君のコトバと紙ひこうきの置き手紙
立ヶ瀬
プロローグ 『ノートの切れ端』
※修正予定あり
蝉の鳴き声が響くとある夏の日の教室。
平年であれば、今は夏休みといったところなのだが、俺が通うこの金尾高校は、1学期の期末考査で赤点を取ってしまった、若しくは赤点に近い生徒は無条件で補習を受けることが義務付けられている。
俺はその補習をとある事情で受けていた。
「えー、この内容は夏休み明けの実力テストに出るから必ず覚えておくように」
先生の一言と共に、教室内では、マジかよーとか、テストいやだなーという、学生の本音が飛び交い、少しばかりざわざわしていた。
「おい、金井窪。朝比奈に今の内容テストに出るからって教えてやってくれよな」
「わかりました。後で伝えておきます」
面倒くさい。本当に面倒くさい。
実際のところ、俺がこの補習に来る必要はない。なぜならこの補習は赤点、若しくは赤点に近い生徒が参加するもので、平均点を取るような生徒は参加する必要はない。
では、なぜ俺は補習に来ているか。それは、俺の隣に座る女子生徒の面倒を見るために先生から直々に呼ばれたのである。
「おーい、反応ありますか~、聞いてますか~」
反応がない。やはり寝ているようだ。
彼女は授業中も平気で寝るため、俺はよく教員からお知らせなどを伝達してくれとの連絡を受けることがある。そのため彼女が起きた時にいつも伝えている。
「ったく、仕方ないな」
授業中は大体机に腕を組み、頭を下にした状態で寝ている彼女。
俺は仕方なく、メモ帳に“授業が始まっている”という旨のメモを書き、彼女の机の上に置いたうえで、肩をポンポンと叩き、彼女を起こさせる。すると、彼女は起き上がり、机の上のメモを見たのか、慌てた様子でかばんの中から教科書とノート、その他諸々を取り出す。
「えー、この問題はここと間違えやすいから気を付けること」
ちょうどいいタイミングで先生がアドバイスを向けた。彼女は耳を傾けながら、黒板の文字を必死にノートに記録していた。
その後は、授業は特に何事もなく進んでいく。以前から溜まっていた寝不足が限界に達したのか、俺はそこから記憶がなく、気づいた時には授業が終わっていた。
俺が起きた直後、机にノートの端を千切って折ったと思われる、ギザギザした紙の紙飛行機が飛んできた。差出人はもちろん彼女である。しかも、机の上にピンポイントに乗せてくる。
ただ、見られるのは嫌なのか、俺が彼女の方に向くと、何事もなかったように、頭を机に伏せている。かわいい。
俺はそのギザギザした紙で折られた紙飛行機を分解していく。なぜ分解するのかといえば、彼女から飛ばされた紙飛行機には何らかの文章が書かれていることが多い。案の定、紙を広げて中身を見てみると、『ひーくん、さっきはありがとう。でも、私この授業わからないから、放課後に手伝ってくれる?』といった文章が書かれていた。
手紙を読んだことを見ていたのか、俺が指で丸の形を作ると安心した様子で、再び起き上がりノートを書いていた。
すると、ドタバタと足音が近づく。
さきほど授業を教えていた先生が駆け足で教室に戻ってきた。
「言い忘れたが、夏休み明けに実力テストがあるからしっかり勉強しておくんだぞ!」
彼女は驚いた様子で、急いでメモ帳に『本当?』という文字を書いて俺に見せてくる。
「いや、授業が始まるときに先生言ってたよ。琴音その時寝てたけど」
やや焦っているのか、彼女はいつもより素早くボールペンでメモ帳に『じゃあ、早く復習しよう』と書いて見せてくる。俺はどうしようかな~っと考えたが、彼女のお願い通り一緒に復習することにした。
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