第43話 攻撃は最大の
あくびは人にうつる。
あくびをする音を聞いたり表情を見ると人はあくびが出てしまう。
そして私は遂に成功したのだ。
聞けば必ずあくびが出る音声の作成にである。
これをどう活用したものか私は考えた。
何か良い活用法があるはずなのだ。
私はそれを売ることにした。
どんなにシリアスなシチュエーションでもこれさえ聞かせることが出来れば確実にあくびをさせることが出来てしまう。
様々な需要がある。
特に重要なビジネスシーンなどにおいてあくびをすることは失礼にあたり、相手に意図的にあくびをさせることが出来れば幾分か精神的優位に立てるようだ。
真剣な場面であくびをする。
そんな些細なことで案外人間は信用を失ったりすることもあるらしい。
しかしこの音声には聞かせる方も気を付けることがある。
相手にだけ音声を聞かせられる状況ではない場合、勿論自分もあくびをしてしまうことになるのだ。
だがそれでもこの音声には需要があるようだった。
その場にいる人がみんなあくびをすれば何もかもどうでも良くなるような空気が生まれ、何かを有耶無耶にしたいような人間には重宝されているようだ。
どのような使われ方をしても私にはどうでもよいことであったが、シリアスな雰囲気をぶち壊したい人間に一番よく買われている様だった。
その頃私は飲んでおけば数時間絶対あくびが出なくなるあくび防止薬の開発に成功した。
今度はこちらで一儲けしようかと思っていた時、思わぬことが起こった。
私があくび誘発音を世に広めてからの何年かの間に少しずつ世間が価値観を変えたのだ。
あくびのイメージは変化していった。
あくびをどうしても我慢できない人々はあくびは決して失礼な行為などではなく、敬意のの現れ、可愛い、お洒落、安心感など様々なポジティブなイメージをあくびに与えた。
どのような場面でもあくびが好意的に捉えられるようになったのだ。
しかし私としてはどうでもいいことである。
今度は状況に応じてあくびがすぐに出せるように自ら聞くためのあくび誘発音の需要が増えた。
私しかこの音の作り方は知らないのだ、金は入ってくる。
それにあくび防止薬も必要とされる日がもしかしたらすぐにやってくるかもしれない。
世の風潮は案外すぐに変わってしまうのだから。
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