生の形
バブみ道日丿宮組
お題:12月の快楽 制限時間:15分
生の形
「なぁ……生きるってなんていうんだ?」
窓から見える外の世界は、光り輝いてた。
ネオンカラーというべきものだろうか。車の光、街灯、ビルの光。たくさんの光が外には広がってた。
代わりと言ってはなんだけど、この部屋は暗い。
「生きてるってなんだろう?」
振り返り、物体に問う。
そこには四肢を切られ、痛みをなくされた少女だったものが転がってる。
もぞもぞと動くから死んでるわけじゃないし、殺したわけでもない。
「助けて……助けて……」
少女は起きてからずっと同じ言葉を繰り返してる。
「死にたかったんじゃないのか?」
少女はビルの屋上から飛び降りようとしてた。
そこを麻酔銃で確保して、こうやってビルの一室に運び込んだ。人目につかないようにするのは少し苦労したが、それに見合うものがきっとあると信じたかった。
答えを誰かがくれるんじゃないかって、こうして同じことを繰り返してる。
「無理……無理……助けて……助けて」
四肢を切られなくなると、大抵の人間は助けを求めた。
ーー死にたくない、助けてほしい、親に連絡させて。
面白いぐらいに生に固執してた。
死ねなくなると、死にたくなくなる。そんな現象が起こってた。
壊れたおもちゃのように同じことを繰り返すから、果たして殺してしまうのだが……。
「今何が見える? 生が見える? 死が見える?」
それともいったい?
再び窓の外を見てしばらくすると、静かになった。
寝息が聞こえることから、どうやら眠ったらしい。
こんな状況で眠れるなんて、大物なんじゃないか? こいつなら俺の願いを叶えてくれるんじゃないか。
そう思い、この少女は生きさせることにした。
ーー数カ月後。
「マスター。新しい肉体を取得しました」
機械となった両手の中に、内臓と思われるものがあった。
「人狩りもほどほどにしておけよ」
少女は、快楽殺人者になった。
別に俺がどうこうしたわけじゃない。
環境が彼女を変えたのだ。
死にたいと思ってた少女が、生きたいと願い。そして生きる人を殺す。
それは1つの答えかもしれない。
生きるということは、誰かを殺すこと、見なかったことにすること。
彼女はそれを体言してるに過ぎない、と。
「今日はごちそうです」
笑う彼女は美しい。
彼岸に落ちた花のように、可憐である。
いい拾い物をしたものだな。
生の形 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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