ONELIFE・THE・END

春秋 頼

第1話 キャラクター名・八兵衛

 待ちに待ったついに出た。テレビ中継を見ながら興奮していた。日本円で一兆円のアメリカドルなんてあんなにあるのか!! 現金を金庫に入れる生中継を通して保管することによって真実ではあるが疑う人もいると運営は考え、これにより真実味を増す効果はあった。


 キャラクター名・八兵衛も事前登録していた。事前登録者の恩恵は初期キャラクターを含めて三キャラクターまでは三万円で作成可能だったため世界中から事前登録者は殺到していた。


 プレイヤーは一キャラクターずつしか作成は不可能でアカウントを複数作りプレイすることはゲーム内の違法行為になるため仮に賞金獲得の敵を倒した場合、賞金は無効となる。そのためボスなどを倒しにいく場合、パーティ内に二アカウントでplayし、獲得賞金を二人分貰えるようにしたりするのをゲーム内違法行為としていた。


 フレンドの信頼関係が通常のオンラインゲームよりも遥かに大事とされた。通常は五万円で、事前登録者も三キャラクター終了後は通常の五万円になる。キャラクター作成の見た目作成をした後、ゲーム内で五十問くらいの質問に答えた後、運営サイドのスーパーコンピューターによって最良ジョブは決定される。他のジョブを選ぶ事も可能だが、百%の力が発揮できるのは最良ジョブだけであった。次に最初に三十の技の中から一つだけ初期技を覚えることと武器の選択だった。相性が最善でない他のジョブの技や武器の選択も覚えることは可能だが、相性が悪いほど効果も悪いので一つ一つの選択がとても大事だった。


 パーティを組むほうが当然いいことは分かってはいたが、このゲームをやるにあたり気を付けるように念を押していたことが書いてあった。高額の懸賞金付きのゲームのためリアルでの会話は控えたほうがいいと言う点だった。八兵衛には意味がよく分からなかった。


 八兵衛はオンラインゲーム初心者だった。FPSはやっていたが携帯ゲームでは名をはせた彼であったが、PCのオンラインゲームでのFPSのは未経験だった。当然最下位クラスの腕前ではあったが本人は知る由もなかった。



 理想はFPSの経験を活かせる弓使いの狩人だったが最良は戦士だったため万能だろうと思い、未経験ながら一番安定する中距離タイプの武器である槍を選択した。


 彼が選択した技は二連突きにした。技は派生システムで最初は使うことによって何%かで覚醒し派生が発生する。派生は最低でも三つ以上の中から一つを覚えるようになっており、中位や上位にいくほど覚醒%率も低くなり、さらに覚えるためには条件も必要になっていくシステムだった。当然、難しいが覚えたらすこぶる使える技も多数あった。


 戦士の技でもある二連突きを選択したのは無難であり力を発揮できる。しかし、最初の課題は武器の取得だった。

てっきり貰えるのかと八兵衛は思ったが、どうやって取得するのかでまず相当悩んだ。八兵衛は今までオンラインゲームはやってきたがここまで気軽に出来ないゲームは勿論初めてであった。PCのMMORPG自体が日本人のユーザーは世界的に見ても少ない。まずはフレンドを作って教えてもらおうと考えたが、日本人を嫌うプレイヤーも当然いる訳だったが彼は知らな過ぎたためシャウトした(広域フィールドにまで伝わる大声の叫びである)誰も反応しなかった。当然と言えば当然なのだが、高額賞金がついていなければ誰かしら反応はするのだが、高額賞金つきである以上情報は出来る限りただでは教えないほうがいい。


 八兵衛はまだ気づいていなかったが、情報屋がある場所にいてまだ未登録の情報であれば売ることも可能であり、手数料は情報屋に取られるが最初に情報屋に売った情報は売れる度にゲーム内通過が入るシステムであり、仮にフレンドからただで情報を教えてもらってもゲーム内の手順を踏まないとクエストは発生しないためあまり意味を成さない。情報屋に情報を売れるのは三人までであるが売れたら空きが出るようになっている。

 

 値段設定はある程度の幅の中でプレイヤーのほうが設定できる。値段設定が何度も以上に低いプレイヤーなどは運営から調べが入り、複アカウント所持者かどうかなどである。ゲーム内での違法行為にあたるのは多くはない。自由度を上げるため必要最低限にとどめてはいるが、複アカウントで事前登録を複数作るなどしてもそれは違法行為に当たり、ただのオンラインゲームを楽しむだけになってしまう。



 素手のスキルもあったがそれでは格闘家のメインスキルになってしまうので戦士の力を発揮できない。というか三万円ともなるとスリルありすぎて八兵衛は少し笑えてきた。失敗はできないスリルだが、よく画面を見てみると上に出ているパラメーターの体力とは別に如何にもお腹が空いているメーターが下がって光っていた。どうやら食料も必要なようだ。水は川で飲めばいいが食料ともなるとやはり槍を何とかしないとと真剣に考えた。ちなみに腹減りメーターが0になってもキャラクターが死ぬことはない。戦闘時にまともに戦えない、所持アイテム重量が激減する、移動速度低下などになる。


 三万でいきなり餓死とかヤバすぎる。とりあえず草原に出てみることにした。一応何も所持品はないが草陰に隠れながら移動した。動物に襲われないために八兵衛はゆっくり進んだ。


 しばらくして周囲を見たら同じような人たちがいた。

武器がなく腹減りまくりの方々がいて、前方にも同じように隠れて移動している人がいたので、とりあえずついていってみることにした。


「おおぉ!」八兵衛はびっくりして思わず声が出た。五人組の方々がそれぞれ武器を持っていた。最大七人まで同じパーティが組めるとは書いてはいたがすでに五人パーティで武器を持っているとは!


 彼ら五人組はしばらくすると動き出した。草原を進むと池があった。池は動物の水飲み場であり、五人組はその池を囲むように草原に身を伏せて隠れた。


 ふと気が付くと周囲にいた人が減っていることに気づいた。さっきまで横にいた人が倒れているのを発見した。近づいてみると死んでいた。取る物が何もなかったため池が見える場所に戻ると大きなマンモスと五人が闘っていた。


 戦闘開始から一分も経過せずにあっさりと五人組は負けた。気持ちのいいくらいの負けっぷりだった。マンモスが移動するのを待っていた八兵衛は武器の回収に向かった。目的の石槍をまず取って装備した後、その他の武器を欲に任せて取れるだけ取ってまだ村もない出発地点に戻ることにした。


 八兵衛は喜びのあまり走った。走っているはずが八兵衛が息切れしていることに気づいた。水だけでも腹減りメーターが僅かに回復することに気づいていなかった八兵衛は重量の事も考えず五つの武器を持てばそれだけ体力も使い疲労度も増すことに気づいた時には

パタリ……八兵衛は倒れた。スタート地点近くまできていた八兵衛に蝿のように群がって全ての武器が奪われていくのを八兵衛は夕日を眺めるような気持ちでしばらく眺めていた。

すると、初心者講座のような絵本形式での説明が始まった。ワンポイントアドバイス


 強そうな装備付きの馬に乗った騎士の腹減りメーターが点滅していた。

騎士はそのまま木に実っているリンゴのような物を木からもぎ取って食べた。腹減りメーターが三分の一くらい回復し、水メーターは半分くらいまで回復した。

騎士は馬から降りて近くにある川の水辺へ行くと兜を取って水を飲み始めた。腹減りメーターがある程度まで回復するとお腹が満たされた騎士は馬に乗って立ち去った。


 死亡した理由をワンポイントアドバイスとしていることを八兵衛は知った。真っ黒な画面になり”GAME OVER”と出た。


八兵衛日記第一話  


戦死理由・餓死 GAME OVER

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