9【感想論一般】具体目標型と抽象目標型(3/3)

 これまで具体目標型・抽象目標型の性質や弱点についてお話ししてきました。

 この記事ではそれら両型に対して小説作者はどのように向きあえばいいのかについてお話しします。



 具体的な目標に向けて創作活動をしている小説作者は具体目標型のアドバイスを受ける。

 抽象的な目標に向けて創作活動をしている小説作者は抽象目標型のアドバイスを受ける。

 これが基本です。

 具体的な目標に向けて創作活動をしている小説作者が抽象目標型のアドバイスを受けても、上手く結果に繋がらない危険があります。

 抽象的な目標に向けて創作活動をしている小説作者が具体目標型のアドバイスを受けると、自分の創作を見失ってしまう危険があります。

 そして後者のほうがリスクが高い。薬にならないかもしれないアドバイスより、毒になるかもしれないアドバイスのほうが危険。


 ですので大事なのは、自分が「具体的な目標に向けて創作活動をしている小説作者」なのか「抽象的な目標に向けて創作活動をしている小説作者」なのかを見極めることです。

 自分は何故創作をしているのか。自分は創作に何を望んでいるのか。自分の人生にとって創作とは何なのか。創作における自分の目標とは何なのか。

 これを自問自答することです。


 「そんなの公募勢が具体的な目標を持つ人で、そうでない人が抽象的な目標を持つ人なんじゃないか」が単純明快な見極めだ、そう感じられます。

 しかしそこまで単純ではないと考えています。

 ここでまた「本気で創作活動を行う=プロ(書籍化、商業ベース)を目指す」というアマチュアシーンの文化が登場します。

 つまり「とりあえず自分は本気で創作をしているから、公募に挑戦するのが自然な運びなのだろう」と考えるケースが、決して少なくないだろうと考えられるのです。

 そのため公募に挑戦する動機は多岐に渡っているだろうと想像しています。また自身が公募に挑戦する動機を明確に認識していない小説作者が少なくないのではないかとも想像しています。



 公募に挑んでいるからって、その人の創作目標が公募受賞(書籍化、プロ)とは限らないと思うんです。

 公募に挑んでいるあなたは、どうして公募に挑んでいるんですか。応募するからには受賞はしたいでしょう。ではどうして受賞したいのか、受賞してどうしたい・どうなりたいのか。

 「公募に受賞して賞金(副賞)を得たいから」「公募に受賞して承認欲求を満たしたいから」「公募に受賞して書籍化してプロになって成功したいから」「公募に受賞して書籍化してプロになって、大好きな創作だけをして生きていきたいから」「公募に受賞して(書籍化して)、自分の創作を大勢に届けたいから」「自分の実力をはかる物差し・力試しとしたいから」「創作のモチベーションを維持する手軽な方法だから」「作家仲間がみんな応募しているから」などなどなど、一口に「公募に挑んでいる」といってもその動機は様々です。

 例に挙げた動機を見ると、その人の創作人生における公募受賞(書籍化、プロ)の必要度がまちまちであることがわかります。


 「公募に受賞して賞金(副賞)を得たいから」「公募に受賞して承認欲求を満たしたいから」「公募に受賞して書籍化してプロになって成功したいから」という動機では、公募受賞(書籍化、プロ)は必要不可欠です。公募受賞(書籍化、プロ)そのものがその人の創作の目的・意味である。公募受賞(書籍化、プロ)のために創作をしている。

 ならばその人は具体的目標を持つ小説作者です。具体目標型のアドバイスが合っています。具体目標型のアドバイスだけを摂取すれば良いと思います。抽象目標型のアドバイスから得られるものは多くありません。


 一方「自分の実力をはかる物差し・力試しとしたいから」「創作のモチベーションを維持する手軽な方法だから」「作家仲間がみんな応募しているから」という動機では、公募受賞(書籍化、プロ)の必要度は低いと判断できます。あるいは動機が思い浮かばなかった人もそうですね。その人のなかで公募とは、豊かな創作人生を送っていくためのひとつのコンテンツ程度の存在感なんですよね。

 こういう人は抽象的目標を持つと判断できます。抽象目標型のアドバイスが合っています。抽象目標型のアドバイスだけを摂取すれば良いと思います。具体目標型のアドバイスは毒になってしまう危険があります。

 公募と付きあっていくとしても適切な距離感が大事だろうと思います。ただの一コンテンツのために自身の創作を曲げてしまうのは本末転倒です。


 難しいのが「公募に受賞して書籍化してプロになって、大好きな創作だけをして生きていきたいから」「公募に受賞して(書籍化して)、自分の創作を大勢に届けたいから」という動機です。

 公募受賞(書籍化、プロ)は目的そのものではないが、公募受賞(書籍化、プロ)を達成しないと本来の目的も達成できない。目的・意味そのものではないが、本来の目的のためにはおよそ必要不可欠である。

 こういう人は本質的には抽象的目標を持っているので抽象目標型アドバイスが合っているのですが、具体目標型のアドバイスもきちんと摂取しなければならないと思います。

 ですので「これは面白さのためのアドバイスだ」「これは成功のためのアドバイスだ」と両アドバイスをフォルダ分けして区別するのが大事だと思います。そうすることで自分の創作を見失わずに、具体的目標を達成できるかもしれません。区別の基準は各人の感覚でOKです。創作を曲げるのではなく、創作に成功アタッチメントを取りつける感覚を持てるかもしれません。

 よって「面白さのためのアドバイス」と「成功のためのアドバイス」の区別がつき、使い分けられる具体目標型の感想書きがオススメです。両アドバイスを混同している具体目標型の感想書きはNGです。

 また抽象目標型のアドバイスはクリティカルでこそありませんが、得られるものはあるでしょう。具体目標型・抽象目標型それぞれの感想書きからアドバイスを受けるのも有効かもしれません。


 公募に挑んでいるとしてもその動機は様々で、それにより適切なアドバイスが変わるのです。



 あなたの創作における目標とは何ですか。

 「(公募に挑んでるし)公募受賞ですかね」

 では何故あなたは公募に挑んでいるのですか。受賞してどうしたい・どうなりたいのですか。

 ここまで言語化してほしい。

 受賞することに意味があるのか、受賞してできることに意味があるのか、参加することに意味があるのか。“公募勢”も多種多様です。


 逆に公募に挑戦していないなら抽象的目標を持つ人なのか、というとそれも早計です。

 投稿サイトで読者と人気を集めて承認欲求を満たしたいと考えているなら、それも具体的目標です。その目標に“成功”の言葉が似合うなら、それはおよそ具体的目標です。

 読者増に繋がりにくい抽象目標型のアドバイスではなく、読者増に繋がりやすい具体目標型のアドバイスを受けるほうが近道です。



 指摘・アドバイスを、目的を基準に二種類に分けると、小説作者がどちらの指摘・アドバイスを受けるのが望ましいかについて見えてきます。

 よければこの記事をきっかけに、あなたの創作の目標・意味を見直してみると発見があるかもしれません。



 余談ですが「自分の実力をはかる物差し・力試しとしたいから」「創作のモチベーションを維持する手軽な方法だから」を動機に持つ人はおよそ抽象的目標を持つ人だと述べました。

 じゃあ何を物差し・力試しにすればいいんだ、他にモチベーションを維持する手軽な方法はあるのか、と考えられるかもしれません。

 抽象目標型の感想書きを探してみましょう。そのときは面白さを見通す距離ができるだけ遠い感想書きがオススメです。“商業”“成功”を度外視した純粋な面白さのみで、力試しとして挑戦し、モチベーションを維持できるかもしれません。

 私の知っている活動では「フィンディルの感想」がオススメです。そうだよ、宣伝だよ! ピッピピッピピ

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