足跡

理香

第1話

はい、笑顔で!

「今日も1日宜しくお願いします」

いつもの朝、メンバーに笑顔でお客様の前に立ってもらう事が私の使命。

部下の人生相談、励ましのハグ。

人の為になる事が、子供達の幸せに繋がると信じていた。

こんな事なら子供達にもっとハグしてあげるべきだった。

「子供は親の背中をみて育つから大丈夫だよ」「あなたは頑張っているのだから」

そうだよね、頑張っていれば忙しくても理解してくれるはず。

考えたら勝手な話だ。

「大人になればなんとかならない事が沢山出てくるのだから、毎日丁寧に生きるんだよ」

子供達に話した言葉。

あぁ、その言葉そっくりそのまま自分に返そう。

子供達が小さかった時をたまにおもいだす。

歩いて近所に買い物へ行こう。

パン屋さんまでは100歩歩くと着くよ。

手を繋いで雪道についた私の足跡を後ろから着いてくる。吹雪だって風だってママに隠れたらほらね、避けられるでしょ。先が明るくみえるでしょ。

私が青信号を渡り続けたら、きっとこの先も一緒にずっと歩き続けられる何処かでそう信じていたのかもしれない。

だけど握りしめた小さな手は離れた瞬間、私を追い越して雪をかきわけ走り出す。

秒速だ。


歳を重ねたわたしの体と心は、追いつくことに時間がかかりそうだ。

どうやらここから私の長い人生が始まるみたいだ。


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足跡 理香 @haru1nao

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