第24話 陰惨なハッピーセット
栄えに栄えている市場は表の姿、少し裏道に入ると一気にきな臭い姿を街は見せる。
私がこの街に記者として滞在して1週間、この街のことが少しずつわかりはじめてきている。
観光地として街を整備したい政府の意向で警察が闊歩し、クリーンなイメージを作ろうと必死だ。
だが同じくらい年端もいかない子供達が物乞いをしたり、観光客に必死に物を売ろうとしたりというのがかなり目に付く。
この街はまだ発展中の過渡期なのだろう。
私はあまりこの国の料理が口に合わないので、今日は最近この街にも出来たという世界的なチェーンのハンバーガーショップに行ってみることにする。
店に入ろうとすると扉の前で子供用のおまけの玩具のディスプレイを食い入る様に見つめる少年が目に入る。
7,8歳だろうか。
恐らく物乞いだろうな。
もう見慣れている。
だが私は玩具付きのハンバーガーセットを注文した。
何故だろう、理由はわからない。
店員にホテルで子供が待ってるんだ、と嘘までついて。
ハンバーガーは自国で食べる物と全く同じ味で私に安心感を与えてくれた。
ふと窓の外を見ると、外の席では一人の男が警官3人に囲まれて後手に手錠をかけられている。
だが誰も騒ぐ者はいない、これもこの街ではよくあることだ。
私はあの子供が気になり、急いでハンバーガーを口に詰め込んで店を出る。
彼はまだ店の近くにいた。
何も言わずにおもちゃを渡すとこちらを見つめてくる。
玩具の代わりに少し質問をさせてくれと頼んでみる。
彼は驚いていたがすぐに話し始めてくれた。物心ついた頃から物乞いをしていること。
病気の母親とまだ小さい妹のためにお金が必要だということ。
私はこんな話を聞くためにこの子供に玩具を与えたのだろうか。
さらに二週間が経ちこの街での取材を終え、空港に向かうタクシーに乗っていると道路に人だかりが出来ている。
子供が倒れている様だ。
彼が胸に抱いているのは私があげた玩具、あの子供だ。
驚いて車を止めてもらい、駆け寄るとその子供は刃物で刺されてすでに亡くなっていた。
タクシーの運転手がすぐに追いかけてくる。
「ミスター、この街ではよくあることです。
車に戻りましょう」
私はどうすることも出来ず言われるがままに車に戻った。
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