4章 2話 2人の魔法使い2

皆に見守られながら部屋に入ると、王女は鏡の前に1人座っていた。

いつもは尊大な雰囲気を自ら演出するかの様な振る舞いだが、ただ座っているだけの後ろ姿は、普通の少女と何ら変わらないように思えた。


皆がいそいそとメイク道具の用意をしてくれて

それが終わると

鏡の前に2人きりになった。


「それではメイクを始めさせて頂きます」

「あぁ」

その短い会話の後は、サナがたまに「目をつぶって下さい」「唇を少しあけて下さい」などと小さく指示をする言葉以外二人の間に会話は無かった。


一時間程でメイクは仕上がり、別室に待機していた皆が部屋に通された。


王女はヴェールを外した姿で初めて人前に現れた。

顔の半分を覆う痣は綺麗に隠されて居るが、王女の表情は暗いままだ。

しかし開発に協力した仲間達も、使用人達もメイクの仕上がりへの驚きが勝って王女の表情の暗さには気付かず

「わぁ」とか「凄い」の感嘆詞しか出て来ない様子だ。

どことなくサナにも元気がない。


王女から何の感想もなく、ただ時間だけが過ぎていくのを見兼ねて、ユリウスが

「これで、認めて下さりますね?」

と質問した。

だが、王女は色めき立つ雰囲気に流される気配すらなく

「1つ問おう」

と顔色を変えずに問い返した

「これで私の顔の痣が消えたとして、私のやって来た罪が消える訳ではない

顔が綺麗な犯罪者も、醜い犯罪者も罪の重さは同じだろう?」

その言葉に全員が水を打ったように静まり返る。




最初からこうなる事は分かっていた。


王女は初めから、痣を隠す技術を測るのではなく

痣を隠した自分を国民が許す事が出来るのかを測っていたのだ。


痣が消えても、罪が消える訳ではない。

返す言葉を模索しても、紛れもない罪の事実を肯定する訳にもいかず

誰にも言葉が浮かばない。



「本当に」

長い沈黙を破り、サナが突然喋り出し、皆が一斉に注目する





「本当に、処刑しているのですか?」

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