「よお。二度寝か?」


「移動しただけだから。そっちは?」


「駅前で仕事を少し」


「たいへんね?」


「まあ、正義の味方ですから」


「なにそれ」


「そっちは寝てていいのか?」


「いいでしょ。誰にとがめられるわけでもなし」


「そっか。それは残念だな」


「なにが」


「いま。おまえの目の前にいるぞ。俺」


「は?」


 そこまでで、目が覚めた。

 周りを見回すけど、特になにか、変わったようすはない。ただの小高い丘。そこここに、授業を受ける同級生。


「うそか」


 もう一度寝転ぶ。草の感じが、絶妙にちくちくして、気持ちいい。そして、なんか堅い。

 ん。

 堅い。


「動きが急なんですけど」


 ひとり、下に敷いちゃった。


「あっごめんなさい気付かなくて」


「気付かないもんだな」


 男性。

 バイクか何かのジャケット。

 たぶん中はスーツ。


「思ったよりも若い」


「俺は思ったよりも年いってるなと思ったよ」


「あなたよりも若いけど?」


「残念。同い年だ」


 初めて会ったけど、初めてな気はしなかった。もうずっと前から。逢っているような。


「夢でも見てたか?」


「いや、うん、思い出せない」


「そっか」


「夢って、覚えてる派?」


「最近覚えるコツを教えてもらった」


「そうなんだ。わたしにも教えてよ」

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ちょっとした夢 春嵐 @aiot3110

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