第42話 大橋の◯み復活の宴

かつて子役として活躍したが、惜しまれつつも学業を優先するために引退した大橋のぞみ。

その彼女が芸能界に戻ってくるというニュースは大きく報道された。

彼女の代表曲「崖の上のポニョ」をテレビなどで聞く機会が増えた。


その頃からだっただろうか、私の身に奇妙なことが起こり始めた。

初めは水滴が皮膚に当たる感覚。

雲一つない快晴の日や、部屋の中にいる時に急に小さい水の粒が肌に触れたような気がするのだ。

しかし原因を探しても全くわからない。

それほど気にしていなかったが、頻度が段々と増えはじめると気味の悪さを覚える。

じきに伝うようになった。

ふとした瞬間に体のあちこちを水滴が伝うのだ。

だが実際には水滴などない。

拭き取ろうとしても渇いた体を擦るばかり。

非常に気持ちが悪い。


他には幻覚症状などもなく、医者に診てもらっても何も異常は見つからない。

だが段々とその現象の頻度は増え続け、私の精神は蝕まれていった。

寝ても覚めても体に走る水滴の感覚に私は完全に正気を失っていた。


そしてある事を思い付いた。

ずっと水中にいればいいのである。

私は海に向かった。

ただ全身を水に浸し、波に身を任せた。

そうすると気分が楽になった。


もう少し沖に出ると沢山の人がいる。

そうか、私の他にも魚の子は沢山いたんだとその時ようやく気が付いた。


私を含めた半魚人達は海で独自のコミュニティを築き海で暮らしている。

いつか陸に上がりたくなるその時まで。

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