神之構造物

坂西警護

第1話 それは恨む者

「批評って言うのさ一つのメタフィクションなんだよ」


 エリックと言われる俺は学生仲間のナイトにそう言う。


「批評がフィクション?」


 ナイトはそう言って、缶ミルクティーを傾ける(何でもコーヒーは貴族には合ないらしい)


「そうさ、フィクションってのは虚構、虚構ってのは現実とは関係ないものさ」


 俺エリックの説明に


「そうは言ってもエリック、フィクションは現実と関係あるだろ、現に僕はこの前見た映画で感動したしね」


 ナイトはやれやれと空き缶を置く


「それは音と光だろ物語の具象に過ぎないフィクションとは観念であり現実とは物質だ相反する二つを操るものこそ人間だ」


 「また古い考えを……デカルトの再来かCogito, ergo sumコギト・エルゴ・スム


「細かい哲学駄弁を追いかける気はない、でだメタフィクションとは現実をも役者にするフィクションだ」


「で、どうした?」


 俺エリックは答える


「この前、俺の作った映像がネットとにさらされバカにされた、しかしその批評はメタフィクションつまり俺の映像は『弱者』が『強者』殺す物語、そして彼らは作者=神であるこの俺を批判した自らがパロディとして言説ディスクールを操ることによって世界の枠組みを変えて神=強者を作者=弱者にしてつまり神で=強者=作者=弱者という矛盾した言説ディスクールを押し付けることにより、矛盾の矛盾」


「ああ、もういいよ、負け惜しみは」


 ナイトの言葉に俺エリックは


「チッ、前衛芸術を理解できんとは……」


俺は立ち去ることにした

 

 テクテク歩くとそこには泥酔した


 『白銀の勇者』がいた。


「人は自由であるべきなんだ相互監視とパンとサーカスに負けるこの世界はクソなんだー!私の居た世界ではー」


 グダを巻いていた。


「うわ」


 俺エリックがつい声を出すと『白銀の勇者』はいささかトロンとした黄金色と紅の瞳を向け。


「テメーは豚か」


 絡まれたよー


「はい、『レベル』9の豚です」


 レベルとは強さなどの総合評価を下す即時更新型ソーシャルサービスの一つだ上限は99999。平均値は52まあ、低いね俺は


「私は99999だぞ、コラ!」


「そりゃ、天下の『最強の転生者』である『白銀の勇者』ですからね」


「なのになんで革命が、この平坦な世界、魔王が支配する世界を潰せねーんだ!」


 確かに、経済格差、少子化、分断、環境問題と魔王支配は随分とひどいものだか


「そんなに死なず老いずの『パーフェクトポーション』と自主映画制作ソフト『テオスアーキテクチャ』は良いのか?」


 そりゃそうだろ。と思いかけたとき、俺はふと思う。俺はヴァーチャルな快楽をえて、後は見るもみすぼらしい人生を送るだろう。ならば


「俺を参謀にしないか?」


 俺エリック。ああ、またか俺は俺が分からずさ迷う亡霊、恨みもなく愛もなく何もない亡霊、エリックという名前とて、それは仮初めなのだ


「……もうなんでもいい!かつていた勇者パーティも皆ユーレイ、乗ってやる」


 こうして反逆は始まった。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る