4章 3話 2人の魔法使い3

「本当に、処刑しているのですか?」



その現実逃避としか思えない予想外の言葉に、皆が口を挟もうとしたが

王女の反応は予想外のものだった

「っ…でなければ実際人が居なくなった説明がつかないだろう!」

いつも冷静で、淡々とした口調の王女が、声を荒げて明らかに動揺しているのだ。

これには皆も驚き口を挟むタイミングも完全に逃し

サナと王女の会話の行く末をただ眺める事しか出来なくなっていた。


「処刑対象は毎回数十名。その中から1人~3人程度が処刑になりますが、人数も決まっていなければ、0人という事もあるそうですね?実際カタリナが処刑対象に選ばれた時には0人で、全員ここで今も働いて居るそうです」

「ずっと疑問だったのですが、処刑候補として選ばれる人達は【国の利益となり得ない人物】のはずですが、その様な人間を王室で働かせるのは矛盾しています。本来なら有能な人材が欲しいはずですよね?」

王女から返答はない。

「だから逆だったのではないでしょうか?本当は有能な人間を集めて居た。実際私と一緒に処刑候補に選ばれた人達は有能な人ばかりでした」

そう言ってサナは仲間を見渡し微笑んだ。

「そして私達の時、処刑に選ばれたのは、ステラさんでした」

その言葉にステラは当時の恐怖を思い出したのか身を縮める。

「何故、選ばれたのはステラさんだったでしょう?他の人達とは違ってステラさんだけ特別な事は【ステラさんだけ身体が不自由】なんです」

その言葉を口にした途端、今度は王女がビクッと身体を縮めた。


「ここからは、私の想像です」

そう前置きをして、サナは長い話を始めた。




5年前、国王と王妃が不幸な事故で亡くなって以来、隣国との外交が上手くいかなくなった。王制を継いだのはもうご高齢の女王陛下。そして貴方は15歳という若過ぎる年齢の上に、痣が原因で顔を合わせての外交が出来ない。

そんな時1番大きな問題になったのは【医療】です。

この国には医療設備がありません。大きな病気になれば隣国の医療施設を頼る他ありません。ですが、外交が悪化して以来、受け入れて貰える人数が極端に減ったのではないでしょうか?

その事が国民に伝われば、我先にと【医療】の取り合いが起きる。

行き過ぎれば暴動や内戦に発展し兼ねない。


そこで王女は考えました。外に出て外交が出来ない自分が、どうすればこの国を守れるかを。

処刑という事にして優秀な人材と国が選んだ早急に医療を必要としている病人を同時に集め、有能な人材は城で教育し国力を高め、病人は処刑した事にしてこっそりと隣国へ送り治療をした。

更に、処刑されるかもしれないという恐怖で国民の贅沢を防ぎ、真面目に働かせる事も成功させた。

そして当時13歳だった従兄弟のモニカ王女が社交界デビューする18歳になった時、隣国の王子と婚約になればそのまま王政を譲ろうとお考えだったのではないですか?」


王女はその質問に答えることなく、ただ俯き表情も読み取れない。


「貴方は悪役になってでも、この国を守ろうとしてくれた

立派な王女です」


そのサナの言葉に、王女からマスカラと混ざった黒い涙が流れていた。

サナが慌てて近付くと

「折角隠して貰ったのに、また醜い顔が現れてしまったな」

と少し呆れて様に笑った。


「王女。貴女はメイクをしていても、していなくても醜くなんかありません。

でも隠して欲しいのであれば、私が何度だって隠します」


「でも一つだけ。メイクは水に弱いんです。

だからメイクをしている時はずっと



____笑っていて下さい」

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