「いっつっ……き、きさま!なにをする?!俺を誰だと思って……」
「婦女子の部屋に不法侵入して痴漢行為を働く変態でしょ?!こっちが元孤児だからって馬鹿にして……痴漢撲滅!!」
そのまま勢いで、立ち上がろうと中腰になったルーファスの急所目掛けて力いっぱい足を振り上げたのだった。
女の武器を使っただの、貧相な体だの失礼な!私は前世も今世も、清らかなティンカーベルなんじゃい!!
だって、今ここに存在するヒロインは“私”なのだから。
そう、このヒロイン。ゲーム上ではかなりのしたたかな悪女のように設定されているが……ゲームスタート前のヒロインの人生は本当に天然な鈍感ちゃんなのだ。つまり、この三兄弟に惚れたせいで人生が狂った被害者なのである。
たぶん女性主任が新たな設定を上書きして作り直す前は、天然純真なヒロインだったに違いない。
聞いて驚け。この#ヒロイン__私__#は、天然☆人タラシのド天然お花畑ちゃんなのには間違いないがその実態は……初恋もまだのウブ・ガールなのである!
この時にハッキリとわかった。
この世界はゲームと同じ世界だけれど、やはり私は私なのだと。たぶんゲームの強制力のようなものがルーファスイベントを無理矢理始めたのでは推察するが、私はこんな事されてときめくような女じゃないんだぁ!
「ぐぅっ……?!おごぁぁへぁ……!?」
え?ルーファス?
なんか口から泡を吹いて意味不明の言葉を叫びながら足元で丸まって震えてるよ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます