第634 神の国(神聖ジェラルディン国)7

俺の代わりにマントに変身して背中を守っていたリアムが攻撃されてしまった。


俺のただならぬ気配に導かれてメンバー全員が俺の近くに転移してきた。


「どうしたの? クリス」とイザベラ


「俺を守って攻撃された‥‥‥」と俺が落ち込みながら告げる。


俺は、リアムの治療を続けながら、心に燃え上がるような熱いものが湧き上がってきている。


リアムをやられたことで、俺の甘さが招いたことだ。


なんだかリアムの治療を続けていて、無性に心に中で湧き上がるものがあった。


熱い、熱すぎる


俺は顔や体から汗が出てきた。


こんなに時間がかかっても、リアムの意識は戻らない。


俺が俺を異常行動に駆り立てる。


「ヒャハハッ」と言う声がした途端


「ゴフッ」と声を詰まらせる。


そして周りからも音がしなくなった。


人の逃げ惑う声はしているが‥‥‥


俺が意識することもなく魔法は発動された。


その魔法は、神縛


まぁ、金縛りの最高位魔法になる。


悪魔が上空に浮いたまた、直立不動のまま、動けずに浮いている。


「グッ、くそ」と もがいている


そして、タールのようにドス黒い魔力を得た、超大型のウルフの形をした奴も、同じように直立姿勢で立ったままになっている。


「???」


みんなが不思議がっているのも無理は無い。


俺は無意識に金縛りである神の縛りの神縛を使った。


悪魔が俺たちの近くに来て、何かをしよとしていたので、怒りのあまりかなり強い魔法を無意識で発動させてしまった。


ギギッギッと悪魔が何か言おうとしているが、関係ない。


こいつがリアムを攻撃した‥‥‥それだけで十分だろう。


あまりの興奮に我を忘れたようになり、俺の体全身が光り輝いているが、俺はリアムの治療に集中して入りため、わかっていない。


治療を続けること数分でリアムが目を覚ました。


「あっ、ご、ご主人さま? ご主人さまは大丈夫でしたか?」


「うん、リアム、ありがとう、この通り、大丈夫だよ」


「よかったぁ」


「もう、リアム心配させすぎ」とエマ


「エマ、ごめんよ」とエマがリアムの手を握る。


なんだか猫、2匹が手を取り合っているのって、側から見れば、滑稽だろうが、俺たちには、そんなことはない。


俺は2匹を何も言わずに空間に入れて、「ジャネット、二人についてて」と言って、ジャネットも中に入ってもらった。


俺はメンバー全員の顔を見渡して「さぁ、仕返しだ」と小さい声で言った。


これは俺が、しでかしたミスだ。


悪魔の方を先にやるべきだった。


今も俺の横で悪魔は、必死にもがいている。


俺が悪魔の方を振り返りながら、さらに圧力を強めていく。


「グァァァァッ〜、やめろ、許してくれ」、と初めてわかる言葉を発した悪魔。


それを聞いて、余計に腹が立った。


「お前は、今まで人を何人、殺して、その人たちから助けてくれと言われたことがないのか? その時、お前は助けたのか?」


「ギギギッ、ギギギ 」また意味不明な言葉を喋っている。


「お前な、何を言っているのか、わからんぞ」


そう言うと「ギギギッ‥‥‥お前ら殺してやる」


「なんだ、話すことができるじゃないか、じゃ、お前がした悪いことがわかるか?」


「ギッ、悪いこと? なんだ、それは?」


「そうか、お前らの頭の中には、そう言う概念がないのか?」


「ギギギッ、ギギギ、ギッ、ギギギ」と聞こえる音声で喋っているつもりだろうが、全然わからない。


顔を見ると拘束されているから、なんだか悔しそうな顔をしているんだわ。


表情から読み取るしかない。


悪魔から何かを聞き出そうとすること自体、無駄のような気がする。


城の検索魔法を行使して教皇の気配があるのか、探ってみるが無駄に終わった。


どうしようか? と考えていたら、悪魔が暴れだした。


俺の拘束を解こうとしているみたいだ。


しかし、暴れれば暴れるほど、締まるわけではないが、俺は拘束を緩めてみた。


緩んだことがわかったのか、俺の拘束から悪魔が脱出して、自由に動けるようになった。


俺は焦りもせず、悪魔を見ている。


その途端、教皇が変化した超巨大なウルフも動けるようになった。


「フハッハハッ、見たか、俺の実力を」と言い出した。


馬鹿か?


ギギギッ、ギギギはどうしたんだよ。


しかし、これ以上、付き合っていられない。


はぁ、せっかく拘束を解いてチャンスをあげたのに。


本当は逃すと言うよりも泳がせて、おくつもりだったんだが。


奴が、どこに消えるのか、それを追うために。


しょうがない、もう、この悪魔が役に立たない。


悪いことを悪いと言う認識がない。


それの何が悪いの?って言う顔をしている。


まぁ、悪魔だし、考え方が違うからしょうがないのかも。


しかしそう考えると、悪魔が住む世界っていうのも、すごい世界だなと思う。


悪魔が1人でもいると言う事は、そういう種族があると言う事でもあり、悪魔の世界があると言うこともある。


確実に悪魔や魔族というのは、この星の住人ではない。


と言うことを考えれば違う星から来たのか、次元のトンネルを通ってきたのか、どういう方法で、この星に来たのか?


魔族と同じようにやってきたと言うことも考えられる。


と言うことを考えていたら悪魔の世界にも行かなきゃいけないのかなと背筋がブルっと震える思いになる。


一時的に悪魔を捕らえて、泳がすことを考えたけど、他の悪魔の恨みを買うことになるかもわからないが、この悪魔には消えてもらおう。


俺は躊躇せずに悪魔を抹殺した。


悪魔を抹殺したら、教皇のすり替わりの超巨大なウルフの姿が霧散した。


あっけない最後となった。


「‥‥‥」


なんだか、全員が、一言も言うこともない‥‥‥


壊されたのは城と白の周辺だけとなった。


人的被害は、教皇だけ。


あれだけ助けようと俺たちを呼んだにも関わらず、教皇だけいなくなった。


しかし、教皇に成り代わっていた悪魔の隠密性には、凄さがある。


俺でさえ、わからなかったんだから。


敵の魔法力が上がってきている。


戦闘力は、そこまで高くないが、隠蔽魔力は、高い。


俺たちは、このまま、帰るのもどうかと思って、上空から下に降りてきた。


壊れた城の瓦礫を跨ぎながら歩いていると、見知った人が近づいてきた。


「大丈夫でしたか」と向こうから言われた。


「ええ、大丈夫です」


「それにしても、あの教皇様が、変身するなんて‥‥‥」


「変身ではなく、悪魔の体を乗っ取られていたんでしょうね。憑依ではなく、乗っ取りですね」


「‥‥‥」


「あの時、黒い魔力で悪魔が出たと思っていたんですが、もはや完全に成り代わっていたとみるべきですね」


「あの教皇様が‥‥‥」と悲しい顔をしている。


「教皇が人格的に変わったことはなかったですか?」


「人格的?」


「はい、人が変わったような行動や、発言などは?」


「‥‥‥っ!‥‥そういえば、1ヶ月くらい前ですかね、すごい食欲が出て、食べ方も、今までとは全然、違っていましたが、あの時は、王都から出て、周りの村を回っていたことで、よっぽどお腹が減ったと思っていたんですが」


「それは一回で収まったんですか?」


「‥‥‥いいえ、収まっていません」


「たぶん、その時に、どこかで悪魔に捕まったんだと思います」


「はい、今になって考えてみれば、そうなのかなと思う程度ですが‥‥‥すみません」と頭を下げながら涙を流している。


俺に頭を下げたんじゃなく、たぶん、お仕えしていた教皇にだろう。


救うことができなかった命‥‥‥


「でも、人的被害はなかったから、よかったですね」


「はい、おかげさまで、でも、城の方は大変ですよ。こらから新教皇の選定にも入る必要があります」


「そうですね、大変でしょうけど頑張ってください」


「はい、ありがとうございます、あのっ」


「えっ?」


「もしかして、教会には興味がないですか?」


「はい」とキッパリと言った。


「そうですか、残念です、では、本当にありがとうございました。今回のお礼です」と言って、布袋を出した。


「あ、ありがとうございます」と言って差し出された布袋の中が重たかった。


それを、そのまま中をみることなくコリンに渡す。


コリンが「えっ?」


「有意義に使ってくれ」


「ありがとう」とコリンは嬉しそうな顔をした。


みんながコリンに近づいて「よかったね」とか、「これでまた孤児が助けられるね」とか、「時間があったら街に出て炊き出しができるね」とか言っている。


「じゃ、帰ろうか?」


「うん」とコリンが大きな声を出してくれた。






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